心理学の世界にコロがりこもう!

発達心理学とは?研究対象は乳幼児期から老年期までの生涯?

発達 発達心理学

発達とは何か

発達心理学における発達とは、受精から死に至るまでの人の心身の機能の変化のことです。

英語では「development」です。

一般的には、身長や体重の増加、新しい知識や経験の獲得など、子どもが大人になるまでの変化の過程を意味する言葉として使用されています。

しかし、発達心理学における発達は、増加や上昇などポジティブな変化の後にやってくる人生の長い期間を占める成年期や壮年期、老いていく老年期を経て死に至るまでを含んでいるのです。

また、人が発達の過程で獲得するものだけでなく、獲得と同時に喪失していくものも対象としています。

ポイント
  • 一般的な発達:子どもが大人になるまでの変化の過程
  • 発達心理学の発達:受精から死に至るまでの生涯にわたる変化の過程

発達の構成要素

アメリカ合衆国の発達心理学者エリクソン,E.H.は、発達には3つの構成要素があると考えました。

成長受精から死に至るまでの間で、最も発達した状態になるまでの過程

(成長の反対が老化)

成熟生殖が可能な状態に達すること

成長の過程を通して行動が変容すること

学習経験を通して得た知識や理解によって行動や態度を調整すること

発達と成長の違い

成長とは、人の障害の中で最も発達した状態になるまでの過程であり、上記表のとおり発達の要素の一つです。

なお、人の発達は、生涯発達のピーク(最も発達した段階)までの過程を成長、ピークを過ぎてから死に至るまでの過程を老化と区分されます。

ポイント
  • 成長は発達の要素の一つ
  • 生涯発達のピークまでの過程が「成長」、ピークから死に至るまでの過程が「老化」

発達と発育の違い

発育とは、生物が育って大きくなることです。

人を含む生物が物理的に大きくなることを表す単語であり、心の成長を含まないことや、また、老化や喪失の意味合いも持たないところが発達とは違います。

発達心理学とは何か

発達心理学とは、人の発達のうち「心理的な」発達について、人がどのように発達していくかを研究する心理学の一分野です。

つまり、人の心がどのように形成され、どのように変化していくのかを取り扱う学問です。

発達心理学は、人の心の変化を研究する学問であるという意味で、心理学における基礎科学としての側面を有しています。

また、発達心理学の研究によって得られた成果は、人の生涯発達や教育、育児、社会適応のサポートなど幅広い分野に応用することができます。

実際に、教育現場や発達障害の療育、ペアレントトレーニングなど幅広い分野で応用されています。

ペアレントトレーニングについては、「ペアレントトレーニングとは?発達障害の子どもへの接し方が変わる?」で詳しく解説しています。

発達心理学の研究対象

発達心理学は、人を「生涯を通して変化を続けるもの」ととらえ、人の生涯における変化の過程を研究対象としています。

研究領域は、身体や神経系の機能、知覚、言語、思考、自我、社会性の変化など多岐にわたり、発達障害も研究領域に含まれています。

以前は、壮年期や老年期は衰退の時期だと認識されており、発達心理学の研究対象といえば乳児期から青年期までが中心でした。

過去の発達心理学の研究結果に青年期以降のものが少ないのは、そのためです。

しかし、人格、知識、知恵などは壮年期や老年期にも発達するという感が型が主流になり、現在は、人を「生涯を通して発達するもの」ととらえて生涯を研究対象としています。

発達心理学と発達段階

人は、受精によって発生し、出生後は乳児期、幼児期、学童期、青年期を経て大人(成年期)になり、壮年期から老年期を経て死を迎えます。

発達心理学の研究対象は非常に幅広いため、特定の発達段階に特化した研究が多く、それぞれ幼児心理学、児童心理学、青年心理学、老年心理学などと区別して呼ばれます。

発達段階については、多くの研究者が独自の発達段階を発表していますが、有名なのは、エリクソンが心理社会的発達理論の中で示した「エリクソンの発達段階」です。

発達段階発達課題と危機
乳児期(0歳~)基本的信頼vs不信
幼児期前期(1歳6ヶ月頃~)自立性vs恥と疑惑
幼児期後期(3歳頃~)自主性vs罪悪感
学童期(5歳頃~)勤勉性vs劣等感
青年期(13歳頃~)同一性vs同一性拡散
成人期(22歳頃~)親密性vs孤立
壮年期(40歳頃~)世代性vs停滞性
老年期(65歳頃~)自己統合vs絶望

エリクソンは、人の発達の各段階には、人格を形成して社会に適応するために達成すべき発達課題があり、それをポジティブなかたちで達成できれば次の段階へ成長できると考えました。

例えば、青年期の発達課題は「同一性」(アイデンティティの確立)ですが、発達課題がポジティブなかたちで達成できないと同一性拡散(アイデンティティ拡散)の状態に陥ると考えられています。

