自閉症スペクトラム障害(乳児期の赤ちゃんの症状)

自閉症スペクトラム障害

自閉症スペクトラム障害とは

自閉症スペクトラム障害とは、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)で神経発達症群に分類される診断名の1つであり、「社会的コミュニケーションの障害」や「限定された興味」などの状態を連続体(スペクトラム)して包含する障害です。

ICD-10やDSM-Ⅳにおける従来の発達障害の診断基準カテゴリーである「広汎性発達障害(PDD)」とは、似た概念とされています。

MEMO

広汎性発達障害:社会性やコミュニケーション能力に関する能力の発達遅滞を特徴とする5つの発達障害をまとめたグループ。

  • 自閉性障害
  • アスペルガー障害
  • レット祖父外
  • 小児期崩壊性障害
  • 特定不能の広汎性発達障害

自閉症スペクトラム

自閉症スペクトラムとは、自閉症の特徴を複合して持つ人からわずかに持つ人まで、また、知的に高い人から低い人までを連続体(スペクトラム)として捉えた概念です。

英語では「Autism Spectrum Disorder」と表記され、日本語では自閉症スペクトラム障害と訳されますが、英語表記の頭文字を並べてASDと呼ぶのが一般的です。

以前は、自閉の程度が重いものだけが自閉症とされ、アスペルガー障害、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害などと区別して診断されていました。

しかし、自閉症とアスペルガー障害などの境界線を引くことが困難なケースなどが報告されるようになり、分類することが不可能であることが明らかになったことで、自閉症の特徴を連続体(スペクトラム)として捉える自閉症スペクトラムという考え方が注目されるようになりました。

つまり、従来の重度の自閉症からより軽度の自閉症までを、つながりを持った連続体として捉えるようになったのです。

MEMO

スペクトラム:症状などが曖昧な境界を持って連続していること

発達障害に関するDSM-5の特徴(DSM-Ⅳからの変更点)

DSM-Ⅳからの主な変更点は、以下のとおりです。

症状をまとめた

DSM-Ⅳでは、広汎性発達障害というカテゴリーの下に、自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害、小児期崩壊性障害、レット障害というサブカテゴリーが設定されていました。

しかし、DSM-5では、DSM-Ⅳの「広汎性発達障害」とサブカテゴリーを廃止して「自閉症スペクトラム障害」という単一の診断基準に統合されました。

DSM-Ⅳ DSM-5
自閉性障害(自閉症)

小児期崩壊性障害

レット障害

アスペルガー障害

特定不能の広汎性発達障害

自閉症スペクトラム障害

※小児期崩壊性障害は統合

※レット障害は除外

アスペルガー障害は、有病率が0.084%と低いことからサブカテゴリーから除外されました。

一方で、自閉症スペクトラム障害とは別に社会性(語用論的)コミュニケーション障害やADHD(注意欠陥多動性障害)が追加されています。

レット障害は、X染色体(MeCP2)異常が原因で自閉症と関連がないことが明らかにされたため、診断から除外されました。

また、小児期崩壊性障害は、分類する重要性が低いとして統合されました。

症状をまとめた

DSM-Ⅳでは、社会性の障害、コミュニケーションの障害、限定された興味の3つを広汎性発達障害の症状としていました。

しかし、DSM-5では、会性の障害とコミュニケーションの障害を社会的コミュニケーションの障害に統合され、社会的コミュニケーションの障害と限定された興味の2つにまとめています。

これは、ある症状を社会性の障害とするかコミュニケーションの障害とするかは任意とされていたことや、両者を区別しない方が妥当という研究結果が発表されたことを踏まえて変更されたものです。

ディメンション診断(多元的診断)の採用

DSM-Ⅳでは、多軸診断システムを採用していました。

DSM-5では、多元的な評価で捉えることが有益だという考え方に基づいて、社会的コミュニケーションと前提された興味の重症度がLevel1(サポートが必要)、Level2(多くのサポートが必要)、Level3(非常に多くのサポートが必要)の3段階で定められ、記載が求められています。

