心理学の世界にコロがりこもう!

基本的信頼感とは?獲得時期と欠如の影響、自己肯定感との関係は?

基本的信頼感

基本的信頼感とは

基本的信頼感とは、大切に養育してくれて愛情や甘えの欲求を受容してくれる養育者への信頼感を通して、自分という存在を肯定的に捉え、外界は信頼するに足りるものだという感覚を持つことです。

本人が自分の存在を肯定的に捉え、世界は信頼できるという感覚を持つことが基本的信頼感であり、客観的事実とは関係がないことから「根拠のない自信」と呼ばれることも呼ばれます。

基本的信頼感とエリクソン

基本的信頼感は、エリクソン,E.H.が提唱した概念です。

エリクソンは、人が生まれてから老いて死ぬまで発達を包括的に捉えた「生涯発達」という観点から、心理社会的発達理論を提唱しました。

心理社会的発達理論では、人の生涯が8つの発達段階に区分され、各段階に発達課題と危機、課題がポジティブに解決された場合に獲得されるものが設定されています。

そして、発達課題がポジティブに解決されることにより、所属する社会に適応した発達を遂げることができるとされます。

時期年齢心理的課題獲得
乳児期出生~2歳基本的信頼vs不信希望
幼児期前期2~4歳自律性vs恥と疑惑意思
幼児期後期4~6歳自主性vs罪悪感目的
学童期6~12歳勤勉性vs劣等感有能感
青年期12~22歳同一性vs同一性拡散忠誠性
成人期22~40歳親密性vs孤立
壮年期40~64歳世代性vs停滞性世話
老年期65歳以降自己統合vs絶望英知

※各期間は、日本の法律などとは異なるところがありますが、心理社会的発達理論に基づいて記載しています。

引用:エリクソンの心理社会的発達理論(発達段階)|psycho-lo

また、何の障害もなく発達課題が解決されるのではなく、各発達段階で危機にさらされる経験をしながら、最終的に課題をポジティブに解決することが大切だと考えられています。

心理社会的発達理論において、乳児期の発達課題として設定されているのが基本的信頼感です。

人生の最初の段階である乳児期においては、養育者からありのままを受け入れてもらう経験が不信感を抱く経験を上回ることが、その後の発達に繋がるとされているのです。

基本的信頼感と愛着理論

基本的信頼感は、心理学者のボウルビィ,J.が提唱した愛着理論にも登場します。

愛着理論では、基本的信頼感を獲得するためには、乳児期に母子の愛着関係が十分に形成されることが重要だと説明されます。

具体的には、養育者が赤ちゃんの要求に寄り添って対応することにより、赤ちゃんが「養育者に要求すれば、何でも応えてくれて状況が改善される。」、「大切にされている。」という感覚を抱くとされています。

一方で、発達初期における養育者との心理的・情緒的相互作用が阻害されること(マターナル・デプリベーション、母性剥奪)により、心身の発達の遅れや人格形成上の問題が生じると考えられています。

ボウルビィの愛着理論については、「愛着(アタッチメント)の意味とは?愛着形成とボウルビィの愛着理論」で詳しく解説しています。

【無料】心理カウンセラー講座の資料請求

基本的信頼感を育む方法

赤ちゃんの基本的信頼感を育むのに、特別な教育や訓練は必要はありません。

大切なのは、日常のお世話の中でできるだけ赤ちゃんの要求に応えてあげることです。

例えば、赤ちゃんが泣きだしたら駆けつけて抱っこし、お腹が空いているようなら授乳し、排泄時にはオムツを交換するなどのお世話を継続することで、基本的信頼感が育まれます。

この他、子守唄を唄う、絵本を読む、こまめに話しかけるなど、「赤ちゃんが要求しているわけではないけれど、してあげると喜んでくれること。」も基本的信頼感を育む効果があります。

赤ちゃんと接するときのポイントは、たくさん笑顔を見せること、声をかけること、スキンシップをとることです。

いずれの行動も、赤ちゃんに安心感を抱かせたり、気持ちを落ち着かせたりする効果があり、「大切にされている。」という感覚を抱きやすくなると考えられています。

一方で、要求を無視する、嫌々お世話をする、常にイライラして叱りつけるなどの行動を繰り返すと、赤ちゃんは不安や心配、怖さを抱き、「大切にされている。」という感覚は抱けません。

