心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

アトキンソンモデルとは?アトキンソンの達成動機理論を踏まえて解説

アトキンソンモデル アトキンソンの達成動機理論

アトキンソンモデルとは

アトキンソンモデルとは、アメリカ合衆国の心理学者アトキンソン,J.W.が達成動機理論において提唱したモチベーションに関するモデルです。

英語では「atkinson model」と表記し、日本語ではアトキンソンモデルと訳されます。

アトキンソンは、達成傾向(意欲的な行動、やる気の高さ)は、成功しようとする傾向(成功志向傾向)から失敗を避けようとする行動(失敗回避傾向)を差し引いたもので、達成志向傾向と失敗回避傾向のいずれも、動機、課題の困難度、課題の価値を掛け合わせたものだと考えました。

また、失敗回避傾向が成功志向傾向を抑制するとも主張し、達成傾向の計算式を提示しました。

達成傾向:達成動機(成功志向傾向-失敗回避傾向)×課題の困難度×課題の価値

達成傾向の計算方法

達成傾向の計算式は、以下の手順で導かれます。

手順1:達成傾向

達成傾向は、成功志向傾向から失敗回避傾向を差し引いたものです。

達成傾向=成功志向傾向-失敗回避傾向・・・①

手順2:成功志向傾向

成功志向傾向は「成功しようとする動機(成功動機)」「課題の困難度(主観的な成功確率)」「課題の価値(成功したときの喜び)」を掛け合わせたものです。

成功志向傾向=成功動機×課題の困難度(主観的な成功確率)×課題の価値・・・②

手順3:課題の価値と課題の困難度(主観的な成功確率)

課題の価値は、課題の困難度が高いほど大きくなる、つまり、課題の価値と課題の困難度は補数関係にあります。

課題の価値=(1-課題の困難度(主観的な成功確率))・・・③

手順4:②の式に③の式を代入する

②の式に③の式を代入します。

成功志向傾向=成功動機×課題の困難度(主観的な成功確率)×(1-課題の困難度(主観的な成功確率))・・・④

手順5:失敗回避傾向

失敗回避傾向は「失敗を避けようとする動機(失敗回避動機)」「課題の困難度(主観的な失敗確率)」「課題の価値(失敗したときの恥ずかしさ)」を掛け合わせたものです。

失敗回避傾向=失敗回避動機×課題の困難度(主観的な失敗確率)×課題の価値・・・⑤

手順6:課題の価値と課題の困難度(主観的な失敗確率)

課題の価値は、課題の困難度が低いほど大きくなる、つまり、課題の価値と課題の困難度は補数関係にあります。

課題の価値=1-課題の困難度(主観的な失敗確率)・・・⑥

手順7:⑤の式に⑥の式を代入する

⑤の式に⑥の式を代入します。

失敗回避傾向=失敗回避動機×課題の困難度(主観的な失敗確率)×(1-課題の困難度(主観的な失敗確率))・・・⑦

手順8:課題の困難度(主観的な失敗確率)と課題の困難度(主観的な成功確率)

課題の困難度(主観的な失敗確率)と課題の困難度(主観的な成功確率)は補数関係にあります。

課題の困難度(主観的な失敗確率)=1-課題の困難度(主観的な成功確率)・・・⑧

手順9:⑦の式を⑧の式に代入する

⑦の式に⑧の式を代入します。

失敗回避傾向=失敗回避動機×課題の困難度(主観的な成功確率))×(1-課題の困難度(主観的な成功確率))・・・⑨

手順10:①の式に④の式と⑨の式を代入する

①の式に④の式と⑨の式を代入します。

達成傾向=(成功動機-失敗回避動機)×課題の困難度(主観的な成功確率)×(1-課題の困難度(主観的な成功確率))

これに③の式「課題の価値=(1-課題の困難度(主観的な成功確率))」を代入すると、上記アトキンソンモデルの計算式になります。

アトキンソンモデルの用語

アトキンソンモデルで用いられる用語の意味を確認しておきます。

成功動機

成功動機とは、幼少時からの経験を通して育まれる、成功したい、達成したいという動機です。

例えば、子どもの頃にテストで良い点数をとったり、運動会のかけっこで1番になったり、作文コンクールで優秀賞を獲得したりすると周囲から褒められ、誇らしい気持ちになります。

