心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

刻印づけ(刷り込み)とは?ローレンツと鳥の実験、臨界期について

刻印づけ 刷り込み

刻印づけ(刷り込み)とは

刻印づけ(刷り込み)とは、オーストリアの動物行動学者ローレンツ,K.Z.らが提唱した、特定の時期に特定の刺激に対する反応として生じた行動が、反復や経験、報酬なしに長期間持続する現象です。

英語では「imprinting」と表記され、日本語では「刻印づけ」または「刷り込み」と訳されるか、インプリンティングとカタカナ表記されます。

刻印づけを最初に指摘したのはイギリスの博物学者スポルディング,D.とされています。

その後、ドイツの生物学者ハインロート,O.が再び指摘し、その弟子のローレンツが離巣性の鳥類の刻印づけに関する研究を発表して有名になりました。

ローレンツの鳥の実験

ローレンツは、ハイイロガンの卵を人工ふ化し、ガチョウに育てさせるという研究を行いました。

結果、ガチョウがふ化させたハイイロガンの雛は、ガチョウを親とみなしているかのようにガチョウの後をついて歩き回るようになりました。

また、ハイイロガンの雛をローレンツ自身の目の前でふ化させたところ、雛はローレンツの後をついて回るようになり、ガチョウの傍に行かせてもローレンツの後追いを止めませんでした。

その後の研究で、ハイイロガンは生まれた時点では親の顔を認識しておらず、生まれた直後に見た動いて声を出すものを親だと覚えることが明らかにされました。

刻印づけ(刷り込み)と臨界期(敏感期)

臨界期とは、生物の発達段階において、特定の刺激と反応の連合が最も起こりやすい時期のことです。

当初、刻印づけ(刷り込み)には発達の比較的初期に臨界期が存在し、特定の時期を逸すると成立しないと考えられており、また、一度刻印づけされると取り消すことができないと考えられていました。

そのため、早期学習・早期教育などの重要性を支持する現象として注目されました。

しかし、その後の研究により、刻印づけの臨界期は特定の刺激作用の影響を受けやすい時期に過ぎず、敏感期という名称が適切であると指摘されるようになります。

また、刻印づけが取り消せないという点についても、種によっては若干の修正が可能であるという研究結果が示されています。

例えば、アヒルの場合、人を親だと覚えこませた後、別の親代わりになる対象を提示することにより、その対象を親だと覚えなおすことができるという研究結果があります。

性的刻印づけ

刻印づけによって異なる種を親だと思い込んだ動物は、性的成熟後、刻印づけの対象と同種の動物に対して求愛行動をとるようになることがあります。

例えば、鳥類や哺乳類の一部は、発達初期を一緒に過ごした種を繁殖のための相手として選ぶことが分かっています。

刻印づけ(刷り込み)と人間

刻印づけは、人には見られない現象であると考えられています。

しかし、発達初期における一定の時期において、母親(養育者)の愛情を十分に受けて愛着が形成されることが、その後の発達に大きな影響を与えることは人も同じであり、その意味では動物も人も共通していると言えるでしょう。

刻印づけ(刷り込み)の特徴

刻印づけ(刷り込み)の特徴をまとめておきます。

  • 臨界期(敏感期)が存在
  • 原則として、特定の刺激を1度提示するだけで刺激と反応の連合が成立(反復学習や経験を必要としない)
  • 報酬を与えなくても成立
  • 一度成立すると取り消すことができない(その後の研究で若干の修正は可能とされる)
  • 性的刻印づけが見られる

刻印づけ(刷り込み)と学習

刻印づけという現象が知られるようになるまでは、動物の学習が成立するには学習の反復、経験の積み重ね、報酬などが必要であるとされてきました。

しかし、ローレンツが発表した鳥の刻印づけは、反復、経験、報酬を必要とせずに記憶(ローレンツを親だと思い込むなど)が成立する上、長期間にわたって持続されるものです。

古典的行動主義が学習成立のメカニズムとして想定していた古典的条件づけやオペラント条件づけでは説明することができません。

刻印づけに関する行動の基礎は先天的に備わっており、そこに後天的な学習によって変更できる部分があることを示していると考えられます。

古典的条件付け 無条件刺激と任意刺激を対呈示し、無条件刺激で起こる無条件反応が、中立的な任意刺激に対する条件反応として生じるようにすること

例:パブロフの犬など

オペラント条件づけ 特定の刺激下で、弁別刺激、オペラント行動(反応)、強化刺激を随伴させ、反応の頻度を変容させること

例:スキナー箱の実験など

古典的条件づけについては、「古典的条件づけとは?例はパブロフの犬や梅干し?強化や消去とは?」で詳しく解説しています。

また、オペラント条件づけについては、「オペラント条件づけとは?例とスキナーの研究、正の強化・負の強化とは?」で詳しく解説しています。

まとめ

刻印づけ(刷り込み)とは

ローレンツらが提唱した、特定の時期に特定の刺激に対する反応が反復・経験・報酬がなくても連合し、長期間持続する現象

刻印づけと学習
  • 古典的条件づけやオペラント条件づけでは説明できない
  • 基本的な部分は先天的に備わっており、後天的に変更できる余地が含まれていると考えられる