心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

ハルの動因低減説とは?具体例と計算式は?

ハルの動因低減説とは

ハルの動因低減説とは、心理学者のハル,C.L.が提唱したモチベーションに関する理論です。

英語では「drive reduction theory」と表記され、日本語では動因低減説と訳されます。

ハルは、20世紀中盤において、行動主義心理学者ワトソン,J.の影響を受け、学習心理学の第一人者として活躍した新行動主義心理学と呼ばれる立場の心理学者です。

学習理論を数学のように厳密化したり、精神分析の概念を学習理論に統合したりすることを目指していました。

ハルは、オペラント条件づけで何が強化子となるかという問題について、まず「要求低減説」を主張し、その後、要求低減説を修正した「動因低減説」を主張しています。

オペラント条件づけについては、「オペラント条件づけとは?例とスキナーの研究、正の強化・負の強化とは?」で詳しく解説しています。

MEMO

要求低減説:あらゆる1次強化子は、生物学的要求を低減させる刺激であって、その刺激は強化子の役目を果たすという理論

性的な刺激や人工甘味料など生死に直結しないが強い強化子となり得る刺激や、生物学的に必要だがすぐには強化子とならない刺激があるなど例外が多いという批判を受けた。

そのためハルは、要求低減説を修正して動因低減説を提唱した。

ハルの動因低減説の特徴

ハルの考え方は、簡単に言えば、「生理的に安定した状態にある動物は何もしない。動物が行動を起こすのは動因が生じたときに、動因を低下させるためである。」というものです。

そして、ハルの動因低減説は、「動因を低減する行動が強化される」という一文に集約されます。

つまり、行動がある刺激によって生じ、結果として動因が低減した場合、その行動は同じような刺激でも再び生じやすくなるというものです。

動因とは、人の行動を方向づける心的エネルギーのことです。

ハルは、動因と過去の学習や経験の結合の積の関数によって、刺激と反応に基づいた人の行動を明らかにできると考え、計算式で表現しています。

ハルの動因低減説の計算式

ハルの動因理論(動因低減説)では、どのように人間の欲求が生じ、どのような心理プロセスを経て行動の行動付けがなされるかについて、数式化されています。

sER(反応のポテンシャル)=D×sHR(習慣・経験の強度)

  • s(stimulus):刺激
  • R(Response):反応
  • E(Effective reaction potential):有効反応ポテンシャル
  • D(Drive):動因
  • H(Habit):習慣

習慣強度とは、過去の学習や強化経験の結合としての習慣の強さのことです。

反応ポテンシャルとは、刺激反応に基づく「観察・数量化可能な」行動の強さや速さです。

ハルの考えに基づくと、「習慣強度」の大きさと「動因」の大きさによって、反応ポテンシャルが決まります。

また、過去の経験の中でも、満足度の高い経験が強化されて習慣化した学習経験が、人の行動に影響を与えることになります。

動因低減説の具体例

動因低減説の具体例について確認していきます。

喉の渇きと水

喉が渇いているとします。

このとき、「喉が渇いているという状態」が動因であり、水を与えると喉の渇きがおさまります。

つまり、動因が低減します。

その結果、喉が乾いたら水を飲むという行動が強化されます。

そして、喉の渇きが強いほど、何かを飲みたいという気持ちが強いほど、水を飲む可能性(反応ポテンシャル)は高くなります。

同じことは空腹時の食べ物にも当てはまります。

つまり、「空腹状態(動因)→食物摂取→満腹(動因軽減)→食物摂取の行動が強化」という流れで行動が強化されるのです。

運動

運動不足だと感じている人が、ある日、午前6時に起きて運動すると身体が軽くなり、運動不足だと感じる気持ちが低下した(動因が低減した)とします。

この場合、運動不足を感じたら午前6時(朝早く)に起きて運動するという行動が強化されます。

そして、6時に起きて運動をすることが習慣化されるほど、また、身体を動かしたいという気持ちが強いほど、6時になったら起きて運動をする可能性(反応ポテンシャル)が高くなります。

仕事とお金

多くの人は、生活に必要なお金を稼ぐために仕事をしています。

私たちが安定した生活を送るにはお金がかかります。

食べる、飲む、物を買う、子どもに教育を受けさせる、旅行に出かけるなどはお金がないと望んだことができません。

そのため、お金を稼ぐ目的で仕事をするのです。

やりがいやボランティアのために仕事をする人もいますが、それはすでに生活の安定を手に入れた人たちです。

まとめ

ハルの動因低減説とは

新行動主義心理学者のハルが提唱した理論

「動因を低減する行動が強化される」という考え方で、反応ポテンシャルは以下の計算式で算出される

sER(反応のポテンシャル)=D×sHR(習慣・経験の強度)

  • 反応ポテンシャルは、「習慣強度」の大きさと「動因」の大きさで決定される
  • 過去の経験の中でも、満足度の高い経験が強化されて習慣化した学習経験が、人の行動に影響を与える
動因低減説の具体例

喉の渇きと水、運動、仕事とお金など

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