発達障害(乳児期の赤ちゃんの特徴や兆候)

発達障害

発達障害とは

発達障害とは、脳機能の障害により、身体、学習、言語、行動などの一連の症状が低年齢で発現し、持続する状態です。

発達障害者支援法における発達障害の定義

日本では、発達障害者支援法と発達障害者支援法施行令で発達障害が定義されています。

発達障害者支援法第2条第1項では、以下のとおり発達障害が定義されています。

の法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。

(発達障害者支援法第2条)

また、文部科学省の発達障害者支援法施行令第1条では、以下のとおり定義されています。

発達障害者支援法 (以下「法」という。)第2条第1項 の政令で定める障害は、脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもののうち、言語の障害、協調運動の障害その他厚生労働省令で定める障害とする。

(発達障害者支援法施行令第1条)

発達障害の人数

発達障害の人数について、2つの調査結果を確認しておきます。

文部科学省の調査結果

文部科学省が公表している「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」では、「発達障害の可能性のある」児童生徒の割合が6.5%、とされています。

同調査は、2012年2~3月に、全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒約5万3000人を対象として実施され、教職員などの見立てを集計したものです。

なお、別の調査結果では特別支援学級に在籍する児童生徒が1.4%いるとされており、合計で7.9%です。

つまり、日本の総人口(約1億2000万人)のうち約1000万人が発達障害の可能性があるということです。

全ての人が日常生活に支援を要するわけではありませんが、数百万人は支援を受けているまたは支援を要する状態だと考えられています。

厚生労働省の調査

厚生労働省が公表している「平成28年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」の結果では、医師が発達障害と診断した人が推計48万1000人とされています。

また、推計48万1000人のうち、障害者手帳を所持している人の割合は76,5%、障害者手帳を取得していない人の割合は21.4%とされています。

同調査結果は、全国約2,400の国政調査の調査区に住む在宅の障害児や障害者などを対象として実施され、6,175人の有効回答を集計したもので、調査時期は2016年12月1日です。

発達障害と知的障害の違い

発達障害と混同されやすい障害として「知的障害」を挙げることができます。

知的障害とは、知的能力全般が年齢相応の発達より遅れている状態で、発達障害とは別の障害です。

しかし、いずれも名称に「障害」がつくこと、行動・コミュニケーション・社会適応などに問題が見られること、発達障害と知的障害を併発する子どもが多いことなどから、混同や誤解をされやすくなっています。

発達障害の種類(分類)

発達障害者支援法では、発達障害が「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害」と定義されていました。

医療現場では、ICD-10またはDSM-5によって発達障害の診断が行われています。

ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版)における発達障害

ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)とは、WHO(国際保健機関)が、医学的に類似した疾患や傷害、状態などを区別・整理して国際的な統計基準として公表している分類です。

英語では「International Classification of Diseases」と表記され、一般的には頭文字を並べてICDと呼ばれます。

ICDは、日本を含む世界各国で活用されている診断基準です。

2018年6月にICD-11(第11回改訂版)が公表されましたが、現時点では1990年に採択された「ICD-10」が使用されています。

ICD-10では、発達障害が以下のとおり分類されています。

F8 心理的発達の障害
 F80:会話および言語の特異的発達障害
 F81:学力の特異的発達障害
 F82:運動能力の特異的発達障害
 F83:混合性特異的発達障害
 F84:広汎性発達障害
 F88:他の心理的発達の障害
 F89:特定不能の心理的発達障害
F9:小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
 F90:多動性障害
 F91:行為障害
 F92:行為および情緒の混合性障害
 F93:小児期に特異的に発症する情緒障害
 F94:小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害
 F95:チック障害
 F98:通常小児期および青年期に発症する他の行動および情緒の障害
 F99:特定不能の精神障害

※下位カテゴリーは割愛

出典:ICD-10

DSM(精神障害の診断と統計の手引き)における発達障害

DSMとは、アメリカ精神医学会が出版している、精神障害のための共通言語と標準的な基準を示したものです。

正式名称は「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」で、日本では「精神障害の診断と統計マニュアル」と訳されますが、一般的には英語表記の頭文字を並べてDSMと呼ばれています。

