心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

発達性協調運動障害とは?特徴とトレーニング(療育)の方法は?

発達性協調運動障害

発達性協調運動障害とは

発達性協調運動障害とは、年齢や能力から期待されるよりも協調運動がぎこちない(不正確)もしくは難しい(困難)障害のことです。

視覚や聴覚などの五感や筋肉に異常がないのに協調運動に難があり、日常生活に支障をきたしている場合に診断されます。

5歳から11歳の子どもの5~6%が発達性協調運動障害を発症することや、男児の方が女児より発症率が高いことが明らかになっています。

英語では「Developmental coordination disorder」と表記し、DCDと略されています。

日本においては、不器用症候群と呼ばれていた時期もありますが、現在は発達性協調運動障害で統一されています。

協調運動とは

協調運動とは、別々の動きを一緒に行う運動のことです。

例えば、服を着るときは、目でボタンを見ながら手でボタンを外しますし、ボールを投げるときは、ボールと相手を目で見ながら腕でボールを投げます。

また、縄跳びで遊ぶときは、腕で縄を回しながらタイミングよくジャンプする必要があります。

他には、ダンス、料理、楽器の演奏、パソコン作業なども協調運動が必要であり、私たちは日常生活のあらゆる場面で意識せず協調運動を行っていると言っても過言ではありません。

発達性協調運動障害の原因

発達性協調運動障害の原因は、現在のところ特定されていません。

ただし、以下のような要因が発達性協調運動障害の原因だと指摘する研究結果があります。

  • 妊娠中のお母さんのアルコール摂取
  • 妊娠中のお母さんのアルコール摂取により早産もしくは低体重で出生した

また、遺伝的要因を指摘する研究者もいます。

発達性協調運動障害と自閉スペクトラム障害(広汎性発達障害)の併発が多いことからこうした指摘があるのですが、因果関係は明らかにされていないのが現状です。

発達性協調運動障害の症状

発達性協調運動障害の症状は、個人差が大きく、日常生活における運動全般がぎこちなくなることあれば、一部の運動に難がある場合もあります。

粗大運動と微細運動

人の運動は、粗大運動と微細運動に分類されます。

発達性協調運動障害を発症すると、粗大運動と微細運動の両方もしくはいずれかの協調運動がうまくできず、日常生活に支障をきたすことになります。

粗大運動とは

粗大運動とは、人が成熟に伴って身につけるもしくは学習する、「姿勢」と「移動」に関する全身を使った運動です。

粗大行動には、成熟に伴って自然に身につく運動と、後天的に学習して身につく運動があります。

乳児期の赤ちゃんは、月齢を経るにつれて、寝返り、ズリバイ、ハイハイ、伝い歩きなどができるようになりますが、これらが成熟に伴って自然に身につく運動です。

一方で、幼児期以降は、ダンス、そろーり歩き、ストライダー・自転車に乗るなど、学習することで粗大行動を身につけていきます。

微細運動とは

微細行動とは、手先や指先の動きなど、細かい筋肉の調整を必要とする運動です。

例えば、絵を描く、字を書く、物をつまむ、引っ張る、パズルをはめる、ボタンを外すといった運動が微細運動です。

乳児期の赤ちゃんの運動は粗大運動が中心ですが、少しずつ身体をつねる、おもちゃを引っ張る、小さい物をつまむといった微細運動を覚えていきます。

年齢別にみる発達性協調運動障害の症状

発達性協調運動障害の症状によって日常生活に支障をきたすのは、集団生活を始める保育園や幼稚園、小学校に入ってからが多いですが、乳幼児期のうちから症状が見られることがあります。

