知的障害(赤ちゃんの特徴と兆候)

知的障害

知的障害とは

知的障害とは、発達期に生じる障害であり、知的能力全般(判断・理解・記憶・思考・知覚)の発達が遅れた水準に留まり、社会生活への適応に支障が出た状態です。

つまり、「発達期に生じる障害である」、「知的能力の制約がある」、「適応行動に制約を伴う」の3つを特徴とします。

日常生活においては、読み書き、計算、お金の管理、勉強、集団行動、社会のルールの順守などに支障が出ることが多いものです。

一方で、適応行動に制約を伴わない場合、つまり、知的能力に若干の遅れが見られても社会適応に問題がない場合は、知的障害に気づかないまま成長することが多く、病院を受診しても知的障害と診断されないことがあります。

知的障害と精神薄弱、精神遅滞

知的障害は、以前は学校教育法で使用されていた「精神薄弱」という単語が用いられていました。

しかし、精神的な欠陥を連想させるネガティブな名称であることから、1970年代に「精神遅滞」という言葉が使われるようになり、1998年の法改正後は「知的発達障害(略して知能障害)」という言葉が使われるようになっています。

また、知的障害と精神遅滞は、現在もほぼ同じ意味で使用されますが、精神遅滞は医学分野で、知的障害は教育分野で用いられるのが一般的です。

知的障害の原因

知的障害の原因は、以下の3つの要因に分類することができます。

  1. 生理的要因
  2. 病理的要因
  3. 心理・社会的要因

ただし、知的障害の原因が特定できない場合も少なくありません。

特に、軽度知的障害の場合、原因が特定できることの方が少ないのが現状です。

知的障害の原因1:生理的要因

知的能力に異常を生じさせる病気などに罹患していなくても、知的障害のある親からの遺伝や遺伝子の組み合わせによって知的障害になる子どもがいます。

生理的要因による知的障害は、障害の程度が軽度または中度で、合併症がなく、健康状態にも問題がないという特徴があります。

統計上、知的障害の大半は生理的要因によるものです。

知的障害の原因2:病理的要因

脳の病気や障害によって知的発達が阻害され、知的障害となる場合もあります。

具体的な原因としては、先天性疾患、出産時の事故、出生後の病気や事故を挙げることができます。

  • 先天性の疾患:自閉症スペクトラム障害(発達障害)、染色体異常など
  • 出産時の事故:分娩時に脳が圧迫された、酸素が不足したなど
  • 出生後の病気や事故:高熱が続いた、脳出血、交通事故など

病理的要因による知的障害は、障害の程度が重く、脳性麻痺・てんかん・心臓病などの合併症を抱えることが多い傾向があります。

知的障害の原因3:心理・社会的要因

知的障害は、出生後の生育環境が原因で生じることもあります。

例えば、親の虐待、親子間の著しいコミュニケーション不足、刺激が極端に少ない養育環境などが、知的障害の原因となり得ます。

心理・社会的要因による知的障害は、親の関わり方や養育環境が改善し、適切な教育や療育を継続的に受けることで回復することがあるのが特徴です。

知的障害の分類

実務上は、発達検査や知能検査で知能指数が70以下の場合に知的障害とされ、また、知能指数によって軽度、中度、重度、最重度の4段階に分類されます。

  • 軽度:知能指数50~69
  • 中度:知能指数35~49
  • 重度:知能指数20~34
  • 最重度:知能指数20以下

以下、各段階の特徴について解説します。

知能指数50~69:軽度

知能指数が50~69の場合は、軽度の知的障害です。

精神年齢は、生後9歳~12歳未満の水準です。

子ども自身に自覚症状がなく、親から見てもきょうだいや同年代の他の子どもと区別がつかないことが多いレベルです。

知的能力の遅れによって日常生活に支障が出ることもあまりないため、気づかれないままになることもあります。

知能指数35~49:中度(中等度)

知能指数が35~49の場合は、中度(中等度)の知的障害です。

精神年齢は、生後6歳~9歳未満の水準です。

親や周囲の人は、子どもの言動や態度から知的障害があることに気づきます。

同年代の子どもと比較して学習能力が低く、行動や判断もゆっくりなので、家庭や保育所・学校など日常生活場面で様々な支障が出ます。

子どもも「他の子どもにできることが自分にはできない。」、「自分だけ遅れている。」ことを自覚し、劣等感を強める傾向があります。

知能指数20~34:重度

知能指数が20~34の場合は、重度の知的障害です。

精神年齢は、生後3歳~6歳未満の水準です。

病理的要因による知的障害では重度以上の場合が多く、知的な遅れ以外に様々な病気を合併していることがあります。

日常生活の多くの場面で支援を必要とします。

また、知的障害に加えて発達障害(自閉症スペクトラム障害など)がある場合、パニックなどの問題行動を起こしやすくなる傾向も指摘されています。

知能指数20以下:最重度

知能指数が20以下の場合は、最重度の知的障害です。

精神年齢は、生後3歳未満の水準です。

知的な遅れによって日常生活のほぼ全ての場面で支障をきたし、生活全般の支援を要します。

また、運動機能の異常を伴って寝たきりで過ごす子どももいます。

補足:知能指数70~85:境界域(ボーダー)

知能指数70~85の場合は、境界域(ボーダー)と呼ばれます。

知能指数は、一般的な水準より低いものの知的障害ほど低くはなく、知的障害とは診断されません。

知的障害のない人の中でもあまり目立たないことが多いですが、環境によっては周囲にうまく適応できないこともあります。

知的障害はいつ分かる?兆候や特徴は?

