哺乳反射(探索反射、捕捉反射、吸啜反射、嚥下反射)|原始反射

哺乳反射

哺乳反射とは

哺乳反射とは、赤ちゃんが乳首を探し、見つけると口を開いて乳首をくわえ、吸い付いて母乳を飲み、分泌された母乳を飲み込むという一連の反応を起こす原始反射です。

人の赤ちゃんは、生まれたばかりの頃には目がほとんど見えず、自力で身体を動かすこともままなりません。

いわゆる、ポルトマン,A.が提唱した「生理的早産」の状態です。

そのため、自分で母親の乳首を探したり、吸い付いたり、分泌された母乳を飲んだりすることはできません。

しかし、哺乳反射によって、乳首が口の周辺に触れると顔を向いて口を開け、乳首が口の中に入るとくわえ、吸い付いて母乳を分泌させ、分泌した母乳を飲むという一連の反応が起こります。

つまり、人の赤ちゃんは、哺乳反射の反応に頼って母乳を飲み、生きるために必要な栄養を確保しているのです。

MEMO

生理的早産:人の赤ちゃんが、他の離巣性の哺乳類と比較して未熟な状態で生まれてくることを表現したもの

原始反射とは

原始反射とは、脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射です。

引用:原始反射|psycho-lo

原始反射の多くは胎児期に獲得されており、赤ちゃんが生まれたばかりの頃から確認することができます。

原始反射の役割

原始反射の役割は、大きく生命維持と発達促進の2つあります。

生命維持 身体機能などが未熟な状態で生まれた赤ちゃんが、胎外に適応するのをサポートする役割
発達促進 原始反射による反応が起こることで、赤ちゃんの自発的な運動の出現が刺激される

