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認知バイアスとは?種類と身近な例、修正方法を解説

認知バイアス

認知バイアスとは

認知バイアス(社会的認知のバイアス)とは、社会心理学や認知心理学において、無意識的に生じる認知の偏りを表す概念です。

英語では「cognitive bias」と表記し、日本語では認知バイアスと訳されます。

認知バイアスが生じる原因は記憶の誤り、状況、危険、心配など非常に多く、認知バイアスは日常生活の至るところで発生しています。

認知とは

そもそも認知とは何でしょうか。

心理学の世界における認知とは、感覚器官で知覚した刺激を経験や学習などから得られた概念と関連付けて受け取り、判断や解釈を行う過程です。

  1. 感覚器官で刺激を知覚する
  2. 知覚した刺激が情報として脳に伝達される
  3. 脳内で情報の判断や解釈、取捨選択が行われる
  4. 刺激を認識する

私たちが外界からの刺激情報を認識するのは4.の段階です。

1.~3.の過程は無意識のうちに処理されており、感覚器官が知覚した刺激の大半は3.の段階で切り捨てられ、ここで拾われた(注意を向けられた)情報だけが認識されます。

しかし実際は、刺激を知覚してから認識するまでの間で「認知」という過程が存在するのです。

身近な例で認知について確認

友人に声をかけられた場合を例にとって、認知の過程を確認しておきましょう。

  1. 友人の声(刺激)を耳で知覚する
  2. 聴覚刺激が情報として脳に伝達される
  3. 対象の特徴と合致する記憶などを検索し、情報が友人の声であると判断する
  4. 友人から声をかけられたと認識する

認知バイアスを分かりやすく説明すると

以上を踏まえると、認知バイアスは、知覚した刺激(情報)を無意識化で判断・解釈・取捨選択する過程で生じる偏りということができます。

知覚された刺激は認知を経て認識されますが、認知の過程は無意識化で処理されます。

そのため、認知の過程が偏っていたとしても、本人はそのことに気づきにくいものです。

認知バイアスが生じる原因

認知バイアスが生じる原因は多岐にわたります。

心理学者のトベルスキー,A.とカーネマン,D.は、認知バイアスの一部がヒューリスティクスや心的なショートカットによって問題解決を図るために生じると主張しています。

ヒューリスティクスとは、正しい答えに必ず辿り着く保証はされない代わりに、短い時間である程度は正答に近い答えを得ることができる手法です。

私たちは無数の刺激情報の飛び交う中で生活していますが、知覚した情報全てを精査して判断や評価を下すことは不可能です。

そこで、認知バイアスにより、精度が保証されなくても情報の判断や評価にかかる時間を短縮していると考えられているのです。

一方で、心理学者のフンダ―,D.らは、認知バイアスの一部が、刺激を判断・評価する情報が不十分な場合に、予測や推測することをサポートするものだと説明しています。

いずれにしても、認知バイアスの全てを説明できるものではなく、基本的には認知バイアスごとに説明されます。

認知バイアスの種類と身近な例

以下、有名な認知バイアスの種類と身近な例について解説します。

随時、追加予定です。

自己奉仕バイアス

自己奉仕バイアスとは、成功を自分の内的要因に帰属させ、失敗を外的要因に帰属させる認知バイアスです。

例えば、仕事上の成功を自分の個人的な能力のおかげだと考え、仕事上の失敗を周囲のサポートのなさや部下の無能さのせいだと考えるのが自己奉仕バイアスです。

また、テストで良い点を取ると「テスト勉強を頑張ったからだ。」と自分の努力と結び付け、悪い点を取ると「先生の教え方が悪いからだ。」と周囲のせいにすることもあります。

客観的に見れば、本人の能力のなさが失敗の要因であっても、本人がそのことを認識せず他人のせいにしてしまうケースは少なくありませんが、自己奉仕バイアスがはたらいていると考えられます。

根本的な帰属の誤り

根本的な帰属の誤りとは、他人の行動を評価する場合に、個人の性格や気質など内的要因を偏重し、状況要因を軽視してしまう認知バイアスです。

基本的な帰属のエラー、基本的帰属錯誤などとも呼ばれます。

例えば、太郎君が待ち合わせ時間に遅れてきた場合、「太郎君は元々時間にルーズなところがあるからな。」と考えるのが根本的な帰属の誤りです。

太郎君が遅れてきた理由としては急な用事があったのかもしれない、交通機関が送れたのかもしれないなど様々な可能性がありますが、そうした外的要因は捨象して、太郎君の性格に原因を求めてしまっています。

また、別の機会に太郎君が時間どおりに来たとしても、「時間にルーズ」という印象は変化せず、「あれ、珍しく時間どおりに来た。」と思われるだけのことが多いものです。

つまり、一旦形成された根本的な帰属の誤りは、修正されにくいのです。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の仮説や信念を検証する際に、自分に都合の良い情報ばかりを取り入れ、都合の悪い情報は無視したり取り入れなかったりする認知バイアスです。