染色体異常など先天性疾患が原因の場合、奇形など外見的な異常を伴うことが多く、生まれたばかりの頃に知的障害だと分かることが多いものです。

外見的な異常がない場合、成長するにつれて言葉の遅れ、不器用さ、遊び方の幼稚さなど行動面の遅れから知的障害が疑われるようになります。

例えば、いつまで経っても話さない、寝返りできない、物をつかめない、座れない、ジッとしていられないなど、健常な発達を遂げた子どもと比較すると明らかに遅れが見られます。

乳児健診や小児科受診の際に医師から指摘されることもあります。

ただし、軽度知的障害の場合、これといった問題がなく、障害が見過ごされたまま成長することが多いものです。

中度以上の知的障害を抱えている場合、幼児期や児童期になって保育所・幼稚園・小学校などに入ると、対人関係や学習など日常生活の様々な場面で支障が生じるため、親、保育士、教師などが気づきます。

知的障害と発達障害の違い

知的障害と発達障害はまったく別の障害です。

しかし、どちらも名称に「障害」がつくこと、定義が分かりにくいこと、発達障害と知的障害がある子どもが少なくないことなどから混同されがちです。

知的障害は「知的能力全般が年齢相応の発達より遅れている」状態です。

一方の発達障害は、自閉症スペクトラム障害(広汎性発達障害)、学習障害(限局性学習障害)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの総称で、主に「言語、コミュニケーション、社会適応に問題がある状態」です。

発達障害の子どもは知的障害を併発していることが多いですが、アスペルガー症候群のように知的障害のない発達障害もあります。

自閉症スペクトラム障害と発達障害

自閉症スペクトラム障害とは、DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)で神経発達症群に分類される診断名の1つであり、「社会的コミュニケーションの障害」や「限定された興味」などの状態を連続体(スペクトラム)して包含する障害です。

引用:自閉症スペクトラム障害(乳児期の赤ちゃんの症状)|psycho-lo

自閉症スペクトラム障害の子どもは、知的障害を併発していることが多いものです。

実務上は、日常生活に支障をきたす症状によって知的障害と診断されるか自閉症スペクトラム障害と診断されるかが分かれます。

つまり、知的障害の症状(知的制約)が日常生活に与える影響が大きければ知的障害と診断され、社会的コミュニケーションや限定された興味が日常生活に支障をきたす主な原因であれば自閉症スペクトラム障害(自閉症)と診断されることが多いということです。

知的障害と学習障害(限局性学習障害)

知的障害と間違われやすい発達障害の最たるものが学習障害(限局性学習障害)です。

学習障害は、「読み書き、計算など学習の特定の分野に問題がある障害」ですが、知的能力全般の障害は認められません。

学習に困難がある場合、発達検査や知能検査で知能指数が70以上であれば学習障害、70未満であれば知的障害が疑われます。

知的障害と認知症の違い

認知症とは、脳の神経細胞が障害されて死滅・減少することにより、獲得された脳の認知機能が低下し、日常生活に様々な支障をきたす状態です。

認知症の症状には、認知機能の低下によって起こる「中核症状」と、中核症状とそれに伴う日常生活上の支障や個人の人格などが絡み合って起こる「周辺症状」があります。

【中核症状】

  • 記憶障害
  • 見当識障害
  • 理解・判断力の障害
  • 実行機能障害
  • 失認識・失行・失語

【周辺症状】

  • せん妄
  • 妄想
  • 幻覚
  • 睡眠障害
  • 介護拒否
  • 失禁・弄便
  • 徘徊
  • 暴言・暴力
  • 無気力・抑うつ
  • 不安

知的能力が低下した状態は、認知症も当てはまることがあります。

しかし、認知症が「一度発達した知的能力が低下した状態」であるのに対して、知的障害は「知的能力の発達が進まない状態」であり、両者は別のものです。

まとめ

知的障害とは

発達期に生じる、知的能力全般の発達が遅れた水準に留まる、社会生活への適応に支障が出るという3つの特徴が見られる状態

知的障害の原因
  • 生理的要因:遺伝的要因など
  • 病理的要因:脳の病気など
  • 心理・社会的要因:出生後の生育環境
知的障害の分類

知能検査(幼児期は発達検査)の結果によって分類

  • 軽度:知能指数50~69
  • 中度:知能指数35~49
  • 重度:知能指数20~34
  • 最重度:知能指数20以下
  • 境界域:知能指数70~85
知的障害はいつ分かる?兆候や特徴は?

生理的要因や病理的要因の場合、外見的な異常があれば生まれたばかりの頃に分かることが多い

軽度の場合は気づかれないまま成長することもある

知的障害と発達障害の違い

「知的能力全般が年齢相応の発達より遅れている状態」か「言語、コミュニケーション、社会適応に問題がある状態」かの違い

ただし、発達障害の子どもが知的障害を併発することは多い

知的障害と認知症の違い

「一度発達した知的能力が低下した状態」か「知的能力の発達が進まない状態」かの違い

【参考】

コメントを残す