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エリクソンの発達段階と発達課題とは?ライフサイクル理論を分かりやすく解説

エリクソン 心理社会的発達理論 発達段階

エリクソンの心理社会的発達理論とは

エリクソンの心理社会的発達理論とは、アメリカ合衆国の心理学者エリクソン,E.H.が提唱した、発達に関する理論です。

エリクソンは、フロイト,S.が提唱した心理性的発達理論を拡張して心理社会的発達理論を提唱しました。

心理性的発達理論では、人の出生から思春期までの発達を対象とし、自我の発達を性的または生物学的な側面を重視されていました。

しかし、エリクソンは、人の発達が加齢に伴う生物学的な成熟や衰退だけでなく、出生から死まで生涯にわたるものであり、社会との相互作用によって進むと考えました。

そして、発達における社会的な側面を重視し、心理社会的発達理論を提唱しました。

MEMO
心理性的発達理論:人の行動の基盤に性的欲求(リビドー)を想定し、発達に伴って性的欲求が充足される身体の部位が変化し、それに応じた人格が形成されると考える理論

心理社会的発達理論の特徴

心理社会的発達理論では、人が「生涯を通して発達する存在」であるという生涯発達の視点を前提として、人の発達は、あらかじめ予定された発達段階に沿って進み、各機能の発達には臨界期が存在すると説明されます(生物学的漸成説)。

そして、発達の各段階には発達課題があり、それがポジティブに解決されるかネガティブに解決されるかによって人格が影響を受け、ポジティブに解決できれば「自分は自分である」という認識を自分と他人が認識できる状態が得られるとされています(同一化)。

各発達段階では、成長に向かうためのポジティブな力と退行に向かうネガティブな力がせめぎ合う状態にあり、2つの力のバランスが人の発達に影響を及ぼすとされています。

具体的には、ポジティブな力がネガティブな力を上回って発達課題が解決されることにより、社会に適応できる健康的な発達を遂げ、社会内でより良く生きる力(人格的活力)が獲得されると考えられています。

ただし、ポジティブな力とネガティブな力がせめぎ合う状態は生涯を通して続くものであり、各段階でポジティブな力がネガティブな力を上回る経験を積み重ねることが大切なのであって、ネガティブな力が一時的にポジティブな力を上回っても人生が台無しになることはありません。

一方で、ポジティブな力が一時的にネガティブな力を上回ったとしても、その後、ネガティブな力に押しつぶされて社会生活に支障が及ぶ可能性もあります。

エリクソンの発達段階

エリクソンは、心理社会的発達理論において人の発達を8つの段階に区分し、各段階に発達課題と課題がポジティブに解決された場合に獲得されるものを設定しました。

エリクソンの発達段階の一覧表では、各発達段階の発達課題がポジティブに解決された場合とそうでない場合のパーソナリティの構成要素が「vs」または「⇔」で対にして提示されます。

時期 年齢 心理的課題 獲得
乳児期 出生~2歳 基本的信頼vs不信 希望
幼児期前期 2~4歳 自律性vs恥と疑惑 意思
幼児期後期 4~6歳 自主性vs罪悪感 目的
学童期 6~12歳 勤勉性vs劣等感 有能感
青年期 12~22歳 同一性vs同一性拡散 忠誠性
成人期 22~40歳 親密性vs孤立
壮年期 40~64歳 世代性vs停滞性 世話
老年期 65歳以降 自己統合vs絶望 英知

※各期間は、日本の法律などとは異なるところがありますが、心理社会的発達理論に基づいて記載しています。

乳児期(出生~2歳):基本的信頼vs不信

乳児期の発達課題と危機は「基本的信頼と不信」であり、この2つがポジティブな力とネガティブな力として拮抗していると考えられます。

この時期の赤ちゃんは、養育者から母乳やミルクをもらい、オムツを交換してもらい、気分が悪いとあやしてもらうなど、生活全般を養育者にお世話してもらわないと生きていくことができません。

そして、養育者から適切かつ親密に養育され、愛情や甘えを受容してもらう経験を積み重ねることにより、外界に対する安心や安全、養育者への信頼を抱き、基本的信頼感が育まれます。

