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産業保健とは?産業保健の目的と関連する法律や制度を解説

産業保健

産業保健とは

産業保健とは、労働者(従業員)の安全と健康を確保しながら生産性の向上を図るために企業が実施する保健活動です。

近年、過重労働(過労)やメンタルヘルスなど働き方に関する問題が表面化しています。

例えば、仕事に対する強いストレスや不安を感じる人が増加し、労働者の健康に関する基礎的な指標の悪化も見られます。

派遣労働者やパートタイム労働者は、職場の健康管理において正規労働者(正社員)よりも大きな問題を抱えやすいもいわれています。

こうした中で重要とされるのが産業保健で、政府が施策として推進する「働き方改革」でも産業保健活動が重要なものとして位置づけられています。

働き方改革が進められる中で、働き方改革関連法の施行によって、「産業医・産業保健機能の強化」が図られ、これまで以上に、産業保健活動を効果的・効率的に進めることが期待されます。

引用:産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集〜産業保健チームを効果的に活用しましょう!〜2019年3月厚生労働省

使用者の安全配慮義務

労働契約法第5条には、使用者(企業)の従業員への安全配慮義務が規定されています。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

(労働契約法第5条)

使用者は、安全配慮義務を怠って労働者に損害を生じさせた場合、その損害を賠償する責任を負います。

安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求は、以下の要件を満たす場合には、労災認定による補償とは並行して請求されるケースもあり、使用者にとっては重い負担となります。

  • 予見可能性
  • 結果回避義務を果たしていない
  • 因果関係

予見可能性というのは、損害の発生が予見できることです。

使用者が予見していなかったとしても、客観的に予見できると認められる場合には予見可能性が認定されることになります。

過労死

過労死等防止対策推進法では、以下のとおり規定されています。

この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。

(過労死等防止対策推進法第2条)

産業保健総合支援センター

産業保健総合支援センターとは、産業保健に携わる人の支援と、事業主などに対する職場の健康管理の啓発を目的として、独立行政法人「労働者健康安全機構」が全国47都道府県に設置している機関です。

主な業務は、以下のとおりです。

  • 産業保健に関する問題全般についての窓口相談・実施相談
  • 産業保健関係者を対象とする専門的かつ実践的な研修、講師の紹介
  • 産業保健に関する情報提供、図書や教材の閲覧
  • 労務管理担当者などに対する広報・啓発、職場の健康問題に関するセミナーの実施
  • 調査研究
  • 小規模事業所などの支援を目的とした地域産業保健センターの運営

管理監督者

管理監督者とは、労働条件の決定やその他の労務管理に関して経営者と一体的な立場にある人です。

管理監督者は、労働基準法に規定された労働時間、休憩、休日の受けないとされています。

管理監督者と判断される要件は、以下のとおりです。

  • 労働時間、休憩、休日などの規制の枠外で活動せざるを得ない重要な職務内容があり、その重要な責任と権限がある
  • 現実の勤務が労働時間などの規制になじまない
  • 賃金などについて、地位相応の待遇がある

産業保健に関する制度と法律:全事業所

産業保健に関する主な制度とそれに関する法律について解説していきます。

健康診断と事後指導

労働安全衛生法では、事業者の義務として、従業員の健康診断とその事後指導について規定しています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。

労働安全衛生法第66条第1項

対象となる労働者は、正社員と、1年以上の雇用の見込みがあり、1週間の労働時間が正社員の4分の3以上の労働者です。

また、健康診断を行った後の事後指導も事業者の義務とされています(労働安全衛生法第66条第4項、第5項)。

その他、以下のような決まりがあります。

健康診断に関する規定説明
50人を超える労働者を使用する事業者定期健康診断後に結果報告書を労働基準監督署へ提出する義務
深夜業に従事する事業者年2回の健康診断を実施

(週1回または月4回以上、22時~翌5時の時間帯に労働を行う労働者に対して)

特に健康の保持に努める必要があると認める労働者医師または保健師による保健指導を実施

長時間労働の面接義務

事業者は、長時間労働によって疲労が蓄積した労働者に対して、医師による面接指導を行う義務があります。

面接時にはうつ病などの精神疾患の発症を予防するために、メンタルヘルスへの配慮も求められます。

長時間労働が脳疾患や心臓疾患の発症と関連性が高いという医学的な知見や、自殺事案のうち労災認定されたものには長時間労働が原因とされるケースが多いことを踏まえた制度です。