MEMO

多軸診断システム:第Ⅰ軸~第Ⅴ軸まで診断軸を設定して、各側面から網羅的かつ総合的に診断するシステム

注意欠陥多動性障害との併記が可能になった

DSM-Ⅳでは、ADHD(注意欠陥多動性障害)との併記が認められていませんでした。

しかし、DSM-5では、ADHDやその他の発達障害、精神疾患などの合併疾患の記載が求められるように変更されています。

年齢要件の緩和

DSM-Ⅳでは、自閉性障害について生後3歳以前の発症という要件が規定されていました。

しかし、DSM-5における自閉症スペクトラム障害では年齢要件が緩和され、社会的要求が大きくなってから症状が顕在化した場合も認められるようになっています。

自閉症スペクトラム障害と知的障害

自閉症スペクトラム障害と診断された子どもの約30%に知的障害があるとされています。

アスペルガー障害など知的な遅れがない子どもは約30%おり、言語を習得して学校の成績が良い人もいますが、会話など対人関係は不得手な子どもが多いものです。

自閉症スペクトラム障害と合併しやすい障害

11~39%がてんかんを併発する他、ADHDや限局性学習障害を合併する傾向があります。

自閉症スペクトラム障害の人数

自閉症スペクトラム障害の有病率は、0.65~1%とされています。

有病率には性差があり、男児が女児の約4倍という統計があります。

自閉症スペクトラム障害の原因

自閉症スペクトラム障害の原因は、先天的な脳機能の変異と考えられています。

遺伝要因によって中枢神経に何らかの異常が生じる、胎内環境や周産期の問題など出生前の要因が関連しているなどの可能性が指摘されていますが、原因を特定するには至っていません。

現在は、何らかの遺伝要因を持って生まれた人が、日常生活を送る中で様々な環境要因の影響を受けて発達障害が生じるという考え方が主流です。

つまり、特定の遺伝子を持っていると必ず発達障害になるわけではなく、また、発達障害になる道筋は一人ひとり異なるということです。

なお、「生まれつきの障害」であることは明らかにされており、「親のしつけ方や育て方」、「親の愛情不足」、「子どもの性格」が原因だという考え方は否定されています。

自閉症スペクトラム障害の症状

自閉症スペクトラム障害の症状は、「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」という2つの中核症状と周辺症状に分類されます。

社会的コミュニケーションの障害

周囲との関係性を適切に理解する力が弱く、その場に応じた適切な言動をとることが困難です。

周囲に対する関心や警戒心も低く、常にひとり遊びをしていたり、人見知りをせず見知らぬ人について行ったりするなど、対人関係が極端かつ一方的になる傾向があります。

また、言葉を理解するのが苦手で、発語の遅れ、オウム返し、同じ言葉や意味のない言葉の繰り返しなどの症状が見られる他、言葉を全く話さないこともあります。

黙ったまま相手を見つめ続けたり、視線を合わさなかったりすることもあります。

  • 相手の感情を感じ取るのが苦手
  • 場の雰囲気を読むのが苦手
  • 非言語(目、表情、ジェスチャーなど)を介したやりとりが苦手
  • 自分の行動が不適切であることを理解するのが苦手
  • 対人関係における距離感が極端
  • 独り言を話す
  • 独特な話し方をする
  • 知っている言葉と会話の能力の差が大きい
  • 不安などによりコミュニケーション能力が大きく変動する
  • 言葉の裏に隠されたメッセージを読み解くことが苦手

限定された興味

ごく限られた対象に強い関心やこだわりを示します。

また、環境の変化への適応が苦手で、初めての人や場所、不測の事態に直面するとパニックになる傾向があります。

  • 限られた対象にこだわりや強い関心を示す
  • 感覚刺激(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)が過敏または鈍感
  • 感覚刺激に独特な興味の示し方をする
  • 予想外のことに混乱しやすい
  • 切り替えや終わることが苦手

周辺症状

自閉症スペクトラム障害の周辺症状としては、以下のようなものを挙げることができます。

  • 知的障害
  • てんかん
  • 言語発達や使用障害
  • 過読症(ハイパーレクシア)
  • 易刺激性(攻撃性、かんしゃく、自傷行為など)
  • 気分や感情の不安定さ
  • 多動と不注意
  • サヴァン症候群
  • 不眠
  • 耳の奇形など

症状の程度や内容は、年齢、知的障害(精神遅滞)の有無、ADHDや限局性学習障害などの併発の有無などによって異なります。

乳幼児期に特徴的な症状

自閉症スペクトラム障害の乳幼児には、以下の症状が見られることがあります

  • 親など親しい人の後追いをしない
  • 人見知りをしない
  • 感覚の異常(五感からの情報が脳で正しく処理されず、周囲の刺激に過敏もしくは鈍感)
  • 周囲の子に関心を示さない
  • 発語が遅い(オウム返しが続く)
  • 目線が合わない
  • 指差しをしない
  • 一人遊びが多い
  • 人のまねをしない
  • 逆さバイバイ(手のひらを自分の方に向けてバイバイする)
  • 名前を呼んでも振り向かない
  • 表情が乏しい
  • 落ち着きがない(常にせわしなく動いていて、よく怪我をする)
  • 睡眠時間が短い
  • かんしゃくを起こす
  • こだわり行動(くるくる回る、手のひらを目の前でひらひらさせるといった反復行動、特定の記号や印に注目して突っ込んでいくといった興味の限局、道順や配置にこだわる順序固執など)