基本的信頼感とは、他人から自分のありのままを受け入れてもらうことができるという「他人への信頼感」と、自分は他人から大切にされる価値のある存在であるという「自分への信頼感」のことです。

基本的信頼感は、人が発達の過程で自分と他人を信頼し、情緒的かつ継続的な人間関係を構築する土台となる感覚であり、乳児期のうちに十分に育まれなかった場合、その後の発達の中で自分や他人への不信感を抱くようになります。

ただし、心理社会的発達理論では、信頼感だけを持てば良いのではなく、欲求が満たされない状態に置かれて不信感を経験しておくことも大切だと考えられています。

養育者が赤ちゃんの欲求を全て満たしてあげたいと思っても、全ての欲求を満たすことは実現困難ですし、社会においても欲求が全て満たされることはまずありません。

そのため、欲求が満たされないことで生じる不信感も経験しながら、養育者から欲求を満たしてもらう経験によって不信感を上回る信頼感を持つことが大切であり、それによって「希望」というより良く生きるための力が獲得されると考えられています。

幼児期前期(2~4歳):自律性vs恥と疑惑

幼児期前期の発達課題と危機は「自律性vs恥と疑惑」です。

この時期の子どもは、「言葉の爆発期」を迎えて言語能力が急激に向上し、言葉を使った会話などのやりとりが増加します。

子どもに自我が芽生え、「何でも自分でやる。」と主張して実際に行動するようになり、養育者のしつけに耳を貸さなくなったり、口答えしたりすることも急増します。

こうした変化により、養育者から赤ちゃんや子どもへの一方的なやりとりが多かった乳児期とは一変し、養育者と子どもの双方向のやりとりが増えていきます。

しかし、この時期の子どもは、「自分でやりたい。」と思っても上手にできずに失敗することが多く、養育者から叱られて恥ずかしさや自分への疑惑を抱いたりします。

こうした「自分でやりたい」というポジティブな力と、「失敗するかもしれない。」というネガティブな力がせめぎ合った状態で、葛藤しながら行動を起こして成功する経験を積み重ねることで、自律性が身につき、自主性につながる「意思」が獲得されると考えられています。

例えば、この時期の子どもはトイレットトレーニングを受けます。

トイレで排泄できれば自信を持ち、失敗すると恥ずかしさや自分に対する疑惑を抱きますが、そうした成功と失敗を繰り返し、成功が失敗を上回ることで自律性が備わっていきます。

しかし、養育者の過剰な干渉や叱責を日常的に受けていると、自発的に行動しようという意欲や自信が持てなくなり、恥や疑惑ばかりを感じるようになります。

そのため、養育者としては、子どもの自発的な行動を見守り、成功すれば大いに褒め、失敗すれば最低限の注意をして、成功へのアドバイスをする姿勢が大切です。

幼児期後期(4~6歳):自主性vs罪悪感

幼児期後期の発達課題と危機は、「自主性vs罪悪感」です。

この時期の子どもは、自分で考えて行動する自主性が見られるようになり、周囲に対して自ら働きかけるようになります。

言語能力も運動能力も発達し、対大人と対子どものいずれでも会話による意思疎通が円滑に行えるようになり、子どもだけでルールを作ったり、大人の真似事をしたりして遊ぶことができます。

しかし、自主的に行動して周囲に働きかけていくことは、同年代の子どもとの競争や衝突を生じさせます。

そして、自主的に行動して失敗し、大人から注意や叱責を受けるこにより、失敗して周囲の失望や叱責を招くのではないかという感覚(罪悪感)を抱くようになります。

自主性が過剰に発揮された結果、力づくで人や物を取ったり、愛想を振りまいて人や物を得ようとしたりして他人の反感を招き、罪悪感を抱くこともあります。

そのため、自主的に行動して失敗する経験をしながら、それを上回るだけの成功経験を積み重ねることににより、罪悪感よりも自主性が強くなり、「目的を持つこと」が獲得されると考えられています。

一方で、養育者を含む大人から叱責や注意されてばかりの子どもや、他の子どもと比較されてばかりの子どもは、罪悪感を募らせて自信を失い、自主的な行動を抑制してしまいます。