MEMO

1週間あたりの労働時間が40時間を超え、その時間が1ヶ月あたり100時間を超えて、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合、使用者は、医師による面接指導を行う義務があります(労働安全衛生法第66条第8項、同規則第52条の2、同3)。

 

80時間以上100時間未満の労働者については努力義務です。

 

また、産業医は、1ヶ月あたり100時間以上の残業をした労働者に対し、面接の申し出を行うよう勧奨できます。

ストレスチェック

ストレスチェックについては、労働安全衛生法第66条の10に規定されています。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。

(労働安全衛生法第66条の10)

ストレスチェックは、労働者のストレスの度合いを把握し、労働者自身がストレスに気付くよう促したり、職場の改善につなげたりすることで、労働者のメンタルヘルスの問題を予防することを目的としています。

その他、ストレスチェックに関する主な規定は、以下のとおりです。

  • 事業者は、常時使用する労働者に対してストレスチェックを実施する義務がある(労働者が50人未満の事業場は、当面の間は努力義務)
  • ストレスチェックの結果は、実施した医師や保健師などから本人に通知される(本人の同意がないと事業者に提供されない)
  • 事業者は、一定の要件に該当する検査結果となった労働者から申し出があれば、医師による面接指導を実施する義務がある
  • 事業者は、面接指導の結果に基づいて、医師の意見を聞いた上で、必要に応じて就業上の措置を講じる義務がある

産業保健に関する制度と法律:労働者が50人以上

常時使用する労働者が50人を超える事業場については、以下の産業保健が義務付けられています。

衛生管理者の選任

労働者の数に応じて、事業場専属の衛生管理者を選任する必要があります。

労働者の数選任する衛生管理者の数
50人以上200人以下1人以上
200人以上500人以下2人以上
500人以上1000人以下3人以上
1000人以上2000人以下4人以上
2000人以上3000人以下5人以上
3000人以上6人以上

衛生管理者は、選任すべき事由が生じた日から14日以内に選任することが義務付けられています(労働安全衛生法第7条)。選任すべき人数は事業場の労働者数により、以下の人数になります。

「常時使用する労働者が1000人以上」、または、「常時使用する労働者が500人以上で、法定の有害業務に従事する労働者が常に30人を超える」場合、衛生管理者の1人以上を選任とする必要があります。

衛生管理者の主な業務は、以下のとおりです。

  • 労働者の危険や健康障害を防ぐ措置・教育
  • 健康診断
  • 労災の防止調査・対策(衛生に関する技術的事項)
  • 週に1回以上作業場などを巡視し、労働者の健康障害を防ぐ措置を講じる

衛生管理者には第一種(全業種で対応できる)と第二種(対応できな異業種がある)があります。

尚、衛生管理者には第一種、第二種の種別があり、第一種は全ての業種で対応が可能ですが第二種では一部対応できない業種があります。

産業医の選任

常時使用する労働者が50人を超える事業場は、労働者の数に応じて産業医を選任する必要があります(労働安全衛生法第13条、同規則第14条、第15条)。

常時使用する労働者の数選任する産業医
3000人以上2人
1000人以上

(深夜業などの業種は500人以上)

専属の産業医を1人

産業医の選任は、専任の事由が生じた日から14日以内に行う必要があります。

産業医の主な業務は、以下のとおりです。

  • 月1回以上作業場などを巡視(作業方法・環境が有害だと認められる場合、健康障害防止のに必要な措置を講じる)
  • 安全衛生委員会への出席
  • 健康診断の事後指導
  • 各種面談指導
  • 作業環境の管理
  • 労働衛生教育・健康教育
  • 健康相談など
  • 労働者の健康管理に対する勧告

公認心理師試験の出題歴

産業保健は、第1回公認心理師試験に出題されました(正答は赤字)。

問28 産業保健について、正しいものを1つ選べ。

①事業場を経営する者を管理監督者という。

②労働者は自らの健康管理に関する安全配慮義務を負う。

③ストレスチェック制度は労働者のうつ病の早期発見を目的とした取組である。

④常時50人以上の労働者を使用する事業場は、産業医を選任しなければならない。

⑤過労死等防止対策推進法における「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患又は心臓疾患を原因とする死亡をいう。

引用:第1回公認心理師試験

公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?

まとめ

産業保健とは

労働者の安全・健康を確保し、生産性の向上を図るために企業が実施する保健活動

産業保健に関する制度と法律:全事業所
  • 健康診断と事後指導
  • 長時間労働の面接義務
  • ストレスチェック
産業保健に関する制度と法律:全事業所
  • 衛生管理者の選任
  • 産業医の選任
公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問28