乳児期の赤ちゃん(0歳~1歳)に見られる発達性運動障害の症状

乳児期の赤ちゃんは、自力で身体を動かすこともままならない状態で生まれ、身体の動かし方(粗大運動)を一つひとつ身につけていきます。

赤ちゃんが体の動かし方を覚えていく速度は、遺伝、出生時の健康状態、身長体重、家庭環境などによって個人差が大きいため、発達性協調運動障害の症状が目立ちません。

しかし、発達性協調運動障害の子どもを持つ親から、子どもが赤ちゃんの頃のエピソードを聴取すると、以下のような症状が見られたという答えが返ってきます。

  • 月齢を経ても母乳やミルクの飲み方が上手にならない
  • 離乳食をうまく噛んだり飲み込んだりできない
  • お座りがぎこちない
  • 寝返り、ズリバイ、ハイハイが上手にできない(身体や手足の動かし方がぎこちない)
  • 壁や物によくぶつかる
  • おもちゃを掴む、引っ張る、投げるのが苦手

いずれも乳児期の頃の赤ちゃんによく見られる行動ですが、発達性協調運動性障害がある場合、ある運動を身につけるのが標準的な時期よりもゆっくりで、適切な関わりをせずに放っておくとぎこちなさが継続します。

幼児期前期の子ども(1歳~3歳)に見られる発達性協調運動障害の症状

幼児期に入ると、保育園に入るなどして他の子どもと一緒に過ごす機会や時間が長くなるため、子どもの不器用さが気になるようになります。

ただし、運動能力の個人差がまだまだ大きく、発達性協調運動障害の診断をすることは難しいことが多いものです。

乳児期前期に見られる発達性協調運動障害の症状は、以下のとおりです。

  • 伝い歩きや一人歩きがうまくできない
  • 小さいオモチャをつまんだり掴んだりできない
  • バランスを崩しやすく、何もない場所でもよく転ぶ
  • 服をうまく脱げない

幼児期後期の子ども(4歳~6歳)に見られる発達性協調運動障害の症状

幼児期後期は、ほとんどの子どもが保育園や幼稚園に入り、集団生活の中で身体や手足をたくさん使って遊ぶ時期です。

そのため、発達性協調運動障害がある子どもの不器用さが際立つようになり、親としては心配しますし、子ども本人は自信を無くします。

保育士や幼稚園教諭から、子どもの不器用さを指摘されたり専門機関を紹介されたりするのも幼児期後期頃からです。

運動能力の個人差は、乳児期や幼児期前期に比べると小さくなっており、発達性協調運動障害と診断される子どもが増えていきます。

幼児期後期に見られる症状としては、以下のようなものがあります。

  • パズルや積み木がうまくできない
  • 頭から転んで大きなケガをする(手が出ない)
  • ボタンを留め外し、ファスナーの上げ下げが苦手で、着替えに親の補助が必要
  • お遊戯のダンスや体操が苦手
  • うんちの後、お尻をトイレットペーパーでうまく拭けない

発達性協調運動障害の診断

発達性協調運動障害の診断基準は、DSM-5とICD-10の2つがあります。

DSM-5とは

DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、精神障害のための共通言語と標準的な基準を示したものです。

正式名称は「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」で、日本では「精神障害の診断と統計マニュアル」と訳されますが、一般的には英語表記の頭文字を並べてDSMと呼ばれています。

DSMは、DSM-Ⅰの出版以降、発達障害などに関する新たな知見や研究結果を参考に改定が繰り返され、現在はDSM-5が最新となっています。

引用:DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)|発達障害の診断基準|psycho-lo

ICD-10とは

ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)とは、WHO(世界保健機関)が作成している、死因や疾病に関する統計と分類(ICD)の第10版です。

DSM-5とICD-10における発達性協調運動障害の診断基準の違い

DSM-5とICD-10では発達性協調運動障害の判断基準が異なっており、受診した病院等の医師がどちらを用いて診断するかによって診断が変わることがあります。

ICD-10の診断基準では、発達性協調運動障害は「心理発達の障害」に分類され、診断においては知能指数が重要な意味を持ちます。

例えば、知能指数が70未満〈明らかな精神遅滞〉であれば、子どもの不器用さや運動の問題は精神遅滞が原因と診断されます。

つまり、発達性協調運動障害の症状を満たしも、知能指数によって診断が変わることがあるのです。

一方で、DSM-5の診断基準では、発達性協調運動障害は「神経症群」に入り、発達性協調運動障害の症状を満たすか否かで診断されます。

子どもの運動能力のテスト

発達性協調運動障害の診断においては、子どもの運動能力が、年齢や能力から期待される運動能力とどの程度差があるかをテストします。

使用されるのは、「MABC-21(Movement Assessment Battery for Children,2nd version)」や「JPAN(Japanese Playful Assessment for Neuropshychological Abilities)」など、感覚処理・行為機能を検査するテストです。

