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傍観者効果とは?心理学実験の端緒となる事件と具体例は?

傍観者効果

傍観者効果とは

傍観者効果とは、事故や事件を目撃するなどし、他人を援助すべき状況であると認識しているにも関わらず、自分以外の傍観者が大勢いることで行動が抑制されるという集団心理です。

アメリカの心理学者ラタネ,B.とダーリー,J.M.が提唱しました。

英語では「bystander effect」と表記し、日本語では「傍観者効果」と訳されています。

MEMO

集団心理:集団によって形成・維持される、集団特有の意思・思考・感情などの心理

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傍観者効果の実験とキティ・ジェノヴィーズ事件

ラタネとダーリーは、「キティ・ジェノヴィーズ事件」という殺人事件の状況に着想を得た実験結果に基づいて、傍観者効果を提唱しました。

キティ・ジェノヴィーズ事件

キティ・ジェノヴィーズ事件とは、1964年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で起こった殺人事件です。

被害者のキティ(キャスリーン)・ジェノヴィーズが、帰宅途中の駅近くで前科のある男性に殺害されました。

事件後の調査により、事件発生当時、被害者の叫び声を聞いた近隣住民38人が事件に気づいて事件現場を目撃していたにも関わらず、誰も被害者を助けず、警察に通報さえしなかったことが明らかになりました。

そして、事件当時の状況が「都会の冷淡さを象徴するもの」として報道され、社会的に注目を集めました。

ラタネとダーリーの実験

ラタネとダーリーは、キティ・ジェノヴィーズ事件における近隣住民の行動に関心を持ち、以下の実験を行いました。

  1. 被験者である学生を2人、3人、6人のグループに分ける
  2. マイクとインターフォンのある部屋に1人ずつ入室させる(他の学生の様子が分からないようにするため)
  3. 各グループでマイクとインターフォンを使って討議をさせる
  4. 討議の途中で、参加者の1人が発作を起こして助けを求める内容のテープを流す
  5. 各グループの学生が行動を起こすか否か(実験者に非常事態を知らせるかどうか)、行動を起こすまでの時間を確認する

実験の結果、グループの人数が少ないほど、援助行動を起こす確率が高くなることが分かりました。

具体的には、学生2人のグループ(参加者の発作を知っているのは自分だけだと思っている場合)では、全員が援助行動を起こしました。

一方で、6人のグループでは行動を起こすまでの時間が長く、約40%の学生が最後まで援助行動を起こしませんでした。

ラタネとダーリーは、この実験結果に基づいて、ある状況に居合わせた人が多いほど援助行動は抑制され、人が少ないほど援助行動が行われる確率が高くなると考えました。

居合わせた人の数が、緊急場面における人の行動を抑制することが確認されたのです。

また、ラタネとダーリーは、キティ・ジェノヴィーズ事件について、「大勢の人が事件に気づいたからこそ、自分以外の誰かが行動を起こすだろうと考えて、誰も行動を起こさなかった。」と結論づけました。

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傍観者効果の原因

傍観者効果が起こる原因は、多元的無知、責任分散、評価懸念の3つあると考えられています。

いずれも、周りの人が多いほど影響が強くなり、自発的な行動が抑制される傾向があります。

多元的無知

多元的無知とは、周りの人が積極的に行動を起こさないことを見て、急を要する事態ではないと誤って判断することです。

ある事態が起こったときに、客観的な状況を踏まえて判断するのではなく、周囲の人が積極的に動かず傍観する様子から、「緊急性がないから行動を起こさなくて良い。」と判断してしまうのです。

責任分散

責任分散とは、他人と同調することにより、責任や非難が分散されるだろうと考えることです。

個人として評価される場面では、要援助場面で積極的に行動する人でも、集団の中に紛れる場面では、「誰かが行動するだろう。」、「周りの人も何もしていないし、自分も傍観していよう。」と考えて行動を控えてしまう傾向があります。

評価懸念(聴衆抑制)