引用:DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)|発達障害の診断基準|psycho-lo

DSMの最新版であるDSM-5は、世界的に使用されている診断基準であり、DSM-Ⅳからの改定時に発達障害の診断基準などが大きく変更されています。

DSM-5では、発達障害が以下のとおり分類されています。

コミュニケーション症群
  •  言語症
  •  語音症
  •  小児期発症流暢症(吃音)
  •  社会的コミュニケーション症
  •  特定不能のコミュニケーション症
限局性学習症
  •  読字の障害を伴う
  •  書字表出の障害を伴う
  •  算数の障害を伴う
運動症群
  •  発達性協調運動症
  •  常同運動症
  •  チック症群
  •  トゥレット症
  •  持続性運動または音声チック障害
  •  暫定的チック症
  •  他の特定されるチック症
  •  特定不能のチック症

自閉スペクトラム症

注意欠如・多動症
  •  混合して存在
  •  不注意優勢に存在
  •  多動・衝動優勢に存在
  •  他の特定される注意欠如・多動症
  •  特定不能の注意欠如・多動症

出典:DSM-5

発達障害の特徴

発達障害には、他の疾患や障害とは異なる特徴が複数あります。

気づきにくさ

発達障害は、見た目や言動から障害の有無を判断するのが難しい障害です。

例えば、落ち着きがない子どもがいたとして、落ち着きのなさが発達障害の症状なのか、しつけ不足によるものなのか判断するには、医師でも容易ではありません。

そのため、たとえ発達障害を原因とする症状が見られたとしても、「性格が悪い」、「落ち着きがない」、「親の育て方が悪い。」など、子どもの性格や個性、親の育て方の問題だと捉えられがちです。

子ども自身も、「周りの子どもと自分はどこか違う。」などと違和感を抱きつつ、「自分が発達障害かもしれない。」と考えるのは難しいものです。

また、実務上、発達障害の子どもを持つ親が「子どもが発達障害かもしれないと思っていたが、障害があることを認めたくなかったし、周囲の偏見も怖くて放置していた。」と話すことは多く、子どもの発達障害を疑いながら放置している家庭が一定数あると考えられます。

そして、結果として、発達障害を抱えながら病院や専門機関を受診する機会を得られず、特性に応じた適切な指導や教育を受けずに成長し、社会生活に支障をきたす子どもが生まれてしまいます。

最近は、大人になって初めて発達障害と診断される「大人の発達障害」の問題が注目されていますが、同じ事情によるものです。

症状の変動しやすさ

発達障害の症状は、子どもを取り巻く環境によって変動しやすいものです。

例えば、子どもの言動を受容してくれる教師がクラス担任をしている間は比較的落ち着いた学校生活を送れていても、進級して担任が変わった途端に症状が悪化することもあります。

家庭でも親の接し方によって症状が変動しますし、社会に出た後も職場環境や人間関係によって落ち着いたり不安定になったりします。

併発しやすさ

発達障害は、個人差はありますが、複数の発達障害が重複して存在する傾向があります。

例えば、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)の子どもがADHD(注意欠陥多動性障害)やLD(学習障害)も抱えていることがあります。