また、各発達段階ではポジティブな力(成長や健康に向かう力)とネガティブな力(衰退や病理に向かう力)がせめぎ合っていて、前者が後者を上回ることが重要だとされています。

つまり、「発達課題を達成する」というのは、ネガティブな力を0(ゼロ)にすることではなく、各段階で2つの力のバランスを保ちながら、ポジティブな力がネガティブな力を上回る経験を積み重ねるということです。

エリクソンの発達理論(心理社会的発達理論、ライフサイクル理論)については、「エリクソンの発達段階と発達課題とは?ライフサイクル理論を分かりやすく解説」で詳しく解説しています。

発達心理学の研究方法

発達心理学では、人の発達を明らかにするために、様々な研究方法が開発されてきました。

研究方法には、対象者の特定の時点の発達状態を知るための方法と、発達の過程における変化を知るための方法があります。

発達状態を知る方法

まず、ある時点における発達状態を理解する研究方法を確認しておきましょう。

観察法

観察法とは、対象者を観察して行動を記録したり、特定の行動の出現頻度を確認したりすることにより、発達の状態を知ろうとする方法です。

発達心理学の出発点は、ドイツの生理学者プライヤーが、自身の子どもの観察記録である「子どもの精神」を出版したところだと言われており、観察法は、発達心理学の研究方法として最も古く基本的なものです。

言葉によるコミュニケーションが難しい乳幼児や、発達に遅れがある人など発達の状態を知るために活用されることが多い方法です。

行動を観察するのは、研究者が構造化した環境または対象者の日常生活場面などです。

また、観察方法としては、研究者と対象者が対面せずに行う非参加型(対象者をプレイルームに入れ、研究者はマジックミラーやカメラ越しに観察する)と、対面して行う参加型があります。

面接法

面接法とは、対象者との面接によって発達の状況を知ろうとする方法です。

面接法は、言葉を使って自分の内面を表現できる人が対象となります。

面接法では、対象者の発言だけでなく、面接時の表情、目線、しぐさ、言葉のトーンなども発達の状態を知るための情報として記録されます。

調査法

調査法とは、面接や質問紙によって発達の状態に関する調査を行う方法です。

実際の研究では、質問紙調査が実施されることが多くなっています。

質問紙調査は、調査に協力してもらうハードルが面接調査より低く、大量のデータを短時間で入手できるため費用対効果も優れています。

しかし、面接法と同様、言葉を使って自分の内面を表現できる人に限定されますし、対象者が自分の内面を正直に回答したかどうか確認できないという問題があります。

実験法

実験法とは、研究者が設定した特定の状況や課題(刺激)を対象者に与えて、それに対する対象者の反応を測定する方法です。

対象者の発達の状態や、発達に影響を与える要因を解明しやすい方法ですが、日常場面との乖離が問題として指摘されています。

検査法

検査法とは、基準が明確な課題を対象者に与えて、発達などを評価する方法です。

性格検査、知能検査、発達検査など各種検査が開発され、使用されています。

発達の過程における変化を知る方法

次に、発達の過程で何がどのように変化するかを知るための研究方法です。

横断研究

横断研究とは、特定の時点において、異なる発達段階(年齢)の人をまとめて測定することにより、発達の変化の過程を知ろうとする方法です。

例えば、身長と体重の変化の過程を知る目的で、ある時点で、異なる年齢の人の伸長をまとめて測定するのが横断研究です。

大まかな発達の過程を短時間で把握できる反面、正確性に課題が残ります。

縦断研究

縦断研究とは、特定の個人または集団を長いスパンで繰り返し測定することにより、発達の変化の過程を知ろうとする方法です。

例えば、ある子どもの身長と体重を1ヶ月ごとに測定し、それを10年間継続することが縦断研究です。

縦断研究は、人の発達過程をより正確に知ることができる反面、時間と手間がかかり、データのとり直しもできないなどの課題があります。

時代差研究

時代差研究とは、異なる時代の集団を縦断的に測定し、その変化の過程の違いから、人の発達が時代によって影響を受けているか否かを知ろうとする研究方法です。

例えば、昭和43年、平成元年、平成20年における小学校2年生の身長と体重を確認し、時代による影響の有無や程度を把握します。

まとめ

発達とは何か
受精から死に至るまでの人の心身の機能の変化
発達心理学とは何か

人の心理的な発達の過程を研究する学問

  • 研究対象:人の生涯における変化の過程
  • 発達段階:エリクソンは人の発達を8つの段階に区分
発達心理学の研究方法

特定の時点の発達状態を知るための研究方法と、発達過程の変化を知るための研究方法がある

  • 発達状態を知る研究方法:観察法、面接法、調査法、実験法、検査法
  • 発達過程の変化を知る研究方法:横断研究、縦断研究、時代差研究