こうした成功経験の積み重ねが成功動機を育みます。

失敗回避動機

失敗回避動機とは、幼少期からの経験を通して育まれる、失敗しそうなことは避けたいという動機です。

例えば、子どもの頃にテストで悪い点数をとったり、運動会のかけっこでビリになったり、クラス発表に失敗して友達から笑われたりすると、恥ずかしい気持ちになります。

その結果、失敗をして恥ずかしい思いはしたくない、失敗しそうなことはしたくないという失敗回避動機が育まれます。

課題の困難度(主観的な成功確率)

課題の困難度(主観的な成功確率)とは、ある行動について本人がどの程度うまくできると思っているかという主観的な確率です。

通常、課題の困難度は、過去の経験や現在の情報に基づいて本人が主観的に判断します。

例えば、ある行動について、以前に難なく達成できた経験があれば課題の困難度を低く見積もり、達成できなかった経験があれば高く見積もります。

客観的にどうかではなく、行動を起こす本人がどう思っているかであり、過去に達成できなくても本人が「達成できるかもしれない。」と思っていれば、課題の困難度は高めに設定されます。

課題の困難度(主観的な失敗確率)

課題の困難度(主観的な失敗確率)とは、ある行動について本人がどの程度うまくできないと思っているかという主観的な確率です。

課題の困難度(主観的な成功確率)と同じく、過去の経験や現在の情報によって主観的に判断されるもので、客観的なものではありません。

補数関係

補数とは、ある数値をある定数から引いた数値のことであり、補数関係とは、互いに補数の関係にあるもののことです。

課題の困難度(主観的な成功確率)と課題の困難度(主観的な失敗確率)は、足し合わせると100%になる関係があります。

課題の困難度(主観的な成功確率)+課題の困難度(主観的な失敗確率)=100%

例えば、本人が「90%は成功するだろう。」だと思っている場合は「10%は失敗するかもしれないと思っている。」、また、「80%は失敗するだろう。」と思っている場合は「20%は成功するかもしれない。」と思っているということです。

アトキンソンモデルから分かること

アトキンソンモデルから、成功動機や失敗回避動機が高い人の傾向を読み解くことができます。

成功動機が高い人

成功動機が高い人は、到底達成できない困難な課題や容易に達成できる課題を避け、主観的な成功と失敗の確率がおおむね50%の課題に取り組む傾向があります。

例えば、進学先や就職先の選択で背伸びをせず、自分の実力に応じたところを選択します。

ポイント

成功動機>失敗回避動機:課題の困難度(主観的な成功確率)がおおむね50%の課題を選択する傾向

失敗回避動機が高い人

失敗回避動機が高い人は、主観的な成功と失敗の確率が高いまたは低い課題に取り組み、成功と失敗の確率がおおむね50%の課題は避ける傾向があります。

例えば、自分の実力で必ず合格できる学校や、合格が困難であろう学校への進学を希望します。

ポイント

成功動機<失敗回避動機:課題の困難度(主観的な成功確率)が0%または100%の課題を選択する傾向(50%の課題を最も回避する)

まとめ

アトキンソンモデルとは

アトキンソンが提唱した人のモチベーションに関するモデル

アトキンソンモデルの用語
  • 成功動機:成功しようとする動機
  • 失敗回避動機:失敗を避けようという動機
  • 課題の困難度(主観的な成功確率):ある行動について本人がどの程度成功できると考えているかの確率
  • 課題の困難度(主観的な失敗確率):ある行動について本人がどの程度失敗すると考えているかの確率
アトキンソンモデルから分かること
  • 成功動機が高い人(成功動機>失敗回避動機):主観的な成功確率が50%程度の課題を選択する傾向
  • 失敗回避動機が高い人(成功動機<失敗回避動機):主観的な成功確率が0%または100%の課題を選択する傾向

【参考】

  • 動機づけの基礎と実際| 日本行動科学学会|川島書店
  • 心理学概論第3版|岡市廣、鈴木直人監修、青山謙二郎、神山貴弥、武藤祟、畑敏道編|ナカニシヤ出版