なお、赤ちゃんのお世話は24時間休みなく続く上、心身への負担も大きいため、常に安定したパフォーマンスを発揮する必要はありません。

例えば、一時的に赤ちゃんの要求に対する反応が遅くなったり、ついイラッとして叱ったりしても、それだけで基本的信頼感が育まれなくなるわけではありません。

心理社会的発達理論では、要求を受け入れてもらえない経験もしながら、トータルで見たときに受け入れられる経験が上回っていることが重要だとされています。

基本的信頼感が育まれる時期

基本的信頼感が育まれるのは乳児期の赤ちゃんの頃で、遅くとも生後3歳頃までとされています。

日本には「三つ子の魂百まで」ということわざがありますが、生後3歳頃までに基本的信頼感が十分に育まれなかった場合、その後に愛情を注がれても基本的信頼感は育まれないと考えられています。

生後3歳頃までの発達初期において、最も身近な他人である養育者から無条件に愛されて大切にされる経験が、基本的信頼感を育むには不可欠なのです。

【無料】心理カウンセラー講座の資料請求

基本的信頼感が高い子どもと低い子ども

基本的信頼感が高い子どもと低い子どもでは、日常生活における言動や態度に違いが見られます。

基本的信頼感が高い子ども(十分に育まれた子ども)

基本的信頼感が十分に育まれた子どもは、自分を肯定的に受け止めることができ、自分の周りにいる他人は基本的に信頼できるという感覚を持っています。

そのため、信頼を前提として他人と積極的に関わり、相互に助け合い、何事にも失敗を恐れず取り組むことができます。

基本的信頼感が低い子ども(十分に育まれなかった子ども)

基本的信頼感が十分に育まれなかった子どもは、自分が生きる世界が安心で安全だと思えず、自分を肯定的に捉えることもできません。

他人や周囲を「自分を傷つけ、罰し、貶める存在」だと感じ、不信感を前提として人と関わるため、良好な人間関係は築きにくく、場合によっては社会適応も難しくなります。

また、他人の評価を気にしたり失敗を恐れたりして、自発的な行動が抑制されます。

学校教育や家庭でのしつけによって、表面的には問題のない人間関係を築き、社会の中で問題なく生活できるようになったとしても、内心は周囲への不信感、不安、焦り、苛立ちなどを抱え続けることになります。

【無料】心理カウンセラー講座の資料請求

基本的信頼感と自己肯定感

基本的信頼感と混同しやすい単語に自己肯定感があります。

自己肯定感とは、自分という存在を肯定的に受け止めることができる感覚です。

例えば、「自分は他人から大切にされる存在である。」、「困った時は周囲が助けてくれる。」、「努力すれば何でもできる。」などの感覚が自己肯定感です。

自己肯定感の高い子どもは、自分の発言や行動に自信を持つことができ、他人と積極的に関わって良好な人間関係を築いたり、何事にも臆せずチャレンジしたりできます。

一方で、自己肯定感が低い子どもは、自分に自信が持てず、失敗を恐れたり周囲の評価を気にしたりして行動が制限されがちで、他人への不信感から人間関係もうまく築きにくいものです。

自己肯定感は、基本的信頼感という基礎の上に養われる感覚です。

乳幼児期に基本的信頼感が十分に育まれていることで、成長してからも自分を肯定的に捉えることができ、周囲の他人や環境を信頼することができるのです。

一方で、基本的信頼感が十分に育まれていなかった場合、自己肯定感の獲得は容易ではありません。

勉強やスポーツなど得意なことを見いだし、成功体験を積み重ねることで自己評価は向上しますが、心の底から自分を肯定的に受け止められるようになるのは相当な時間がかかります。

【無料】心理カウンセラー講座の資料請求

まとめ

基本的信頼感とは

献身的にお世話をして要求を受け入れてくれる養育者への信頼感を通して、自分の存在を肯定的に捉えたり、外界は信頼するに足りるものだと感じたりすること

基本的信頼感を育む方法

最も大切なのは、日々のお世話を献身的にこなし、積極的に赤ちゃんに関わること

要求を満たしてもらえないという経験をしながら、トータルでは受け入れてもらえる経験をより多く積むことで、自分は大切にされていて、他人や周囲は信頼するに足りるものだという感覚が身につく

基本的信頼感が高い子どもと低い子ども
  • 高い:自分を肯定的に捉え、周囲を信頼する気持ちに基づいて、他人と積極的に関わり、相互に助け合い、何事にも失敗を恐れず取り組む
  • 低い:自分を肯定的に捉えることができず、周囲に対する不信感も強いため、良好な人間関係は築きにくく、社会適応が難しくなることもある
基本的信頼感と自己肯定感

乳児期に育まれた基本的信頼感を前提として、その後の成長の中で自己肯定感が養われる