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公認心理師の受験資格には7つの区分がある
公認心理師の受験資格には、A~Gまでの7つの区分が設定されています。
区分A~Cは、公認心理師制度の開始時以降に心理学を専攻する人のための「正規の受験資格」です。
一方で区分D~Gは、すでに心理学を専攻している学生や心理職として働く人のために設けられた「特例の受験資格(特例措置)」です。
区分A~C
順序 | A | B | C |
1 | 4年制大学で規定科目履修 | A、Bと同等以上の知識と技術を持つとの認定を受ける | |
2 | 大学院で規定科目履修 | 一定期間の実務経験 | |
3 | 公認心理師試験 | ||
4 | 公認心理師資格登録 |
区分A及びBで初めて受験資格が得るのは、2018年4月に大学に入学した人です(最短の受験時期は2024年9月頃の予定)。
区分Cの受験資格については、「公認心理師法第7条第3号に基づく受験資格認定」に規定されています。
区分A、区分B、区分Cについては、「公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?」で詳しく解説しています。
以下、公認心理師受験資格の特例措置である区分D、区分E、区分F、区分Gについて解説します。
「受験の手引き」では区分DをD1とD2に分けているため、この記事でも分けて解説していきます。
区分D1
区分D1は、公認心理師法が施行された「平成29年9月15日より前に大学院において施行規則附則第2条で定める科目を履修」した人を対象とする特例措置です。
つまり、平成29年9月15日以前に大学院に入学し、かつ、規定科目を履修済みの人が対象です。
特例措置の受験資格を得る要件
受験資格を得るには、施行規則附則第2条に規定された以下の1~4の科目を大学院で履修することが要件です。
- 福祉分野に関する理論と支援の展開
- 教育分野に関する理論と支援の展開
- 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
- 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
- 心理的アセスメントに関する理論と実践
- 心理支援に関する理論と実践
- 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
- 心の健康教育に関する理論と実践
いずれも具体的な科目名は明示されていないため、大学院で履修した科目が上記科目に当てはまるかどうかについては、大学院に確認する必要があります。
大学院で履修した科目が上記科目要件を満たす場合は、公認心理士試験の受験資格が得られます。
特例措置の期限
区分D1の特例措置に期限は設定されていません。
区分D2
区分D2は、「平成29年9月15日より前に大学院に入学し、平成29年9月15日以後に施行規則附則第2条で定める科目を履修」した人を対象とする特例措置です。
つまり、平成29年9月15日以前に大学院に入学し、その後、規定科目を履修した人が対象となります。
特例措置の受験資格を得る要件
平成29年9月15日以前に大学院に入学し、同年月日時点では規定科目を履修していない(または一部のみ履修している)人が、その後、同科目を履修することが要件です。
大学院で履修した科目(または履修予定の科目)が規定科目に当てはまるかどうかは、大学院に確認しなければなりません。
特例措置の期限
区分D2の特例措置に期限はありません。
区分E
区分Eは、「平成29年9月15日より前に、4年制大学において施行規則附則第3条で定める科目を履修(又は履修中)」し、「平成29年9月15日以後に大学院において施行規則第2条で定める科目を履修」した人を対象とする特例措置です。
つまり、平成29年9月15日より前に大学に入学して卒業し(または在学中で)、大学院で規定科目を履修した人が対象となります。
特例措置の受験資格を得る要件
大学で履修しなければならない科目は、以下のとおりです。
- 心理学概論
- 臨床心理学概論
- 心理学研究法
- 心理学統計法
- 心理学実験
- 知覚・認知心理学
- 学習・言語心理学
- 感情・人格心理学
- 神経・生理心理学
- 社会・集団・家族心理学
- 発達心理学
- 障害者・障害児心理学
- 心理的アセスメント
- 心理学的支援法
- 心理演習
- 心理実習
- 健康・医療心理学
- 福祉心理学
- 教育・学校心理学
- 司法・犯罪心理学
- 産業・組織心理学
- 健康・医療心理学
- 人体の構造と機能及び疾病
- 精神疾患とその治療
大学院で履修しなければならない科目は、以下のとおりです。
- 保健医療分野に関する理論と支援の展開
- 福祉分野に関する理論と支援の展開
- 教育分野に関する理論と支援の展開
- 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
- 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
- 心理的アセスメントに関する理論と実践
- 心理支援に関する理論と実践
- 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
- 心の健康教育に関する理論と実践
- 心理実践実習(450時間以上)
大学及び大学院で履修した科目(または履修予定の科目)が規定科目に当てはまるかどうかについては、大学院に確認する必要があります。
特例措置の期限
区分Eの特例措置に期限はありません。
区分Eの受験資格を初めて得るのは、2018年4月に大学院に入学した人です(公認心理師試験を受験できるのは2020年9月頃)。
区分F
区分Fは、「平成29年9月15日より前に、4年制大学において施行規則附則第3条で定める科目を履修(又は履修中)」し、「施行規則第5条で定める施設で施行規則第6条で定める期間以上の実務経験」をした人を対象とする特例措置です。
つまり、平成29年9月15日より前に大学に入学して卒業し(または在学中で)、大学卒業後に実務経験を得た人が対象となります。
特例措置の受験資格を得る要件
大学の履修科目は区分Eと同じです。
