心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

内発的動機づけとは?デシの実験と具体例、外発的動機づけとの違い

内発的動機づけとは

内発的動機づけとは、外部からの刺激ではなく、内から湧いてくる興味関心や楽しみなどからもたらされる動機づけです。

英語では「intrinsic motivation」と表記し、日本語では内発的動機づけと訳されます。

金銭や賞罰などが与えられることを期待して(または回避するために)行動するのではなく、本人が自らの意思で開始して持続させる行動が、内発的動機づけによる行動です。

心理学の世界では、動因低減説(動因低減理論)に基づく外部からの報酬による動機の研究が伝統的に繰り返されてきました。

しかし、心理学者デシ,E.L.は、はっきりした外的報酬がない状況における動機を内発的動機づけを呼び、外部からの報酬による動機を外発的動機づけと呼びました。

また、「内発的動機づけを有能感と自己決定感に基づく欲求」だと説明し、理論化しています。

MEMO

動因低減説(動因低減理論):ハル,C.L.とミラー,N.E.が提唱した、刺激、反応、動因などの関係を数式で説明する理論

ある刺激によって反応が生じ、反応の結果として動因が低減する場合、似た刺激でも同じ反応が生起しやすくなる(反応が動因を満足・低減させることで、刺激と反応の連合が強化される)と説明される

sER(反応のポテンシャル)=D(動因、心的エネルギーの大きさ)×sHR(習慣・経験の強度)
  • s(Stimulus):刺激
  • R(Response):反応
  • E(effective reaction potential):有効反応ポテンシャル
  • D(Drive):動因
  • H(Habit):習慣

内発的動機づけの実験

1971年、デシと心理学者のレッパー,M.R.は、ソマパズル(立体パズル)を用いた実験を行いました。

  1. 大学生を被験者とする
  2. 実験室に被験者を集め、内発的動機づけを促す対象であるソマパズルを渡す
  3. 被験者をAグループとBグループに分ける
  4. 第1セッション:被験者全員にパズルを解かせる
  5. 第2セッション:Aグループには「パズルを解くごとに1ドルを報酬として与える。」と告げ、実際に、パズルを解いた被験者に報酬を与える(Bグループには何も告げず、報酬も与えない)
  6. 第3セッション:AグループとBグループの被験者全員にパズルを解かせる(いずれにも報酬は与えない)

この実験で注目されたのは、各セッションでパズルが2問終わるたびに、検査者が「実験室内のパズルや書籍などを自由にして良い。」と言い残して8分間離席した後の被験者の行動です。

検査者が離席した8分間に、被験者がどれくらいソマパズルに取り組むかを、内発的動機づけの指標と考えたのです。

実験の結果、Bグループの被験者(無報酬)がソマパズルに触れる時間は、各セッションで変化しませんでしたが、Aグループの被験者(報酬あり)は、セッションを経るにつれて触れる時間が短くなりました。

この実験は、アンダーマイニング効果を実証する実験として有名で、以降、後続研究がいくつも生まれました。

MEMO

アンダーマイニング効果:内発的動機づけによる行動に外発的動機づけがなされることにより、モチベーションが低減する現象(自ら好んで取り組んでいる行動に外部から報酬などが与えられることにより、自発的なやる気が失われる現象)

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

外発的動機づけとは、本人の内側から湧いてくるのではなく、外部からの報酬などによってもたらされる動機づけです。

英語では「extrinsic motivation」と表記されます。

例えば、親に「テストの成績が良ければおもちゃを買ってあげる。」と言われて子どもが勉強に励む、上司から「一定水準を超える営業成績を出せば臨時ボーナスを出す。」と言われて部課が仕事に打ち込むなどが、外発的動機づけによる行動です。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

内発的動機づけと外発的動機づけの主な違いは、目標設定と行動の持続しやすさです。

目標設定

内発的的動機づけは、本人が自分で目標を設定し、目標を達成するために行動を開始して持続させます。

外発的動機づけは、外部から動機づけと同時に目標も設定され、報酬などの刺激を得るために行動します。

行動の持続しやすさ

内発的動機づけによる行動は、本人が自分で決めた目標を達成するための行動なのでモチベーションが維持されやすく、状況が変化したり高い壁にぶつかったりしても、諦めずに解決方法を模索して目標に向かいやすいものです。