指標としての原始反射

健常な赤ちゃんの場合、出生直後から原始反射が出現し、ある時期になると自然消失します。

そのため、神経学的障害を確認するための指標の一つとして活用されています。

例えば、乳幼児健診では、ある月齢で起こるべき反射がない、消失すべき月齢で残っている、反応の左右差が常にある、一度は消失した反射が再び出現するなどを確認します。

哺乳反射の種類と出現時期・消失時期

哺乳反射は、探索反射、捕捉反射、吸啜反射、嚥下反射という4種類の原始反射から構成され、順番通りに反応が起こります。

探索反射と捕捉反射は、母親が赤ちゃんの顔を乳首の方へ誘導すれば対応できますが、吸啜反射と嚥下反射に異常があると、母乳を飲むことが困難になります。

ポイント

哺乳反射は、探索反射→捕捉反射→吸啜反射→嚥下反射の順番で起こる

哺乳反射1:探索反射

探索反射とは、唇やその周辺に物が触れた場合に、口を開き、顔を触れた物の方に向ける原始反射です。

読み方は「たんさくはんしゃ」です。

探索反射以外にも、乳探し反射と呼ばれたり、ルーティング反射(英語の「rooting reflex」のカタカナ表記)と呼ばれたりします。

また、探索反射と捕捉反射を区別せず、「探索反射(口唇探索反射、ルーティング反射)」として説明されることもあります。

探索反射は、生まれたばかりで視力が弱く、自力で身体を動かすことも難しい赤ちゃんが、母親の乳房や乳首を探し当てて顔を向けるのに必要な反射です。

乳首の位置を探し当てるという母乳を飲むための最初の段階を担う反射であり、探索反射が出現しないとその後の授乳行動を自力で行うことができません。

また、頭を乳首の方に向ける反応を繰り返すことは、首すわりの完成にも重要な大切な役割を果たします。

なお、探索反射は、空腹時に出現頻度が高くなるという研究結果から、生理現象が影響を及ぼしているという指摘があります。

探索反射の例

生まれたばかりの赤ちゃんの顔に乳房や乳首が触れると、そちらの方に顔を向けて口を開きます。

首すわりが完成しておらず、普段は自力で頭の向きを変えるのも難しいのですが、探索反射が起こると素早く顔の向きを変えることができます。

ポイント

首すわりが完成する時期:生後3ヶ月から生後4ヶ月頃

探索反射の出現時期と消失時期

  • 出現時期:出生後
  • 消失時期:生後3ヶ月~5ヶ月

哺乳反射2:捕捉反射

捕捉反射とは、唇やその周辺に触れた物をくわえる原始反射です。

読み方は「ほそくはんしゃ」です。

捕捉反射は、探索反射によって探し当てた母親の乳首をくわえることにより、母乳を分泌させる吸啜反射を起こすために必要になります。

生まれたばかりの赤ちゃんは、口まわりの筋肉を自分の意思で動かすことができませんが、捕捉反射による反応で乳首をしっかり口にくわえます。

捕捉反射の例

探索反射によって乳房の方に顔を向けて口を開いた状態で、赤ちゃんの口に乳首を含ませると、口を閉じてくわえます。

哺乳瓶や指など母親の乳首に感触が似たものもくわえますが、固い物はくわえた後にすぐ舌で押し出そうとします(押出し反射)。

捕捉反射の出現時期と消失時期

  • 出現時期:出生後
  • 消失時期:生後3~5ヶ月

捕捉反射の異常

捕捉反射が出現しない場合、中枢神経系(運動感覚機能、抑制機能)の異常が疑われます。

また、通常は左右対称に出現する捕捉反射が左右非対称に出現する場合、脳の片側や顔面神経に障害がある可能性があります。

哺乳反射3:吸啜反射

吸啜反射とは、口の中に入ってきた乳首などに吸い付いてすする原始反射です。

「啜」という漢字は「すする」という意味があり、吸啜で「吸い付いて啜る(すする)」という意味になります。

読み方は「きゅうてつはんしゃ」が基本ですが、「きゅうせつはんしゃ」と読む医師もいます。

吸啜反射によって、母乳を飲む行動を覚えていない生まれたばかりも赤ちゃんでも、母親の乳首を力強くかつリズミカルに吸い、母乳を分泌させることができます。

なお、母乳をたくさん飲んで満腹の状態では、吸啜反射が起こらないという指摘もあります。

吸啜反射の例

捕捉反射により乳首をくわえた赤ちゃんは、吸啜反射によって乳首を吸って母乳を分泌させます。

実際の授乳時には、捕捉反射から吸啜反射の間に切れ目はなく、くわえるとすぐ吸い始めます。

吸啜反射の出現時期と消失時期

  • 出現時期:出生後
  • 消失時期:生後5ヶ月~6ヶ月

吸啜反射の異常

出生直後に低体温になると哺乳障害が起こりやすく、吸啜反射が弱くなったり、吸啜反射が起こらなくなったりすることがあります。

