心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

家庭裁判所調査官とは?調査官補になるには?試験の難易度と仕事内容は?

家庭裁判所調査官

家庭裁判所調査官とは

家庭裁判所調査官とは、家庭裁判所や高等裁判所などに勤務し、家事事件や少年事件に携わる裁判所職員です。

家庭裁判所調査官は、心理学など人間科学の知見や技術を用いて、離婚紛争や子どもの親権者争いなどの当事者の調査を行い、紛争の原因を探ったり、裁判所の判断に必要な材料を収集したりします。

また、非行をした少年やその保護者の調査を行い、非行の背景にある事情を探り、少年が再非行をせず健全な社会生活を送るにはどうすれば良いかを考えるのも家庭裁判所調査官の仕事です。

裁判所に対して「法律に基づいて白黒つける場所」というイメージを持つ人は多いものですが、家庭裁判所では、法律的な解決だけでなく、紛争や非行の背後にある人間関係や環境を踏まえた解決が求められるため、心理学などの専門的知見を持つ家庭裁判所調査官が配置されているのです。

なお、名称に「家庭裁判所」が付いているように、家庭裁判所調査官は、原則として、全国の家庭裁判所の本庁・支部・出張所に配置されます。

しかし、高等裁判所にも若干名、その他、最高裁判所や裁判所職員総合研修所などにも配置されています。

家庭裁判所調査官補とは

家庭裁判所調査官補とは、裁判所職員採用試験「総合職試験(家庭裁判所調査官補)」に合格して採用された時点の身分です。

採用後、約2年間の家庭裁判所調査官養成課程という研修を修了することにより「補」が取れて調査官として任官します。

家庭裁判所調査官の仕事内容

家庭裁判所調査官の仕事内容は勤務先によって異なります。

この記事では、主な勤務先である家庭裁判所と高等裁判所における仕事内容を確認しておきます。

家庭裁判所における家庭裁判所調査官の仕事内容

家庭裁判所における仕事は、家事事件(人事訴訟事件)と少年事件の2つに分けることができます。

家事事件
  • 事実の調査
  • 審判期日への出席、意見陳述
  • 調停期日への出席、意見陳述
  • 社会福祉機関との連絡その他の調整措置
  • 子の意思の把握など
  • 成年後見・保佐・補助・未成年後見の事務の監督
  • 任意後見監督人の事務の調査
  • 審判または調停で定められた義務の履行状況調査、履行勧告など
人事訴訟事件
  • 事実の調査
  • 裁判で定められた義務の履行状況調査、履行勧告
少年事件
  • 事件の調査(包括調査)
  • 審判に付すべき少年の報告、報告前調査
  • 事件の被害者などからの意見聴取
  • 同行状の執行
  • 観護措置
  • 観察
  • 決定の執行
  • 審判への出席、意見陳述

家事事件や人事訴訟事件では、紛争下にある当事者の主張整理、子どもの生活状況確認、子どもの意見の聴取など、裁判官の命令に応じてピンポイントで調査を行い、結果を報告することが多くなっています。

調査対象としては、当事者本人、親族や関係者、児童相談所・学校・幼稚園・保育所などの関係機関などが挙げられます。

少年事件では、少年・保護者・関係機関などの調査によって非行原因を明らかにして、再非行抑止に必要な処遇について考えます。

家事事件とは異なり、原則として、包括的に調査を行い、調査結果を裁判官に報告します。

高等裁判所における家庭裁判所調査官の仕事内容

高等裁判所では、家事審判の抗告審の審理に必要な調査を行ったり、附帯処分の裁判の控訴審の審理に必要な調査を行ったりしています。

例えば、面会交流の審判が即時抗告された場合に、子どもと非監護親の関係性や子どもの意思を確認する、離婚訴訟が控訴された場合に当事者の監護状況を確認するなどの調査が考えられます。

いずれも調査官の専門性を要する事務であるため、全国の8高等裁判所全てに家庭裁判所調査官が配置されています。

家庭裁判所調査官の待遇

家庭裁判所調査官は国家公務員であり、収入も福利厚生も心理職の中では好待遇の部類に入ります。

給与 行政職俸給表(一)が適用

東京家庭裁判所に勤務した場合の初任給は、総合職試験(院卒者区分)が253,800円、一般職(大卒者区分)が222,240円

※いずれも地域手当込み

手当 扶養手当、住居手当、通勤手当、期末・勤勉手当、超過勤務手当など
勤務時間 1日7時間45分/1週間38時間45分勤務(土日祝日と年末年始は休み)

年次休暇(年間20日)、特別休暇(夏季休暇、産前産後休暇など)、病気休暇、介護休暇、育児休業など

勤務地 勤務地:本人の希望を考慮

異動:原則として全国異動(ただし、妊娠・出産、育児、親の介護などの事情により考慮される)

