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ビッグ・ファイブ理論(特定5因子モデル)とは?類型論と特性論を踏まえて解説

ビッグ・ファイブ

ビッグ・ファイブ(特定5因子モデル)とは

ビッグ・ファイブとは、心理学における性格分類の一つで、人の性格(パーソナリティ)の特徴を5つの(因子、特性次元)で表すことができるというパーソナリティ理論です。

1960年代に、パーソナリティが5つの因子で表現されるという性格の5因子モデルが提唱された後、アメリカの心理学者ゴールドバーグ,L.R.が「ビッグ・ファイブ」というパーソナリティ理論として確立しました。

その後、複数の研究者によってビッグ・ファイブの研究が行われ、その研究成果は心理学以外の分野でも活用されており、関連する尺度の開発も盛んに行われてきました。

ビッグ・ファイブに関する尺度としては、現在は、アメリカの心理学者コスタ,P.T.とマックレー,R.R.のモデルが有名です。

心理学における性格分類

心理学における性格分類は、大きく特性論と類型論の2つに分類されます。

特性論

特性論とは、人の性格を「思いやりがある」「純粋」「努力家」「優しい」などの要素の配分(各要素をどれくらい持っているかの組み合わせ)で捉える理論です。

代表的な特性論としては、ビッグ・ファイブ理論、キャッテルの理論、オルポートの理論、ギルフォードの理論などを挙げることができます。

キャッテルの理論 因子分析法によって性格特性を抽出し、35の表面特性と12の根源特性に分類
オルポートの理論 辞書中から性格を表現する用語を抽出して表出特性と態度特性に分類

表出特性:主体的に行動するときの特性

態度特性:環境に適応するときの特性

ギルフォードの理論 因子分解によって13の性格特性を抽出

特性論は、人の性格特性を詳細に把握することができ、個々人の違いを比較しやすいのが優れた特徴です。

一方で、個人の統一性や独自性を捉えにくいところが課題とされています。

類型論

類型論とは、人の性格を「細長型」「内臓緊張型」「経済型」など、あらかじめ分類されたいくつかのタイプのいずれに当てはまるかで捉える理論です。

代表的な類型論としては、クレッチマーの理論、シェルドンの理論、シュプランガーの理論などを挙げることができます。

クレッチマーの理論 統合失調症(当時は精神分裂病)患者の発病前の人格特性と体格の関連に着目

細長型(分裂気質)、肥満型(躁うつ気質)、闘士型(粘着気質)に分類

シェルドンの理論 成人の身体各部を測定し、各部の発達度で人格を内臓緊張型、身体緊張型、頭脳緊張型に分類
シュプランガーの理論 人が最も興味関心を持つ領域によって人格を理論型、経済型、審美型、宗教型、権力型、社会型に分類

類型論は、個人の性格特性を全体的に把握しやすいという特徴があります。

一方で、あらかじめ分類されたタイプに当てはめることから、人の性格を固定的にとらえやすいという課題が指摘されています。

類型論と特性論については、「類型論と特性論の違いは?長所と短所は?心理学のパーソナリティ(人格)分類」で詳しく解説しています。

ビッグ・ファイブの特徴

ビッグ・ファイブは、人の性格特性を「情緒不安定性」「外向性」「開放性」「調和性」「誠実性」という5つの要素の強さで表します。

各要素は誰でも持っているものですが、その強さは一人ひとり異なっています。

ビッグ・ファイブでは、各要素の強さを数値化するなどし、その組み合わせから性格特性を総合的に判断します。

各要素の強さは「良い・悪い」で評価されるものではなく、自分の個性を客観的に把握することによって自己理解を深め、個性を活かせるようにするために活用されるものです。

ビッグ・ファイブは、現時点では、特性論の中で最も信頼性が高い指標とされ、文化差なども超えた普遍的なものとして、世界各国の心理学に関する研究論文でも使用されています。

ビッグ・ファイブの性格特性の5因子

因子(特性次元) 傾向と特徴
情緒不安定性

(neuroticism; N)

傾向:感情面や情緒面における不安定な傾向

特徴:不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ

外向性

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(extraversion; E)

傾向:興味関心が自分の外に向ける傾向

特徴:温かさ、群居性、断行性、活動性、刺激希求性、よい感情

開放性

(openness; O)

