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記憶の二重貯蔵モデル(多重貯蔵モデル)における記憶の種類とは?

記憶(感覚記憶、短期記憶、ワーキングメモリ―、長期記憶)

記憶の二重貯蔵モデルにおける記憶の種類

アメリカ合衆国の心理学者アトキンソン,R.Lとシフリン,R.Mが提唱した記憶の二重貯蔵モデル(Multi Store Model of Memory)では、人の記憶が感覚記憶、短期記憶、長期記憶に分類されています。

1968年に発表された当初は記憶を短期記憶と長期記憶の2つに分類した「二重貯蔵モデル」でしたが、その後、感覚記憶の概念が追加されて「多重貯蔵モデル」となりました。

世界的には「多重貯蔵モデル」という名称が一般的ですが、日本では「二重貯蔵モデル」が定着しています。

記憶の二重貯蔵モデルでは、記憶が感覚記憶、短期記憶、長期記憶の順番で貯蔵されていくと説明されます。

また、感覚記憶と短期記憶の間には選択的注意、短期記憶と長期記憶の間にはリハーサルという処理過程があると考えられています。

ポイント
情報入力→【感覚記憶】→選択的注意→【短期記憶】→リハーサル→【長期記憶】

感覚記憶

感覚記憶とは、五感(聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚)で知覚した刺激(情報)の全てを、そのままの状態で、ごく短時間だけ保持する記憶です。

感覚記憶の保持期間は0.25秒~0.5秒程度で、選択的注意が向けられた情報だけが短期記憶に送られ、その他の膨大な情報は意識されないまま消失します。

ただし、聴覚刺激のみ、数秒間保持されることが分かっています。

選択的注意

選択的注意とは、感覚器官で知覚した外界の情報(刺激)のうち、一部の情報だけを選択して注意を向ける認知機能です。

引用:psycho-lo

例えば、多くの人が行き交う騒がしい繁華街においても、誰かと話している間はその人の声を聞き取ることができ、周囲の喧騒は気になりにくいものです。

このように、人には興味や関心が向いた情報だけを選択して注意を向ける機能が備わっており、記憶のプロセスにも影響を与えていると考えられています。

短期記憶

短期記憶とは、感覚記憶のうち注意を向けられて記銘(符号化)された情報です。

「注意が向いて意識された情報」と言い換えることもできます。

「短期」という名称のとおり、短期記憶の保持期間は15秒~30秒程度と短いのが特徴です。

また、アメリカ合衆国の心理学者ミラー,G.Aは7をマジックナンバーと名づけ、短期記憶の範囲を7±2だと考えました。

例えば、スマホや電話の番号を一時的に記憶するときを考えてみてください。

10桁程度の電話番号を記憶してダイヤルし、電話をかけ終わった頃には忘れているでしょう。

このように、短期間だけ記憶され、その後は忘れる記憶が短期記憶です。

MEMO
短期記憶の保持期間:15秒~30秒

短期記憶の記憶容量:7±2程度

ワーキングメモリ―

記憶の二重貯蔵モデルでは、短期記憶は単なる情報の貯蔵庫だと考えられていました。

しかし、イギリスの心理学者バドレー,Aらは、短期記憶が情報の一時的な貯蔵庫としてだけでなく、情報を保持しながら操作する作業場としても機能していると考えました。

その後も、短期記憶の構造や脳の関連部位を調べる研究が重ねられ、情報処理機能の側面が注目されるようになりました。

近年は、情報処理機能を含めて「作業をする記憶」という意味で「ワーキングメモリー(作業記憶、作動記憶)と呼ばれることが多くなっています。

なお、ワーキングメモリーを長期記憶の一部だと考える研究者もいますが、ここでは割愛しています。

長期記憶

長期記憶とは、半永久的かつ上限なく蓄積・保持される記憶です。

感覚器官で知覚された外界の情報が感覚記憶へ取り込まれ、選択的注意が向けられたものが短期記憶に送られて、さらに長期記憶へと送られて記憶(貯蔵)されるのです。

長期記憶は、宣言的記憶と非宣言的記憶(手続き記憶)に分類され、宣言的記憶はさらに意味記憶とエピソード記憶に分類されます。

MEMO
長期記憶 宣言的記憶 意味記憶
エピソード

記憶

非宣言的記憶

(手続き記憶)