自閉症スペクトラム障害の特徴は低月齢の頃から見られることもあります。

以下、新生児、生後2ヶ月、生後6ヶ月、生後1歳頃に見られる特徴を確認しておきます。

新生児

新生児は、自分の意思で自由に身体を動かすことができず、表情を作ったり、目で物を追ったりする能力も未熟です。

そのため、自閉症スペクトラム障害の症状が現れている可能性はありますが、気づくことは困難です。

生後2ヶ月

  • 表情が乏しい(泣いたり笑ったりしない)
  • 視線を合わせない
  • 抱っこを嫌がって泣きながら反り返る

生後2ヶ月頃は、赤ちゃんが生理的微笑を卒業して社会的微笑を獲得する時期です。

また、視力が向上して視界も広くなり、近くの人や物を見つめるようになります。

この時期に目線が合わない、周囲の刺激に反応しない、抱っこを嫌がって反り返るなどの行動が見られる場合、何らかの発達の異常を疑います。

MEMO
  • 生理的微笑:生まれたばかりの赤ちゃんに備わっている無意識に起こる微笑み
  • 社会的微笑:父母の話しかけや微笑など周囲の刺激に反応して起こる微笑み

生後6ヶ月

  • 落ち着きがなく、常に体を動かしていて、よく怪我をする
  • 抱っこしても、そわそわして周囲を気にしている
  • 人見知りや後追いをしない

生後6ヶ月頃の赤ちゃんは、養育者と他人を見分けられるようになって人見知りを始めます。

また、ズリバイやハイハイを覚えると、養育者の後追いをするようになります。

自閉症スペクトラム障害と診断された子どもの生後6ヶ月頃のエピソードを確認すると、人見知りや後追いが一切見られないことが多いものです。

生後1歳

  • 指差しをしない
  • 言葉の発達に遅れが見られる
  • 呼びかけても返事をしない
  • まねをしない
  • クレーン現象(お父さんお母さんの手を使って、自分のやりたいことを代わりにしてもらおうとすること)を見せる

生後1歳を過ぎると、指差しや大人の真似を繰り返すようになり、意味のある言葉も獲得していきます。

しかし、自閉症スペクトラム障害と診断された子どもの生後1歳頃のエピソードを確認すると、指差しをしない、まねをしない、呼んでも反応しない、クレーン現象など、通常の発達とは異なる特徴が見られることが多いものです。

自閉症スペクトラム障害の診断基準

DSM-5における自閉症スペクトラム障害の診断基準は、以下のとおりです。

以下のA、B、C、Dを満たしていること。

A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)

  1. 社会的・情緒的な相互関係の障害。
  2. 他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。
  3. 年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。

B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)

  1. 常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
  2. 同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
  3. 集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
  4. 感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。

C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。

D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。

出典:DSM-5

通常は、生後2年以内に明らかになります。

また、生後18ヶ月以内に言葉を発しない場合は、自閉症スペクトラム障害の可能性を疑います。

自閉症スペクトラム障害の治療

自閉症スペクトラム障害を根本的に治療する方法は見つかっていません。

しかし、医師や専門機関に相談し、子ども一人ひとりの症状、発達、特性に応じた適切な療育を受けることで、社会生活を送るためのスキルを伸ばすことは可能です。

幼児期から学童期にかけて多く見られる多動、かんしゃく、こだわり行動などは、服薬治療で症状が軽減することもあります。

また、家庭のしつけ、学童期の学校における教育、就労時の支援など、子どもに関与する人や機関が連携して継続的に支援することで、障害による症状が及ぼす影響を最低限に抑えることができます。

これらの対応は、早い時期に行うほど効果が高いと言われています。

そのため、まずは養育者が子どもを注意深く観察し、気になる症状があれば早めに相談することが大切です。

そして、子どもが自閉症スペクトラム障害の可能性を指摘されたら、必要に応じて専門機関を受診し、医師の指導に従いながら対応してください。

まとめ

自閉症スペクトラム障害とは

DSM-5で神経発達症群に分類される診断名であり、「社会的コミュニケーションの障害」や「限定された興味」などの状態を連続体して包含する障害

自閉症スペクトラム障害の原因

先天的な脳機能の変異

自閉症スペクトラム障害の症状

中核症状と周辺症状がある

  • 中核症状:社会的コミュニケーションの障害と限定された興味
  • 周辺症状:知的障害、てんかんなど
自閉症スペクトラム障害の診断基準

DSM-5による

自閉症スペクトラム障害の治療

根本的な治療法は見つかっていないが、早期発見と早期関与により、障害の影響を最小限に抑えて日常生活を送ることが可能になる

【参考】

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