結果、稀にしか起こらない出来事を高い確率で起こると評価したり、実際に起こる可能性が高いことを稀にしか起こらないと思い込んだりしてしまいます。

例えば、一目ぼれした車の購入を考えて情報収集する際に、その車の良いところを紹介する情報にばかり目が良き、悪いところを指摘する情報は読み飛ばすか見もしないのが確証バイアスです。

メンデルの法則で有名なメンデル,G.J.が報告した実験データが、メンデルの法則の理論値と近すぎることについて、確証バイアスに基づくデータ選別が行われたという指摘があるなど、様々な場面で起こる認知バイアスと言えます。

仮説や信念が強いほど確証バイアスも強くなりやすく、大きな失敗を招くおそれがあります。

後知恵バイアス

後知恵バイアスとは、ある出来事が発生した後に、この出来事は予測可能だったと考える認知バイアスです。

例えば、事業に失敗した友人に対して、「この不況下で起業しても失敗することは分かり切っていた。」と思ったり言ったりするのが後知恵バイアスです。

また、交通事故で大切な人を失くした人が、「あの日、車で出かけないでほしいと思ったのに、出かけさせてしまった。私が止めなかったせいで事故が起きた。」などと自分を責めるのも、後知恵バイアスによる影響です。

予測が現実になった場合に、後知恵バイアスが強まるという研究結果もあり、バイアスに囚われ続けてしまうおそれもあります。

正常性バイアス

正常性バイアスとは、自分に都合の悪い情報を無視または過小評価する認知バイアスです。

恒常性バイアス、正常化の偏見と呼ばれることもあります。

例えば、大雨特別警報が発表され、河川氾濫や土砂災害などが発生するおそれが高いという予報が出されていても、「よくあることだし、今回も大丈夫だろう。」と過小評価してしまうのが正常性バイアスです。

異常を告げる情報に接しても、正常な日常生活の延長線上にあるものだと認識し、情報を無視または過小評価してしまうのです。

結果、異常事態に巻き込まれて死亡したり、大きな損失をこうむったりするおそれがありますが、実際に被害を受けるまで認識を改められないことがおおいものです。

ダニング・クルーガー効果

ダニング・クルーガー効果とは、能力の低い人ほど、自分の発言・容姿・行動などを実際よりも高く評価(優越の錯覚)する現象です。

人が自分の至らなさを認識することができないことが原因で生じる現象で、勉強、仕事、スポーツ、論理的思考など様々な場面で生じます。

心理学者のダニング,D.とクルーガー,J.が提唱したことからダニング・クルーガー効果と呼ばれます。

ダニングとクルーガーが2012年に行った実験では、能力の低い人間には以下の4つの特徴がみられることが明らかにされました。

  • 自分の能力不足を認識できない
  • 自分の能力の不十分さを認識できない
  • 他人の能力を正確に推定できない
  • 訓練を積んだ後であれば、自分の能力不足を認識できる

つまり、能力が低い人は自分の能力不足や不十分さ、他人の能力を正しく把握できないために自信過剰に陥っているのであり、訓練を積めば未知であったことを知ることができるのです。

例えば、運動音痴の子供が、「自分は他人よりサッカーが得意だ。」と思い込んでいるというケースは少なくありません。

しかし、自分よりも上手な子どもたちとサッカーの練習をするうちに能力不足や不十分さに気づくようになります。

なお、能力が高い人ほど自分の能力不足は不十分さ、他人の能力を正しく把握できるため、自分を過小評価するという現象が起こります。

公認心理師試験の出題歴

認知バイアスは、第1回公認心理師試験に出題されました(正答は赤字)。

問13 社会的認知のバイアスについて、正しいものを1つ選べ。

①他者の内面を実際以上に理解していると誤解することを透明性の錯覚〈透明性錯誤〉という。

②集団の違いと行動傾向との間に、実際にはない関係があると捉えてしまうことを疑似相関という。

③観察者が状況要因を十分に考慮せず、行為者の内的特性を重視する傾向を行為者−観察者バイアスという。

④自分の成功については内的要因を、自分の失敗については外的要因を重視する傾向を確証バイアスという。

⑤人物のある側面を望ましいと判断すると、他の側面も望ましいと判断する傾向を光背効果〈ハロー効果〉という。

引用:第1回公認心理師試験

まとめ

認知バイアスとは

社会生活を送る中で無意識的に生じる認知の偏り

認知バイアスが生じる原因
  • ヒューリスティクスや心的なショートカットで問題解決を図るため
  • 刺激の判断・評価に情報が不足するときに、予測や推測をサポートするため
認知バイアスの主な種類と身近な例
  • 自己奉仕バイアス
  • 根本的な帰属の誤り
  • 確証バイアス
  • 後知恵バイアス
  • 正常性バイアス
  • ダニング・クルーガー効果
公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問13