また、知的障害やてんかんなど発達障害以外の障害を併発していることも珍しくありません。

そのため、同じ診断名であっても、社会生活への支障の程度や内容は一人ひとり異なります。

乳児期の赤ちゃんに見られる発達障害の特徴と徴候

以下、乳児期の赤ちゃんに見られる発達障害の特徴と兆候(発達障害と診断された子どもの乳児期のエピソードとして語られることが多い態度や言動)について解説します。

ただし、発達障害の特徴と兆候となる症状が見られたとしても、必ず発達障害と診断されるわけではありません。

親の関わり方、養育環境、遺伝的要因などが症状の原因となっている可能性もありますし、発達が緩やかなだけの可能性もあるため、参考程度だと考えてください。

人見知りしない

見知りとは、見慣れない人や知らない人に遭遇した場面で、好奇心と不安を同時に抱いて葛藤し、泣き出したり養育者を探し求めたりする行動です。

人見知りは、赤ちゃんが養育者とそれ以外の人を区別できるようになった証であり、健常な発達を遂げていれば生後6~7ヶ月頃に始まります。

発達障害のあると、いつまでも人見知りを始めないことがあります。

一人を嫌がらない

健常に発達している赤ちゃんは、一人になることを嫌がり、少しでも養育者の姿が見えなくなると不安を感じて泣き出します。

しかし、発達障害の赤ちゃんは、一人になっても表情一つ変えず落ち着いています。

また、ズリバイやハイハイを覚えても養育者の後追いをしない傾向があります。

抱っこを嫌がる

通常、赤ちゃんは養育者との身体接触を求めます。

特に、眠たい、怖い、気分が悪いなど不快さを感じた場合、養育者に抱っこを要求します。

しかし、発達障害の赤ちゃんは、感覚が過敏で身体接触を嫌がり、抱っこされると泣いて拒否することがあります。

名前を呼んでも振り向かない、あやしても反応しない、目が合わない

赤ちゃんは、生まれたばかりの頃から養育者の声を聞き分けられるところ、月齢を経て顔を自由に動かせるようになると、養育者の声がした方を振り向きます。

また、身近な人が抱っこしたり微笑んだりすると、嬉しそうに手足をバタバタさせたり微笑み返したりします。

こうした行動は、他人の関わりという刺激に反応するというコミュニケーションの基礎が芽生えている証です。

発達障害の赤ちゃんは、名前を呼んでも振り向かない、あやしても反応がない、目が合わないことがあります。

真似をしない

赤ちゃんは、生後9か月頃から養育者の真似をして遊ぶようになります。

真似は、言葉、日常的な生活習慣、礼儀作法など、日常生活に必要なスキルを身につけるために不可欠な行動です。

また、赤ちゃんが周囲の人や物に興味を持っていることの証でもあります。

しかし、発達障害の赤ちゃんは、生後1歳を過ぎても真似をせず、養育者などの真似をして習得すべき日常生活上の行動が身につきにくいものです。

指さしをしない

赤ちゃんは、生後10ヶ月~生後1歳頃に、興味のある物を指さすようになります。

指さしは、言葉を十分に使うことができない赤ちゃんが、自分の要求や興味のある物を周囲の人に知らせるためのコミュニケーション手段です。

指さしの開始は、赤ちゃんが、自分の気持ちや興味を周囲の人に気づいてほしいと思っていることの証です。

母子手帳の生後1歳の欄に「興味のあるものを指さししますか?」という質問があるように、指差しは、赤ちゃんの発達を確認する上で大切な指標とされています。

しかし、発達障害の赤ちゃんは、生後1歳を過ぎても指差しを始めないことがあります。

赤ちゃんに発達障害の兆候や特徴が見られた場合

乳児期に発達障害と診断されることはほぼありません。

乳児期に発達障害の特徴や兆候が見られても、発達障害の症状なのか、遺伝、環境、発達の速度によるものなのか、医師にも判断が難しいのです。

しかし、発達障害が疑われる場合、障害特性に応じた対応を教えてもらえたり早期から療育を開始したりできることもあるため、早めに相談することが大切です。

発達障害の相談機関

発達障害を相談できる主な機関は、以下のとおりです。

  • かかりつけの小児科
  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所
  • 発達障害者支援センター

かかりつけの小児科の医師が発達障害に詳しいとは限りません。

しかし、赤ちゃんの問題はかかりつけ医にまず相談するのが基本であり、相談した上で、必要に応じて相談機関を受診させるようにします。

児童相談所や発達障害者支援センターでは、電話相談も受け付けており、窓口へ行くのがためらわれる場合、まずは電話してみることもできます。

なお、民間企業でも発達障害に関する相談を受け付けているところがあります。

しかし、対応はピンキリであり、古い知識に基づいて誤った助言などをされるケースが相次いでいるため、公的機関に相談するようにください。

まとめ

発達障害とは

脳機能の障害による身体、学習、言語、行動などの症状が低年齢で発現して持続した状態

発達障害の種類(分類)
  • ICD-10(疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版)による分類
  • DSM(精神障害の診断と統計の手引き)による分類
発達障害の特徴
  • 気づきにくさ
  • 症状の変動しやすさ
  • 併発しやすさ
乳児期の赤ちゃんに見られる発達障害の特徴と兆候
  • 人見知りしない
  • 一人を嫌がらない
  • 抱っこを嫌がる
  • 名前を呼んでも振り向かない、あやしても反応しない、目が合わない
  • 真似をしない
  • 指さしをしない
赤ちゃんに発達障害の特徴や兆候が見られた場合

かかりつけの小児科や相談窓口へ相談

  • かかりつけの小児科
  • 保健センター
  • 子育て支援センター
  • 児童相談所
  • 発達障害者支援センター

【参考】

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