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認知的不協和とは?具体例とフェスティンガーの認知的不協和理論

認知的不協和

認知的不協和とは

認知的不協和とは、アメリカ合衆国の心理学者フェスティンガー,L.が提唱した複数の矛盾する認知を抱えた状態を表す社会心理学の用語です。

英語では「cognitive dissonance」と表記され、日本語では認知的不協和と訳されます。

心理学では、ある人が知覚した外界の刺激を評価、判断、解釈する過程などを認知といいます。

フェスティンガーは、ある対象に関する複数の認知の間に矛盾がある場合を不協和状態と呼び、その状態を解消しようとする心理作用を示した認知的不協和理論を提唱しました。

認知的不協和理論とは

認知的不協和理論とは、フェスティンガー提唱した、複数の矛盾する認知を抱えた状態による不快さを低減または解消しようとする心理作用に関する理論です。

フェスティンガーは、認知的不協和は人に不快な緊張状態を生じさせ、それを低減または解消するために自分の態度や行動を変えると考えました。

複数の認知的要素の間に不協和が存在する場合、不快な緊張状態を低減または除去するための圧力が生じ、要素の一方を変化させたり新しい要素を加えたりして認知的不協和の状態を変えると考えたのです。

また、認知的不協和を低減または解消しようとする圧力の強さは、不協和の大きさの関数であるとしています。

つまり、認知的不協和による不快さが大きいほど、それを低減または解消させようとする圧力が強くなるということです。

認知的不協和に関するフェスティンガーの実験

フェスティンガーは、以下の手順で認知的不協和に関する実験を行っています。

  1. 被験者である学生に単純作業を行わせて報酬を支払う
  2. 1.の学生に、別の学生(続けて単純作業を行う学生)に単純作業の楽しさを伝えさせる
  3. 学生に支払う報酬を変えて(1ドルまたは20ドル)1.~2.の順序で実験を行う

実験の目的は、「つまらない作業」という認知と「楽しい作業だと伝える」という認知の間に認知的不協和が生じた場合に、楽しさを伝える程度が報酬額で変化するかどうかを確かめることです。

この実験では、報酬が少ない学生は、報酬が多い学生よりも楽しさを伝える度合いが強いという結果が得られました。

フェスティンガーは、実験結果について、報酬が少ない学生の方が、割に合わないつまらない作業であったことと、楽しい作業だと伝えることの間に強い認知的不協和が生じ、「つまらない作業」という認知を「仕事が楽しかった」に変えて不協和を解消しようという圧力が強く働いたと考えました。

一方で、高い報酬を得た学生は、つまらない作業と報酬が等価交換となって不協和の度合いが低かったと考えられています。

認知的不調和の具体例

認知的不調和の具体例には、以下のようなものを挙げることができます。

認知的不協和の具体例:タバコ

認知的不協和の具体例として有名なのが、タバコに関する不協和です。

タバコの有害性が知られるようになった現在、喫煙者は、「喫煙は肺がん発症のリスクが高い」と認知しており、「自分は喫煙する」という認知との間に矛盾を感じます。

認知自分は喫煙する
認知喫煙は肺がん発症のリスクが高い

そして、認知間の矛盾によって生じた不快さを解消するために、認知または行動を変えようとします。

行動を変える

喫煙することにより「自分は喫煙する」という認知を「自分は禁煙している」という認知に変える方法です。

「自分は禁煙している」という認知は、「喫煙は肺がん発症のリスクが高い」という認知と矛盾しないため、不協和状態は解消されます。

認知自分は喫煙する→自分は禁煙している
認知喫煙は肺がん発症のリスクが高い

自分の行動を変更することで認知を変えることができるため、行動の変更が容易な場合に用いられます。

認知を変える(追加する)

行動の変更が困難な場合、別の認知を追加することで不協和状態を緩和させる方法があります。

例えば、「喫煙は肺がん発症のリスクが高い」という認知を「喫煙と肺がんの間に因果関係はない」という認知に変更することが考えられます。

また、「喫煙していても長生きする人はいる」「肺がんによる死亡者は交通事故による死亡者より少ない」という認知を追加しても、不協和状態は緩和されるでしょう。

認知自分は喫煙する
認知喫煙は肺がん発症のリスクが高い

→喫煙と肺がんの間に因果関係はない

認知喫煙していても長生きする人はいる

肺がんによる死亡者は交通事故による死亡者より少ない

ヘビースモーカーなど禁煙の実行が困難な人が、認知的不協和状態を低減させるために用いることが多い方法です。

根本的な解決にはなっていませんが、少なくとも不協和から生じる不快な緊張状態は緩和されます。

認知的不協和の具体例:買い物

各メーカーを何度も訪問し、ディーラーと何度も話をし、カタログも擦り切れるほど読み込み、家族とも話し合いを重ねた上でAという車を購入した後、購入候補に挙がっていたB車をA車より評価する記事を読んだとします。

このとき、「A車を購入した」という認知と「B車の方がA車より評価が高い」という認知の間で不協和が生じます。

しかし、一般家庭では車を何台も購入したり、頻繁に買い替えたりすることは困難です。

そこで、B車よりもA車を高く評価する記事やレビュー検索しては丹念に読み込もうとします。

「B車の方がA車より評価が高い」という認知を「A車の方がB車より評価が高い」という認知に変えようとするのです。

認知的不協和の具体例:友人の態度

外出先で友人を見かけて挨拶したが、友人は無視をして立ち去ってしまったとします。

この場合、「見かけたのは友人である」という認知と「友人が無視をして立ち去った」という認知は矛盾し、不協和が生じます。

そのままでは不快な状態が継続するため、前者を「それほど仲が良い友人ではなかった」という認知に変えるか、後者を「急いでいて気付かなかったのだろう」という認知に変えて、不協和状態を緩和しようとします。

事実は見かけた友人に確認するまで明らかになりませんが、それまで不協和状態が続くのを避けるために、認知を変えてしまうのです。

認知的不協和の具体例:酸っぱい葡萄(ぶどう)

認知的不協和の具体例は、寓話の中にも見ることができます。

代表的なのがイソップ物語の酸っぱい葡萄です。

酸っぱい葡萄のあらすじは、以下のとおりです。

  1. 空腹のキツネが、おいしそうに実ったブドウを見つける
  2. 跳び上がってブドウの実を取ろうとするが届かない
  3. キツネは「ブドウは酸っぱくてマズいに違いない。食べてやるもんか。」と負け惜しみを言って去る

キツネの内面では、「ブドウを取って食べたい」という認知と「ブドウを取ることができない」という認知の間で不協和状態が生じています。

そして、ブドウが食べたくて仕方ないにも関わらず、どうしても取ることができないことを悟ると「価値がない物」とみなし、諦めることで不協和状態を緩和させています。

キツネには「実はそれほどお腹が空いていなかった」という認知に変える方法もありますが、悔しさや怒りからブドウを無価値な物とみなしているのです。

まとめ

認知的不協和とは

フェスティンガーが提唱した、矛盾する認知を複数抱えた状態を表す用語

認知的不協和状態では不快な緊張状態となり、それを回避するための心理作用が生じる

認知的不協和理論とは

フェスティンガーが提唱した、認知的不協和の状態を低減または解消しようとする心理作用に関する理論

認知的不協和の具体例
  • タバコ
  • 買い物
  • 酸っぱい葡萄(イソップ童話)