福利厚生 健康保険:国家公務員等共済組合に加入し、組合員として病気や怪我、出産などに関連する各種給付を受けることができる

年金:退職、高度障害、死亡などによる年金制度が適用される

その他:疾病予防、人間ドック受検、臨時出費などに対する資金貸付け、財形貯蓄、保険など

全国異動(転勤)について

家庭裁判所調査官は国家公務員であり、原則として、全国転勤があります。

現在の制度では、まず、家庭裁判所調査官補として全国の大規模な家庭裁判所で採用され、約2年間の研修を受けます。

研修を終えると家庭裁判所調査官として任官し、全国各地の小規模な家庭裁判所へ異動して3年間程度の勤務を経験して、今度は中規模の家庭裁判所で3年間程度勤務します。

その後は、本人の希望、昇任(昇進)、家庭の状況などを踏まえて異動することになりますが、それまでと比較すると異動の希望が出しやすくなります。

ただし、全国異動であることは変わりないため、調整が必要になります。

研修制度

家庭裁判所調査官補として採用された後、採用庁と裁判所職員総合研修所において約2年間の養成課程研修を受けます。

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養成課程期間中は、心理学などの人間科学や法律の講義、調査事務に関する講義、集団討議やロールプレイなど様々なカリキュラムをこなし、家庭裁判所調査官として働くための知識や技術を習得します。

家庭裁判所調査官として任官した後は、おおむね3年後に応用研修、そのおおむね5年後に専門研修を受け、調査に必要な知識や技術の維持向上を図ることができます。

その他にも、人間科学や調査技法に関する個別研修などが数多く実施されており、個人のキャリアプランや希望に応じて参加できるようになっています。

昇任(昇進)

家庭裁判所調査官は、任官から10年程度で主任調査官に昇任し、管理職として部下の指導管理や調査官補の指導を行うようになります。

その後は、総括主任調査官、次席調査官、首席調査官などになる道も開かれています。

また、総合職として家庭裁判所はもちろん裁判所組織全体の運営にも関わることが求められており、事務局への異動したり、事務局で管理職に昇任したりすることもあります。

家庭裁判所調査官になるには

家庭裁判所調査官になるには、裁判所職員採用試験のうち「総合職試験(家庭裁判所調査官補)」の院卒者区分または大卒者区分に合格しなければなりません。

裁判所職員採用試験に合格すると合格者名簿に掲載され、上位合格者から採用が内定する仕組みになっているため、上位合格を目指す必要があります。

受験資格

【院卒者区分】

1989(平成元)年4月2日以降に生まれた者で次に掲げる者
⑴  大学院修士課程または専門職大学院専門職学位課程を修了した者、及び、2020年3月までに大学院修士課程または専門職大学院専門職学位課程を修了する見込みの者
⑵  最高裁判所が⑴に掲げる者と同等の資格があると認める者

【大卒者区分】

⑴  1989(平成元)年4月2日から1998(平成10)年4月1日までに生まれた者
⑵  1998(平成10)年4月2日以降に生まれた者で次に掲げる者
ア  大学を卒業した者及び2020年3月までに大学を卒業する見込みの者
イ  最高裁判所がアに掲げる者と同等の資格があると認める者

試験の科目・方法

1次試験
科目 内容 時間 配分
基礎能力試験 公務員として必要な基礎能力

知能:27題

知識:3題(院卒者区分)、13題(大卒者区分)

2時間25分 2/15
専門試験記述 家庭裁判所調査官補に必要な専門的知識

以下のうち3題選択(最低でも1題は人間科学から選択)し、400字以内で回答

人間科学:心理学概論、臨床心理学、社会心理学、社会学概論、現代社会論、社会調査法、社会福祉学概論、社会福祉援助技術、地域福祉論、教育学概論、教育心理学、教育社会学

法律:憲法、民法、刑法

1時間30分 3/15
2次試験
科目 内容 時間 配分
専門試験記述 家庭裁判所調査官補に必要な専門的知識

以下の13科目から2題選択(児童福祉論と高齢者福祉論の同時選択不可、民法または刑法のみ2題の選択も不可)

人間科学:臨床心理学、発達心理学、社会心理学、家族社会学、社会病理学、社会福祉援助技術、児童福祉論、高齢者福祉論、教育方法学、教育心理学、教育社会学

法律:民法、刑法(各2題)

2時間 3/15
製作論文試験 組織運営上の課題を理解し、解決策を企画立案する能力 1時間30分 1/15
人物試験 集団討議及び個別面接

人柄、資質、能力

6/15

院卒者区分と大卒者区分の違いは、一次試験の基礎能力試験(知識)の問題数のみです。

いずれの試験も人物試験が大きなウェイトを占めており、人柄や対人関係能力が家庭裁判所調査官という仕事に重要であることを物語っています。

合格率(試験の難易度)

2018年度の受験者数、合格者数、合格率は、以下のとおりです。

区分 受験者数 合格者数 合格率
院卒者 110 15 14%
大卒者 398 45 11%

まとめ

家庭裁判所調査官とは

家庭裁判所や高等裁判所などに勤務し、心理学などの人間科学の知見や技術を用いて、家事事件や少年事件に携わる裁判所職員

家庭裁判所調査官の仕事内容
  • 家庭裁判所:家事事件、人事訴訟事件、少年事件など
  • 高等裁判所:抗告審や控訴審の調査など
家庭裁判所調査官の待遇

本文記載のとおり

家庭裁判所調査官になるには

本文記載のとおり

【参考】

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