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コールバーグの道徳性発達理論とは?6段階の発達段階とモラルジレンマ

コールバーグ

コールバーグの道徳性発達理論とは

コールバーグの道徳性発達理論とは、アメリカ合衆国の心理学者コールバーグ,L.が提唱した道徳性の発達に関する理論です。

コールバーグは、人の道徳性(ある行動をするかどうかの判断)が段階を経て発達すると考え、道徳性が3つのレベルと6つの段階をもつとする理論を提唱しました(その後、4と2分の1段階を追加)。

なお、コールバーグは心理学者のピアジェ,J.の認知的発達理論の影響を強く受け、その理論にもピアジェの影響が現れています。

コールバーグの実験(ハインツのジレンマ)

コールバーグは、以下の実験によって子どもの道徳的判断の発達を測定しています。

【設定】

  1. 病気にかかって今にも亡くなりそうな女性がいる
  2. 女性の夫であるハインツは病気に効く薬を探し、ある薬剤師が売っている薬を見つける
  3. 薬の金額は2000ドル(薬剤師は200ドルで入手)
  4. ハインツは、周囲の人からお金を借りるが1000ドルしか集まらない
  5. ハインツは薬剤師に事情を話すが、薬剤師は金儲けがしたいため値下げはできないと主張する
  6. ハインツは、薬剤師の店に侵入して薬を盗み出す

【質問】

女性の夫の行動は良かったか。

コールバーグは、この実験結果などに基づいて人の道徳性を分類しました。

レベル ステージ(志向)
1(慣習的水準以前) 1(罪と服従)
2(道具主義的相対主義)
2(慣習的水準) 3(良い子)
4(法と秩序)
3(慣習的水準以降) 5(社会契約的遵法)
6(普遍的な倫理的原理)

以下、コールバーグの道徳性の発達段階について解説します。

コールバーグの道徳性の発達段階

コールバーグの道徳性の発達段階における3つのレベルと6つのステージは、それぞれ以下のように説明されます。

レベル1:慣習的水準以前(道徳以前)

慣習的水準以前とは、子どもの中に道徳性の判断基準がない状態です。

慣習的水準以前の子どもは、所属する社会の分化の規則や、ある行為につけられたラベル(良い、悪い、正しい、間違いなど)に敏感です。

しかし、ラベルの意味は、行為の結果やラベル付けした人の身体的な力によって解釈されています。

ステージ1:罪と服従志向

「他人から罰せられるかどうか」が基準となる段階です。

このステージの子どもは、自分では良いか悪いかの判断ができないため、物理的な結果で行為の良し悪しを判断し、結果がもつ人間的な意味や価値を無視します。

例えば、親や先生など子どもにとって権威のある人から褒められるとその行動を繰り返し、怒られると控えようとします。

力がある人に盲従するということですが、道徳性の判断基準を身につける基礎となる段階です。

ステージ2:道具主義的相対主義

「自分の利益を守ることができるかどうか」が基準となる段階です。

このステージの子どもにとって正しい行動は、自分または自分と他人の両方に利益をもたらす行動です。

例えば、「君がおやつをくれるなら、僕のおやつも分けてあげる」、「僕が欲しいおもちゃをくれるなら、君が欲しいおもちゃを取ってきてあげる」という考え方で行動します。

つまり、自分がしたいことができるなら、たとえ他人の指示や言いつけが悪いことであっても、自分の利益を守るために従おうとします。

レベル2:慣習的水準(外的道徳)

慣習的水準とは、外的環境にあわせて人の内部に判断基準が作られていく段階です。

慣習的水準の子どもは、家庭や所属する集団の期待が価値のあるものとして認識し、それによってどのような結果が生じたとしても、期待に沿った行動をとろうとします。

期待に沿おうとするだけでなく、それを支持して正当化し、所属する集団内の他人などと自分を同一視するのも特徴です。

ステージ3:良い子

「他人から好かれるかどうか」が基準となる段階です。

このステージの子どもは、学校の先生など自分を知る周囲の大人などから「良い子」だと思われるように、他人を助けたり、他人に喜ばれたりする行動をとろうとします。

周囲の人から「褒められたい」「認められたい」と思って良い行動をし、「嫌われたくない」「馬鹿にされたくない」と思って悪い行動を控えるのです。

一方で、見知らぬ人に対しては勝手気ままに振る舞おうとする傾向があります。

ステージ4:法と秩序

「外部から与えられたルールに合致しているかどうか」が基準となる段階です。

このステージの子どもは、所属する集団におけるルールや秩序を維持することが正しいことだと考え、それらを頑なに守ろうとします。

社会生活を送る上でルールや秩序を守ることは大切なことですが、実情に合わなくなったルールでも、ルールだという理由で偏重してしまう傾向があります。

レベル3:慣習的水準以降

慣習的水準以降とは、個人の内部に判断基準が作られる段階です。

慣習的水準以降の子どもは、自分が所属または支持する集団や他人の判断基準とは独立した、道徳的価値と道徳原理を定義しようとします。

ステージ5:社会契約的遵法

「合理的に決められたルールかどうか」が判断基準となる段階です。

このステージの人は、他人や集団との間で合理的に決定されたルールを守ろうとし、自分の利益だけではなく、他人や集団の利益のことも考えて自分の行動を判断します。

ステージ6:普遍的な倫理的原理

「普遍的な両親に基づいているか」が基準となる段階です。

このステージに至った人は、現状に囚われることなく、人や物事のあるべき姿やルールの変更まで考えた上で行動を判断します。

少し専門的に言い換えると、論理的包括性・普遍性・一貫性に基づき、自ら選択した倫理的原理によって行動が判断されます。

モラルジレンマとは

モラルジレンマとは、相反する2つの命題について選択を迫られた場合に発生するジレンマ(葛藤)です。

モラルジレンマは、2つの選択肢のいずれかを選択することそのものが誤りであるような状況で生じます。

上で解説したハインツのジレンマがモラルジレンマの代表的な例ですが、ここではもう一つ紹介しておきます。

モラルジレンマの例:トロッコ

【設定】

  1. 線路を走っていたトロッコが制御不能になる
  2. このままでは、前方で線路工事作業中の作業員5人が轢かれて死亡する
  3. あなたは、線路の分岐路の傍にいる
  4. トロッコの進路を切り替えれば作業員5人は確実に助かる
  5. 分岐路を切り替えると、別の路線で線路工事作業中の作業員1人が確実に轢かれて死亡する
  6. あなたは分岐路を操作すべきか

※作業員5人は進路の切り替え以外では助けることができない

※法的責任は問われない

【質問】

作業員5人を助けるためにトロッコの進路を切り替える(別路線の作業員1人を見捨てる)行為は、道徳的に許されるか。

モラルジレンマの授業

モラルジレンマは、日本においては小学校の道徳教育で教材として使用されることがあります。

また、海外では「これから正義の話をしよう」という著書で有名なハーバード大学の教授サンデル,M.の授業で取り上げられるなど、教育現場で用いられる機会が増えています。

まとめ

コールバーグの道徳性発達理論とは

コールバーグが提唱した道徳性の発達についての理論

人の道徳性が生涯を通して発達すると考え、3つのレベルと6つの段階に分類

コールバーグの道徳性の発達段階
  • レベル1:慣習的水準以前(ステージ1:罪と服従、ステージ2:道具主義的相対主義)
  • レベル2:慣習的水準(ステージ3:良い子、ステージ4:法と秩序)
  • レベル3:慣習的水準以降(ステージ5:社会契約的遵法、ステージ6:普遍的な倫理的原理)