ただし、テスト結果のみで診断されることはなく、子どもの症状や日常生活における支障などを総合して診断されることになります。

発達性協調運動障害の相談

子どもの不器用さや運動のぎこちなさに不安を感じた場合は、まず、かかりつけの小児科に相談してください。

発達障害や発達性協調運動障害に詳しくない小児科医もいますが、何度も受診したことのある小児科であれば、少なくとも子どもの状態や能力を把握しているはずなので、一度は相談してみましょう。

また、保育士や幼稚園教諭など、家族の次に子どもと長い時間を過ごしている人に相談することも考えられます。

その他の相談先としては、以下のような機関が考えられます。

  • 保健センター:保健師が子どもの発達に関する相談に応じる他、必要に応じて発達障害関係の医療機関や療育施設を紹介している。
  • 子育て支援センター:保健師や看護師が子どもの発達相談に応じ、発達障害関連機関の紹介や療育指導を行っている。
  • 児童相談所:精神科医、小児科医、児童福祉司、臨床心理士など発達障害の専門家が在籍し、24時間いつでも相談に応じる他、発達障害の検査や関係機関との連携も行っている。
  • 発達障害者支援センター:相談支援の他、発達障害関係の医療機関や療育機関の紹介を行っている。

いずれも相談する段階では大きな違いはないため、最寄りの機関に相談してください。

小児科医、保育士、幼稚園教諭などから専門機関を紹介してもらえることもあります。

発達性協調運動障害の療育

発達性協調運動障害の根本的な治療法は見つかっておらず、通常は、作業療法によって必要な運動を身につけさせる支援を行います。

作業療法とは、遊び(作業)を通して子どもに協調運動を身につけさせていく方法です。

日常生活、運動、学習における動作に必要な運動を遊びの中に盛り込み、子どもが遊びながら身につけていけるようサポートします。

発達性協調運動障害の子どもの育て方

発達性協調運動障害による不器用さで一番悩んでいるのは子ども自身です。

「なんて不器用なんだ。」、「こんなこともできないのか。」と不器用さを責める関わりは、子どもを追い詰めるだけで不器用さの改善にはつながらず、子どもの自尊心を低下させるだけです。

まずは、子どもが不器用なりに努力していることを褒めてあげる姿勢が大切です。

また、子どもが苦手な運動を、意識的に何度も繰り返し練習させてあげる関わりも欠かせません。

練習させるときは、作業療法と同じく、子どもが楽しんで自主的に取り組めるよう関わり方を工夫することを忘れないでください。

思いつかないようなら、専門機関に相談して、家庭でできる支援方法を教えてもらいます。

まとめ

発達性協調運動障害とは

年齢や能力から期待される協調運動がぎこちない、または、困難な状態

発達性協調運動障害の原因

特定されていないが、以下の原因が指摘されている

  • 妊婦のアルコール摂取
  • 妊婦のアルコール摂取により早産または低体重で出生
発達性協調運動障害の症状

粗大運動と微細運動の両方または一方の協調運動がうまくできず、日常生活に支障をきたす

  • 粗大運動:成熟に伴って身につけるまたは学習する、「姿勢」と「移動」に関する全身運動
  • 微細運動:細かい筋肉の調整を要する運動
発達性協調運動障害の診断
  • ICD-10:心理発達の障害に分類され、知能指数が診断時に重要な意味を持つ
  • DSM-5:神経症群に分類され、発達性協調運動障害の症状を満たすか否かで診断
発達性協調運動障害の相談
  • かかりつけ医
  • 保育園・幼稚園
  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所
  • 発達障害者支援センター
発達性協調運動障害の療育

根本的な治療法は発見されておらず、作業療法により日常生活に必要な作業を身につけさせる

発達性協調運動障害の子どもの育て方

子どもの努力を誉め、できないことを繰り返し練習させる

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