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集団極性化現象とは?具体例とリスキーシフト・コーシャスシフトの違い

集団極性化 リスキーシフト コーシャスシフト

集団極性化現象とは

集団極性化現象とは、集団における意思決定で、通常では考えられないほど「極端に危険」または「極端に保守的」な方向へ向かう現象です。

英語では「group polarization」と表記され、日本語では集団極性化と訳されます。

社会心理学においては、集団による意思決定が必ずしも「うまくいかない」または「良い結論に至らない」という研究結果が無数に発表されています。

その原因の一つが、集団で意思決定を行う場合、個人の意見・判断・感情・行動傾向などが、集団内の討議などを繰り返すうちに当初よりも極端な方向に傾いてしまう集団極性化です。

集団極性化が生じると、集団の意見が極端な方向に傾いて合理的な意見が考慮されにくくなり、場合によっては排除されますし、多様性という集団のメリットが活かされなくなってしまいます。

リスキーシフトとコーシャスシフト

集団極性化の研究は、1961年に心理学者(当時は大学院生)のストーナー,J.A.が集団思考の一つである「リスキーシフト」について報告したことが端緒です。

その後、コーシャスシフトとリスキーシフトを合わせて集団極性化と呼ばれるようになりました。

リスキーシフトとは

リスキーシフトとは、集団で意思決定する場合に、個人で決めるよりもリスクが高い選択をしやすいという現象です。

普段は常識的な考え方をして節度を守って行動することのできる人が、集団の中に入ると、極端な言動や態度に違和感を持たず同調して、一緒になって極端な主張をしやすくなるのです。

例えば、個人では「いじめは絶対にダメ」だと思っていても、クラスメイトの多くが「被害者側にも問題があるよね」と主張すると、それに引きずられてしまうことがあります。

コーシャスシフトとは

コーシャスシフトとは、集団で意思決定する場合に、個人で決めるよりも極端に慎重になる現象です。

例えば、リストラを断行しないと会社が倒産する状況であっても、集団で意思決定をした結果、現状維持が選択されることがあります。

集団極性化の具体例

集団極性化の具体例としては、サイバーカスケードが有名ですが、その他にも様々な場面で同様の現象が起こっています。

サイバーカスケード現象

サイバーカスケード現象とは、アメリカ合衆国の憲法学者サンスティーン,C.が提唱した、インターネット上で生じる集団極性化現象のことです。

インターネットを利用すれば、ネット記事やサイト、ブログ、掲示板などを通して特定の思想・考え・意見などを持った人を簡単に発見でき、それらの人とのやりとりも容易にできるため、思想や考えの同じ人と簡単かつ強力に結びつくことができます。

その結果、同じ思想や考えを持つ人々同士が集団化し、異なる思想や考えを排除した過激かつ閉鎖的なコミュニティが形成されやすくなっています。

例えば、ある事件について特定のサイトや掲示板上で意見交換がなされた場合、賛否いずれかの意見が過剰に強くなり、先鋭化する傾向があります。

こうした、インターネット上で極端な意見形成がなされやすいという現象がサイバーカスケードです。

サイバーカスケードの状態では、特定の人が不特定多数の人から誹謗中傷を受けたり、誤った情報が瞬時かつ大規模に拡散されて受け入れられたりするリスクがあります。

国家の集団極性化

国家は非常に大きな集団であり、集団極性化が起こりやすい集団です。

歴史を振り返ると、キューバ危機やイラク戦争など、集団極性化による判断で勃発したと考えられる戦争や紛争がいくつも見つかります。

集団極性化の原因

集団極性化が起こる主な原因は、以下のとおりです。

同調を求める圧力

集団が大きいほど多数派の意見が重視され、また、少数派の意見が主張しにくくなる傾向があります。

当初は少数派の意見を主張していても、同調を求める圧力に屈して多数派の意見に鞍替えしてしまうことは珍しいことではありません。

日本には「長い物には巻かれろ」という諺(ことわざ)がありますが、集団においては「合理的かどうか」よりも「集団の構成員と同じかどうか」が重視されやすく、それによって集団極性化が起こります。