傾向:新しい経験への開放的な傾向

特徴:知的、文化的、美的好奇心・探求心や相続力の強さ

調和性

(agreeableness; A)

傾向:周囲と協調しながら行動する傾向

特徴:信頼、実直さ、利他性、応諾、慎み深さ、優しさ

誠実性

(conscientiousness; C)
傾向:責任感や計画性があり勤勉な傾向

特徴:コンピテンス 、秩序、良心性、達成追求、自己鍛錬、慎重さ

※特徴は、コスタ&マックレーの「NEO-PI-R」における各因子の下位因子(下位次元)

情緒不安定性(neuroticism; N)

情緒不安定性とは、環境刺激やストレスへの敏感さ、不安や緊張の感じやすさなどの強さを表す要素です。

情緒不安定性の要素が高い場合、対人関係で傷つきやすい、物事に対して不安や緊張を感じやすい、気持ちが不安定になりやすい、衝動性が高いなどの特徴が見られる傾向があります。

誠実性とともに物事の成果に影響を及ぼしやすい特性とされています。

外向性(extraversion; E)

外向性とは、積極性、社交性、活動性などの強さを表す要素です。

外向性の要素が高い場合、対人コミュニケーションに積極的、所属する社会(集団)の中で中心的な存在として活躍する、何事にも積極的に取り組むなどの特徴が見られる傾向があります。

高いコミュニケーション能力が要求される営業職、幅広い知識・経験や人脈を駆使して職場を支える総合職(ジェネラリスト)には重要な要素です。

一方で、医師や法曹など特定分野の専門家(スペシャリスト)が仕事で高い成果を上げるには、外向性よりも内向性の高さが重要になると考えられています。

開放性(openness; O)

開放性とは、好奇心、審美眼、想像力などの強さを表す要素です。

開放性の要素が高い場合、新しい出会いや場面に積極的、知的・文化的・美的好奇心の高さ、想像力が豊か、アイデア力が高いなどの特徴が見られる傾向があります。

成人までに過ごした環境や経験の影響を強く受ける要素で、開放性が高いほど学歴や社会的地位も高くなる傾向が指摘されています。

調和性(agreeableness; A)

調和性とは、共感性、利他性、思いやり、優しさなどの強さを表す要素です。

調和性の要素が高い場合、献身的な行動、周囲と歩調を合わせて行動する、対人関係のバランスを保つなどの特徴が見られる傾向があります。

外向性が高い場合も周囲とコミュニケーションをとって協力しますが、調和性の特徴は「自分よりも他人のことを第一に考えて行動する」ところです。

つまり、自分の利益や生きやすさより、他人や所属する社会(集団)のことを考えて、周囲と歩調を合わせたり、対人関係のバランスを保ったりするのが調和性が高い人の特徴です。

誠実性(conscientiousness; C)

誠実性とは、自己規律、慎重さ、責任感、計画性などの強さを表す要素です。

まじめさや勤勉性と訳されることもあります。

誠実性の要素が高い場合、明確な目標とそこへ到達するための計画性の高さ、責任を持った行動、勤勉さなどの特徴が見られる傾向があります。

誠実性の特徴は、明確な目標を定めて、努力と工夫を重ねて諦めずに達成を目指すところです。

つまり、「闇雲にただ汗を流すだけ」、「その場の感情に流されるお人好し」などとは異なります。

誠実性は、仕事の成果との関連性が高く、誠実性が高いほど仕事の成果が上がる傾向があります。

まとめ

ビッグ・ファイブ(特定5因子モデル)とは

人の性格特性を5つの要素(因子)の組み合わせで表現できるとする、ゴールドバーグ,L.R.がまとめたパーソナリティ理論

心理学における性格分類は特性論と類型論に分類されるところ、ビッグ・ファイブは特性論の代表的な理論

ビッグ・ファイブの性格特性の要素
  • 情緒不安定性:感情面や情緒面における不安定な傾向
  • 外向性:興味関心が自分の外に向ける傾向
  • 開放性:新しい経験への開放的な傾向
  • 調和性:周囲と協調しながら行動する傾向
  • 誠実性:責任感や計画性があり勤勉な傾向

【参考】

  • 性格の心理―ビッグファイブと臨床からみたパーソナリティ|丹野義彦著|サイエンス社
  • パーソナリティを科学する―特性5因子であなたがわかる|ネトル,D.著、竹内和世翻訳|白揚社
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