学童期(6~12歳):勤勉性vs劣等感

学童期の発達課題と危機は「勤勉性vs劣等感」です。

学童期は、小学校入学から卒業までの時期であり、主な生活空間が家庭から学校へ移り、教師や同年代の子供など家族以外と過ごす時間が大幅に増える時期です。

この時期の子どもは、学校という空間で同年代の子どもと過ごす中で互いに興味関心を抱き、一緒に行動するようになります。

幼児期後期までとは比較できないほど多くの知識やスキルを学習することになり、自分の能力が成績という形で評価される機会も増加します。

子どもは、同年代の子どもと関わり、彼らと比較・評価される状況の中で、自分の得意なことと不得意なことを理解し、努力や工夫によって自分の目的を達成しようとします。

当然ながら、努力しても工夫しても結果が出ず、悔しさを感じたり自信を無くしたりすることもあります。

そうしたときに、周囲から励ましや労いを受けることで「やればできる。」という有能感(自己効力感)が育まれますが、認められなかったり否定されたりする経験が続くと「やっても意味がない。」という劣等感を抱くことになります。

学童期には、劣等感を抱きながらもそれを上回る勤勉性の経験を積み重ねることで、「自己効力感」が獲得されます。

青年期(12~22歳):同一性vs同一性拡散

青年期の発達課題と危機は「同一性vs同一性拡散」です。

青年期とは、第2次性徴による身体の急激な変化(性的成熟)、異性への関心の高まり、性的欲求の衝動などが起こるとともに、自我意識の高まりや内省的傾向などの心理的変化も著しい時期です。

また、心身の急激な変化に戸惑いながら、学童期よりも多種多様な同年代集団の中で生活することになり、他人と自分を比較して劣等感を感じたり、周囲からの評価に落ち込んだりする機会も多くなります。

こうした状況下で、「自分とは何か。」、「自分らしさとは何か。」というアイデンティティの問題と直面します。

発達心理学では、「自分とは何者か」という自己定義や、自分が社会の中で何を為し、どのように生きるかという自覚や存在意識という意味でアイデンティティという単語が使用されます。

引用:psycho-lo

そして、家庭、学校、部活、塾など所属する複数の集団の中で異なる自分の役割を担い、多種多様な人と関わる中で、理想とする人の言動や考え方を真似したり(同一化)、彼らの欠点に気づいたりしながら、「自分とは何か。」に対する自分なりの答えを見つけ出します。

ひとまずアイデンティティ(自己同一性)が確立され、自分が納得できる「ユニークな自分」や「自分らしい生き方」を獲得するのです。

アイデンティティの確立に至るまでには、所属する集団やその中の人間関係において自分の居場所を確保しつつ、これまでの自分を肯定できず、自分が何者で何をしたいか分からず、自分が自分であることも実感できない悩みを抱えて苦しみます。

アイデンティティ(自己同一性)拡散の状態です。

誰しも一度はアイデンティティの拡散を経験してもだえ苦しみます。

そして、長い期間をかけて少しずつ自分のアイデンティティを見いだして、所属する社会への「忠誠性」を獲得していきます。

エリクソンは、青年期における発達課題の克服が他の時期よりも複雑かつ困難であるとして、青年期の子どもがアイデンティティを確立させるためには、社会的な責任や義務を果たすことが猶予される期間(モラトリアム)が必要だと考えました。

MEMO
モラトリアム:青年期の子どもがアイデンティティを確立させるために、社会的な義務や責任の負担を猶予することが社会的に許された期間

成人期(22~40歳):親密性vs孤独

成人期の発達課題と危機は「親密性vs孤独」です。

青年期を通して身体的に大人になり、「ユニークな自分」を自覚して精神的にも成熟した後は、社会に出て社会的な義務や責任を担うことを求められます。

成人期は、勤務先など自分が所属する社会の中で義務や責任を担い、友人や恋人と親密な関係を築く時期とされ、親密性の獲得が発達課題となっています。

親密性の獲得には、自分自身の価値観や考えを自覚し、異なる価値観や考えを持つ他人と互いに受容しあう必要があるため、青年期にアイデンティティが確立されていなければなりません。