意見の根拠がたくさん提示される

集団場面では、多数派の意見がより多く主張され、それに関する根拠もたくさん提示されるため、結果として、当初の立場を互いに指示・補強しあうことになって集団極性化が生じます。

また、多数派の中でも個々人が「自分ならもっと優れた案を提示できる」などの自己顕示欲求に基づいて極端な主張をすることにより、多数派意見がさらに先鋭化することもあります。

責任の所在が曖昧になる

集団内では責任の所在が曖昧になります。

個人として意見を求められた場合には、発言に伴う責任を考慮して合理的な意見を述べることができる人でも、集団内では場の雰囲気や目立った意見に同調してしまいがちです。

「赤信号、みんなで渡れば怖くない」という表現がありますが、社会規範に反することでも集団だと心理的抵抗を感じずに実行しやすいのです。

集団への自己同一視が起こる

集団内で意見を交わすうちに集団への自己同一視が起こることにより、個人が自らの社会的アイデンティティを維持するべく多数派意見に同調することもあります。

集団極性化を回避する方法

集団極性化現象を回避する方法としては、以下のようなものがあります。

ダイバーシティ(多様性)の確保

本来、集団での意思決定は構成員のダイバーシティ(多様性)を活かすことを目的の一つとしています。

異なる考えや意見を持った個人をメンバーとして集団に参加させることで、多角的な視点で物事を検討して意思決定することができるからです。

集団極性化を防止するには、ダイバーシティを考慮して集団の構成員を決定することが重要です。

集団極性化が起こることを認識しておく

ダイバーシティを考慮して集団の構成員が決定されたとしても、集団極性化は起こります。

そのため、集団の構成員一人ひとり、少なくとも集団のリーダー的な存在が集団極性化が起こりうることを認識し、集団のダイバーシティが失われないよう配慮することが求められます。

会議の議長や進行役、ワークショップのファシリテーター、ネット掲示板の管理者などが、集団を管理して集団極性化を防ぐ役割を担うことになります。

批判や反論を許容する

日本社会においては、批判や反論を良しとしない風土があります。

特に、立場が上の人の意見や考えに異を唱えることが良しとされない傾向は、職場や家庭でも未だに残っています。

集団極性化を防止するには、こうした伝統的ともいえる風土を排して批判や反論を許容する風土を築き、集団の構成員が上下関係に関わらず自分の意見や考えを自由に主張できるようにすることも欠かせません。

公認心理師試験の出題歴

集団極性化現象(集団思考)は、第1回公認心理師試験に出題されました(正答は赤字)。

問14 集団思考〈groupthink〉に関する説明として、正しいものを1つ選べ。

①集団内で同調圧が高いと感じるときに生じやすい。

②集団意思決定の質は個人による意思決定に比べて優れている。

③集団構成員間の親密性が低いとき、思考や発言が抑制されやすい。

④集団で課題を遂行すると、一人当たりの成績は単独で遂行するときよりも低下する。

⑤緊急時に援助できる人が自分以外にもいる場合、自分しかいない場合より援助行動が抑制されやすい。

引用:第1回公認心理師試験問題

公認心理師試験については、「公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?」で詳しく解説しています。

まとめ

集団極性化現象とは

集団の意思決定場面では、個人では考えられないくらい極端な方向へ向かう現象

リスキーシフトとコーシャスシフト

集団極性化はリスキーシフトとコーシャスシフトに分類される

  • リスキーシフト:集団の意思決定場面で、極端にリスクが高い選択をしやすい現象
  • コーシャスシフト:集団の意思決定場面で、極端に慎重な選択をしやすい現象
集団極性化の具体例
  • サイバーカスケード
  • 国家における集団極性化
集団極性化の原因
  • 同調を求める圧力
  • 意見の根拠がたくさん提示される
  • 責任の所在が曖昧になる
  • 集団への自己同一視が起こる
集団極性化を回避する方法
  • ダイバーシティ(多様性)の確保
  • 集団極性化が起こることを認識しておく
  • 批判や反論を許容する
公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問14