また、高ビリルビン血症(新生児黄疸)の一つである核黄疸を発症すると、健常な赤ちゃんと比較して吸啜反射が弱くなります。

さらに、前頭葉など脳に障害に異常がある場合、吸啜反射が起こりません。

口をチュパチュパさせる動作と吸啜反射

新生児期から生後1ヶ月頃までの赤ちゃんが口をチュパチュパさせるしぐさは、吸啜反射によるものです。

授乳時以外でも、自分の手やガーゼハンカチが唇に触れるなど何らかの刺激に反応していると考えられています。

また、生後2ヶ月~3ヶ月頃になると、口の中に指や物を入れてチュパチュパ吸ったり舐めたりするようになります。

これは、自分の身体や物の大きさや形、触り心地などを口で確認する動作です。

赤ちゃんは、手足よりも口の中の感覚が敏感で、何でも口の中に入れて確認しようとするのですが、吸啜反射が残っていると反射的に吸い付きます。

吸啜反射が消失した後は、口の中に入れた物に赤ちゃん自身の意思で吸い付きますが、徐々に吸い付きが弱くなっていきます。

哺乳反射4:嚥下反射

嚥下反射とは、乳首から分泌された母乳を飲み込む反射です。

読み方は「えんげはんしゃ」ですが、パソコンやスマホの変換では「えんかはんしゃ」と入力しないと出ないことがあります。

嚥下反射は、母乳などの液体を飲み込むために必要です。

嚥下反射によって、飲み込み方を覚える前から母乳を飲み込んで栄養を摂取することができます。

嚥下反射の例

生まれたばかりの赤ちゃんは、自分の意思で口の中の液体を飲み込むこともできません。

しかし、嚥下反射が起こることで母乳を飲み込み、栄養を得ることができます。

嚥下反射の出現時期と消失時期

  • 出現時期:在胎28週
  • 消失時期:生後5ヶ月~6ヶ月

赤ちゃんが母乳を飲まない原因と哺乳反射

赤ちゃんが母乳を飲まない場合、通常は、乳頭混乱や母乳の味の変化などを疑い、そうした問題がなければ、哺乳反射の異常(出現しないまたは弱い)により母乳が飲めない可能性を考えます。

哺乳反射が出現しないまたは弱い場合や、標準的な消失時期を過ぎても残る場合、以下のような病気や障害が潜んでいる可能性があります。

低体温

核黄疸(低ピリルビン血症)

先天性筋ジストロフィー

脳の障害(中枢神経系)や発達の遅れなど

いずれも深刻な後遺症を残す危険があり、場合によっては命の危険もあるため、早期発見と早期治療が欠かせません。

総合病院で出産した場合、退院までの間に医師や看護師が気づいてくれることが多いですが、自宅や人手不足の病院、海外の病院などで出産した場合は、症状が見過ごされるおそれがあります。

MEMO
乳頭混乱:母乳とミルクの混合育児の場合に、ミルクは飲むのに母乳を飲まなくなる状態

哺乳反射と押し出し反射

押し出し反射とは、形ある物(固形物)が口の中に入って舌に触れると、舌で物を押し出そうとする原始反射です。

赤ちゃんには、母乳(液体)を飲むための哺乳反射と同時に、異物を押し出す押し出し反射も備わっているのです。

低月齢のうちは、固形物を咀嚼・嚥下する(噛んで飲み込む)力が未熟で、異物を誤飲するリスクも高いため、押し出し反射で誤飲を防いでいると考えられています。

押し出し反射は、乳首や乳首に似た感触のものでは出現しないため、哺乳反射の妨げにはなりません。

しかし、押出し反射が自然消失する前に離乳食を口に入れると、舌で離乳食が押し出されてしまうため、押し出し反射が消失したタイミングで離乳食を開始するのが一般的です。

まとめ

哺乳反射とは

赤ちゃんが乳首を探し、口を開いて乳首をくわえ、吸い付いて母乳を分泌させて、分泌された母乳を飲み込むという一連の反応を起こす原始反射

哺乳反射の種類と出現時期・消失時期

哺乳反射は探索反射、捕捉反射、吸啜反射、嚥下反射の4種類から構成される

  • 探索反射:唇付近に触れたものの方を向く
  • 捕捉反射:唇付近に触れたものを口にくわえる
  • 吸啜反射:くわえたものを吸う
  • 嚥下反射:口の中の液体を飲み込む
赤ちゃんが母乳を飲まない原因と哺乳反射

哺乳反射の異常が原因で母乳が飲めない場合、低体温や核黄疸、先天性筋ジストロフィー、脳の障害や発達の遅れなどのおそれがある

哺乳反射と押出し反射

押し出し反射:固形物が口の中に入って舌に触れたときに、舌で物を押し出す原始反射

  • 哺乳反射とは競合しない
  • 押出し反射が消失する前に離乳食を食べさせると押し出される

【参考】

  • 発達心理学の最先端 認知と社会科の発達科学|中澤潤編著|あいり出版

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