人間関係をうまく築けず自信をなくしたり、自分の価値観や考えが揺らいだりする経験をして孤独感を抱くことも多く、親密性の獲得は一筋縄ではいきません。

こうした状況下で、自分自身を信頼し、その価値観や考えに自信を持って他人と関わり、互いを理解し合うことで他人との信頼や愛情が育まれ、孤独感を上回る親密性を得て「愛(幸福感)」が獲得されます。

そして、親密な関係性になった異性と結婚して家庭を築き、子どもを儲けて、親としての義務や責任も果たしていくことになります。

ただし、親密性を十分に獲得できないまま「親密な関係性になったと勘違いして」結婚すると、結婚後に夫婦間で情緒的かつ対等な関係が築けず、最終的に離婚してしまうことがあります。

壮年期(40~64歳):世代性vs停滞性

壮年期の発達課題と危機は「世代性vs停滞性」です。

壮年期は、所属する社会で中心的存在として義務や責任を担い、知識と経験を蓄積して社会的地位も向上させ、家庭でも家事育児の経験を積み重ねた成人期を過ぎて、公私ともに変化が減って落ち着いていく時期です。

例えば、会社では自ら前面に出て活動するよりも、後進の育成や管理業務に従事することが多くなり、家庭では子育てが佳境を迎えて、子どもの巣立ちを見送ることになります。

つまり、これまでの人生で得た知識や経験を次世代の若者に伝達することによって、自分自身も成長していく時期だと考えられているのです。

この時期の発達課題である世代性(Generativity)とは、「次世代を支えるものを生み育んで関心を抱く」という意味を持つ、エリクソンの造語です。

次世代が求められたものを自ら積極的に伝達、付与することにより、さらに次世代を含む他人から求められるという好循環が生まれることにより、世代性が獲得されていきます。

しかし、次世代への関心が薄く、関わりも乏しく、求められても自身の知識や経験を伝えようとせず、関心が自分の欲求や満足に向いてしまうと、停滞に陥ります。

停滞に陥ると、世代性によって生じる好循環とは対照的に、求められても与えない、与えられないから求められなくなるという悪循環が生じます。

壮年期には、自己満足や自己陶酔から脱却し、次世代を育てることに目を向けて、自身の知識や経験を伝達、付与することで世代性を生じさせることにより、「世話」が獲得されると考えられています。

老年期(65歳以降):自己統合vs絶望

老年期の発達課題と危機は「自己統合vs絶望」です。

退職して子育ても終え、老いと付き合いながら死に至るまで過ごす時期です。

身体的な衰えというネガティブな側面が注目されがちですが、エリクソンは、知識や経験などは発達を続けるという生涯発達の立場をとっています。

そして、自分自身の人生を振り返って肯定的に受け止められること(自己統合)を老年期の発達課題とし、自己統合ができず死の受容ができないと絶望という危機を招くと考えました。

老年期には、誰しも少なからず絶望を抱きますが、絶望を抱えながら人生を振り返って肯定的に受け止め、肯定的な受け止めが絶望を上回ることで自己統合がなされます。

まとめ

エリクソンの心理社会的発達理論とは
エリクソンが提唱した、人が生涯を通して発達する存在であるという考えに基づき、フロイトの心理性的発達理論を拡張した発達理論
エリクソンの発達段階

エリクソンは、人の発達を8つの段階に区分し、各段階に発達課題と危機、発達課題の克服で獲得されるものを設定

  • 乳児期(出生~2歳):基本的信頼vs不信(希望)
  • 幼児期前期(2~4歳):自律性vs恥と疑惑(意思)
  • 幼児期後期(4~6歳):自主性vs罪悪感(目的)
  • 学童期(6~12歳):勤勉性vs劣等感(自己効力感)
  • 青年期(12~22歳):同一性vs同一性拡散(忠誠性)
  • 成人期(22~40歳):親密性vs孤立(愛)
  • 壮年期(40~64歳):世代性vs停滞(世話)
  • 老年期(65歳以降):自己統合vs絶望(英知)

【参考】

  • 「よくわかる臨床心理学」|下山晴彦編|ミネルヴァ書房
  • 「アイデンティティとライフサイクル論」|鑪幹八郎著|ナカニシヤ出版