評価懸念(聴衆抑制)とは、行動を起こした結果に対して周囲の人からネガティブな評価を受けることを恐れ、行動を抑制することです。

周りに誰もいなければ行動できていても、周囲に人がいると評価懸念によって行動が抑制され、結果として傍観してしまうことがあるのです。

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傍観者効果の具体例

傍観者効果は、私たちの日常生活の中でも頻繁に起こっています。

傍観者効果の具体例として、いじめ、体調不良者への対応、SNSの3つを確認しておきます。

傍観者効果の具体例1:いじめ

傍観者効果の典型的な例が、学校や会社で起こるいじめです。

いじめは、加害者と被害者の構図でとらえられがちです。

しかし実は、直接の加害者以外の、周囲で傍観している人の存在がいじめに大きな影響を及ぼしています。

人は、いじめに気づくと、まず、加害者と被害者、そして、自分以外の周りの人の様子を確認します。

そして、周りの人がいじめを制止する行動を見せず傍観していると、「誰もいじめを止めないのだから、切迫した状況ではないだろう。」と判断します(多元的無知)。

また、被害者がつらい思いをしていると思っても、「誰も何もしないのだから、自分が何もしなくても責任を問われたり、避難されたりしないだろう。」と考え、傍観を続けます(責任分散)。

さらに、「いじめを制止すると、周囲から白目で見られたり、いじめのターゲットにされたりするかもしれない。」という不安を抱きます(評価懸念)。

その結果、いじめを傍観し続けます。

周囲の人がいじめに加担した場合、「赤信号、みんなで渡れば怖くない。」の感覚でいじめに加担してしまうこともあります。

傍観者効果の具体例2:体調不良者への対応

例えば、ある人が街中で体調を崩し、地べたに倒れこんだとします。

周囲の人が少ない場合、その中の1人または複数人が倒れこんだ人に声をかけたり、119番通報したりする確率が高くなります。

一方で、周囲に大勢の人がいた場合、その人数が多いほど強い傍観者効果が起こり、周りの人の自発的な行動は抑制されます。

「誰も助けないし、大したことないのだろう(多元的無知)。」、「誰も何もしないし、私が何もしなくても非難されないだろう(責任分散)。」、「助けたら偽善者だと思われるだろう(評価懸念)。」などと考えて、行動を控えてしまうのです。

キティ・ジェノヴィーズ事件と同じような状況に陥るのです。

傍観者効果の具体例3:SNS

近年、ネット上でも傍観者効果が見られるようになっています。

例えば、ネット上で他人を非難したり誹謗中傷したりするネットいじめの場合、加害者と被害者の周りにはネットを介して膨大な人数の傍観者がいます。

しかし、加害者をあおったり、被害者そっちのけで加害者と空中戦を展開したりすることはあっても、被害者への直接の援助行動が行われることはほとんどありません。

多元的無知、責任分散もそうですが、特に、膨大なネットユーザーに注目されるという評価懸念が働き、自発的な援助行動が抑制されるためと考えられています。

匿名性が高いため援助行動がしやすいと思うかもしれませんが、援助に回る人は少ないのです。

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まとめ

傍観者効果

他人を援助すべき状況にも関わらず、自分以外の傍観者が大勢いることで行動が抑制されるという集団心理

傍観者効果の実験
  • 端緒:キティ・ジェノヴィーズ事件
  • 実験:討議場面で参加者の一人が発作を起こした場合における被験者の行動や行動までの時間を確認
  • 結果:周りの人が多いほど援助行動は抑制され、少ないほど援助行動が行われやすくなる
傍観者効果の原因
  • 多元的無知:周りが行動しないことで緊急性はないと判断する
  • 責任分散:周りに同調すれば責任や避難が分散されると考える
  • 評価懸念:行動の結果を周りから避難されるのではないかと考える
傍観者効果の具体例
  • いじめ
  • 体調不良
  • SNS

いずれも他人の存在が自発的な援助行動を抑制する