宣言的記憶

宣言的記憶とは、言葉やイメージとして想起・表現することができる記憶です。

宣言的記憶には、意味記憶とエピソード記憶の2種類があります。

意味記憶

意味記憶とは、一般的知識、常識、歴史的事実など辞書的な記憶です。

内容のみがが記憶として残り、獲得時期などの情報は消失するのが特徴です。

例えば、「リンゴ」が意味するもの(果物の一種、大きさ、形、色など)に関する記憶などが意味記憶です。

エピソード記憶

エピソード記憶とは、個人的な経験(エピソード)に関する記憶です。

経験そのものの記憶と時間、空間的文脈、当時の気持ちや体調なども記憶として残ります。

例えば、3日前に誰とどこで何をしたかなどの記憶がエピソード記憶です。

非宣言的記憶

非宣言的記憶とは、言葉やイメージで表現することが難しい記憶です。

例えば、自転車の乗り方、車の運転方法、タイピング、リフティングのやり方、プライミング効果、古典的条件付けなど、身体が覚えていて、記憶にあるか否か意識されにくい記憶です

プライミング効果

プライミング効果とは、先行する刺激の処理が、後に続く刺激の処理を促進または抑制する効果です。

プライミング効果には、2つの種類があります。

名称 プライミングのレベル
知覚的プライミング 知覚レベル(無意識レベル)
意味的プライミング 意味レベル(意識レベル)
古典的条件づけ

古典的条件づけとは、無条件刺激と任意刺激を対呈示すること(同時に出すこと)により、無条件刺激によって起こる無条件反応を、元々は中立的であった任意刺激に対する条件反応として起こさせるようにする手続きです。

引用:psycho-lo

一度形成されると自動的に働き、長期にわたって保持されます。

記憶のプロセス

記憶とは、過去の経験を保持し、必要に応じて想起する過程です。

記憶のプロセスは、記銘、保持、想起の3段階に分類されています。

ポイント
記憶のプロセス:記銘、保持、想起

各段階について詳しく確認していきましょう。

記銘(符号化)

記銘(符号化)とは、感覚器官で知覚した刺激を意味情報に変換し、保持するまでの一連の過程です。

外界の刺激を記憶に取り込むことができるように変換する過程であることから、符号化とも呼ばれます。

感覚記憶として知覚した刺激のうち選択的注意を向けられた情報が記銘(符号化)されて短期記憶となり、短期記憶のうちリハーサルが行われた情報が長期記憶として保持されます。

意味情報に変換できない情報は記銘されにくい傾向があります。

例えば、無意味綴り(とへむ、rkwなど)や未収得の外国語は意味情報への変換が難しく、記銘されにくいものです。

リハーサル

リハーサルとは、短期記憶の忘却を防止したり、情報を短期記憶から長期記憶へ転送したりするために行う、記憶する情報の復唱です。

リハーサルには、維持型リハーサルと精緻化リハーサルの2種類があります。

名称 内容
維持型リハーサル 記憶を短期記憶内に留め、忘却を防ぐためのリハーサル
精緻化リハーサル 情報を短期記憶から長期記憶へ転送し、長期記憶として保持させるためのリハーサル

また、記憶する項目を視覚的にイメージするリハーサル(視覚的リハーサル)も想定されています。

保持(貯蔵)

保持(貯蔵)とは、記銘された情報が記憶として保たれることです。

知覚された刺激が意味情報に変換される際には既存の知識が用いられますが、既存の知識には個人差があるため、情報が付加または削除されて記銘されます。

そのため、記銘された情報が同じであっても、保持される情報に個人差が生じることがあります。

想起(検索)

想起(検索)とは、記憶として保持された情報を思い出す(呼び起こす)過程です。

記憶の想起のされ方には、再生、再認、再構成という3つのパターンがあります。

再生 保持された記憶が、保持されたまま呼び起こされること
再認 経験したことを「経験した」と認識できること
再構成 保持された複数の記憶が組み合わさって呼び起こされること

まとめ

記憶の種類(二重貯蔵モデル)
  • 感覚記憶:知覚した感覚刺激をそのままの状態でごく短時間保持する記憶
  • 短期記憶(ワーキングメモリー):感覚記憶のうち選択的注意を向けられて符号化された記憶(近年は、情報を保持しながら操作する作業場としても機能するとして「ワーキングメモリー」と呼ばれる)
  • 長期記憶:半永久的に蓄積・保持される記憶(宣言的記憶(エピソード記憶、意味記憶)、非宣言的記憶(手続き記憶))
記憶のプロセス
  • 記銘(符号化):知覚した刺激を意味情報に変換して保持するまでの過程
  • 保持(貯蔵):記銘情報が記憶として保持される過程
  • 想起(検索)保持された記憶を思い出す過程