一方で、外発的動機づけによる行動は、行動の動機も目標も他人から与えられたものであり、外部からの動機づけが与え続けられないとモチベーションが低下しますし、困難な状況に直面すると、相応の報酬などが与えられないと諦めてしまうこともあります。

外発的動機付けについては、「外発的動機づけとは?心理学の定義と具体例、内発的動機づけとの違い」で詳しく解説しています。

内発的動機づけのメリット・デメリットと具体例

内発的動機づけのメリットとデメリットについて解説していきます。

内発的動機づけのメリット

内発的動機づけには、多くのメリットが存在します。

行動が持続しやすい

外発的動機づけとの違いの項目で書いたとおり、内発的動機づけによる行動は、自己決定した目標を達成するための行動です。

そのため、行動へのモチベーションが維持されやすく、行動も持続されやすいという特徴があります。

例えば、子どもが自ら「次の定期試験で平均80点以上をとる」と決めて試験勉強を開始した場合、根気強く勉強に取り組むことができます。

創造性や柔軟性が求められる仕事を達成しやすい

内発的に動機づけられている場合、高い壁にぶつかってもモチベーションが低下しにくく、創意工夫を凝らして自己決定した目標を達成しようとします。

例えば、試験勉強する子どもの場合、難しい問題に当たっても諦めず、参考書を読んだりあれこれ考えたりしながら問題を解こうとします。

自己成長を促す

内発的動機づけは、本人の成長を促すメリットもあります。

「これができるようになりたい。」、「上司のように効率的に仕事をこなしたい。」などという目標を持ち、その達成に向かって行動することにより、スキルや経験、ノウハウなどが蓄積され、自ずと成長していくのです。

例えば、最初は「直近のテストで良い点数を取りたい。」と思っていた子供が、勉強の楽しさに目覚め、「TOEICで900点以上を目指したい。」、「留学して本格的に英語を勉強したい。」などと自分を成長させる目標を立て、それに向かって行動することが考えられます。

外発的動機づけを与えることで、効果が高まる

内発的動機づけは、外発的動機づけと組み合わせることでより動機づけが強まることがあります。

例えば、自ら試験勉強に取り組んだ結果として試験で良い点を取り、そのことを親から褒められてさらに自発的なやる気を強めるということがあります。

ただし、注意したいのは、外発的動機づけの与え方によっては、内発的動機づけを低減させるおそれがあります。

上で説明したアンダーマイニング効果と呼ばれる現象です。

例えば、自らの意思で試験勉強に打ち込む子供に対して、親が「今度の試験で良い点数が取れたら、小遣いを上げてやる。」と言い、実際にテストで良い点数を取った子どもの小遣いを上げたとします。

すると、小遣いをもらうことが勉強の目的となり、自発的に勉強する意欲を低下させてしまうことがあるのです。

アンダーマイニング効果については、「アンダーマイニング効果とは?具体例は?逆はエンハンシング効果?」で詳しく解説しています。

内発的動機づけのデメリット

内発的動機づけのデメリットは、外部から内発的動機づけを行うことが困難ということです。

例えば、本人の適性を踏まえて取り組んでほしい仕事があったとしても、本人にその気がない場合、報酬をちらつかせる外発的動機づけによって行動させることはできても、内発的動機づけが生じさせることは困難です。

また、内発的動機づけが生じる要件は一人ひとり異なり、動機づけを促す働きかけ方が標準化できず汎用性が確保できないこともデメリットの一つでしょう。

まとめ

内発的動機づけとは

本人の中から湧いてくる興味関心などによってもたらされる動機づけ

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

外発的動機づけ:報酬など外部からの刺激によってもたらされる動機づけ

内発的動機づけと外発的動機づけでは、誰が目標設定するか、行動の持続しやすさの点で違いがある

内発的動機づけのメリット・デメリットと具体例

メリット:行動が持続しやすい、創造性や柔軟性が求められる仕事を達成しやすい、自己成長を促す、外発的動機づけを与えることで効果が高まる

デメリット:外部から動機づけることが困難、働きかけ方が標準化できない

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