また、以下の施設で2年間以上の実務経験を得る必要があります(公認心理師法施行規則第6条)。
- 学校
- 裁判所
- 保健所または市町村保健センター
- 児童福祉法に規定する障害児通所支援事業もしくは障害児相談支援事業を行う施設、児童福祉施設または児童相談所
- 病院または診療所
- 精神保健福祉センター
- 生活保護法に規定する救護施設または更生施設
- 社会福祉法に規定する福祉に関する事務所または市町村社会福祉協議会
- 婦人相談所または婦人保護施設
- 知的障害者更生相談所
- 広域障害者職業センター、地域障害者職業センターまたは障害者就業・生活支援センター
- 老人福祉施設
- 青少年の雇用の促進等に関する法律に規定する無業青少年の職業生活における自立を支援するための施設
- 労働安全衛生法に規定する労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を講ずる施設
- 更生保護施設
- 介護療養型医療施設または介護保険法に規定する介護老人保健施設もしくは地域包括支援センター
- 刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所、婦人補導院もしくは入国者収容所または地方更生保護委員会またしくは保護観察所
- 国立児童自立支援施設
- ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法に規定するホームレス自立支援事業を行う施設
- 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園
- 発達障害者支援センター
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に規定する障害福祉サービス事業、一般相談支援事業もしくは特定相談支援事業を行う施設、基幹相談支援センター、障害者支援施設、地域活動支援センターまたは福祉ホーム
- 認定こども園
- 子ども・若者総合相談センター
- 子ども・子育て支援法に規定する地域型保育事業を行う施設
- 前各号に掲げる施設に準ずる施設として文部科学大臣及び厚生労働大臣が認める施設
勤務先または勤務予定先が上記施設に当てはまるかどうかは、確認が必要です。
特例措置の期限
区分Fの特例措置に期限設定はありません。
区分G
区分Gは、実務経験を有する人を対象とする受験資格の特例措置です。
区分A~Fが大学または大学院における科目履修を要件としていたのに対し、科目履修の有無は問われず、実務経験が要件となっています。
具体的には、実務経験の期間、勤務施設、業務内容を満たした上で、公認心理師現任者講習会を受講する必要があります。
特例措置の受験資格を得るための要件
実務経験の期間、勤務施設、業務内容の要件は、以下のとおりです。
実務経験の期間
5年です。
常態として週1日以上勤務している期間が5年以上必要ですが、1日の勤務時間については規定されていません。
2017年9月15日時点または同年月日から過去5年間に実務経験のあることを証明した上で、「公認心理師の受験申込時点で」実務経験が5年以上なければなりません。
休職中の場合であっても、2017年9月15日時点で、休業してから5年を経過していない場合は、他の要件を満たせば受験資格を得ることができます。
勤務施設
区分Fの項目に記載した、学校や裁判所などの26種類の施設です。
勤務先が指定施設に当てはまるかどうかは、勤務先に確認する必要があります。
業務内容
公認心理士の業務内容は、厚生労働省ウェブサイトに記載されています。
公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
(2)心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供
引用:公認心理師|厚生労働省
区分Gの受験資格の要件を満たすには、勤務先で上記⑴~⑶の業務をしていなければなりません。
公認心理師試験の申込時には、業務内容を証明するために施設の代表者の証明がある「実務経験証明書」を提出します。
個人で相談室などを開業している場合には、実務経験証明書と一緒に以下の資料を提出し、開業していることを証明することになります。
- 税務署への開業届
- 会社または法人の登記簿謄本
- 定款のコピーなど
公認心理師現任者講習会
実務経験の期間、勤務施設、業務内容の要件を満たすと、公認心理師現任者講習会を受講する資格が得られ、同講習会を受講・修了すると公認心理師の受験資格が得られます。
公認心理師現任者講習会は、日本心理研修センターなどが主催する講習会で、区分Gの受験資格を得る要件の一つです。
講習会では、4~5日間で以下の科目を履修することになります。
- 公認心理師の職責
- 職域分野に関する制度
- 職域分野に関する課題とケース検討
- 精神医学など医学に関する知識
- 心理的アセスメント
- 心理支援
- 評価と振り返り
第1回公認心理師試験では、申込後でないと受験資格の有無が明らかにならず、受験資格があるかどうか分からないまま現任者講習会受講を受講し、申込後に受験資格が認められない人が出てしまいました。
特例措置の期限
区分Gは、「平成29年9月15日以後5年間に限る。」とされています。
つまり、現任者が区分Gの受験資格を得られるのは2022(令和4)年までということです。
「公認心理師の受験申込時点で」実務経験が5年以上あれば良いので、現時点で実務経験が5年に満たなくても、2022年までに5年の要件を満たして現任者講習会を受講すれば、受験資格が得られます。
実務経験と現任者講習会受講という要件を満たすことで公認心理師試験を受験できるため、大学や大学院で規定科目を履修していない人にとっては、心理系初の国家資格を得る大きなチャンスと言えます。
まとめ
区分A~Gの7区分(区分DはD1とD2に分類)
平成29年9月15日以前に大学院入学+規定科目を履修済み
平成29年9月15日以前に大学院入学+規定科目を履修する
平成29年9月15日より前に大学入学・卒業(または在学中)+大学院で規定科目を履修する
平成29年9月15日より前に大学入学・卒業(または在学中)+大学卒業後に2年以上の実務経験
5年以上の実務経験+公認心理師現任者講習受講
【参考】