心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

森田療法とは?入院・通院治療のやり方と効果は?あるがままの意味とは?

森田療法とは

森田療法とは、日本の精神科神経科医であった森田正馬(もりたまさたけ)によって開発された(森田)神経質に対する精神療法です。

森田は、自身が神経質に悩んだ経験と医師としての経験を踏まえて森田療法を開発し、(森田)神経質の治療に活用されました。

森田神経質

森田神経質とは、神経衰弱と呼ばれたものを森田が呼び変えたものです。

森田は、神経質は「神経の衰弱から生じる」という当時の定説を否定し、特殊な気質の人に生じる精神的なものだと考えて「神経質」と名づけました。

そして、神経質は病気ではないため治療しても治ることはなく、健康な一人の人として取り扱うことで回復すると主張しました。

森田神経質によって生じる主な症状は、以下のとおりとされています。

頭痛、癇癪、不眠、めまい、頭がぼんやりした感じ、耳鳴り、下痢、便秘、腰痛、性機能障害、心悸亢進、脈拍結帯、強迫観念など

森田療法の治療対象

森田療法の治療対象となるのは、以下のような病気です。

強迫症(強迫性障害)、社交不安症(社交不安障害)、パニック症(パニック障害)、広場恐怖症(広場恐怖)、全般不安症(全般性不安障害)、病気不安症(心気症)、身体症状症(身体表現性障害)など

いずれも神経症と呼ばれていたものです。

森田は、神経症に見られる様々な症状の背後には似たような性格傾向があることに着目して「神経質性格」と名づけ、この性格の人は「とらわれの機制」という心理的メカニズムが作用して症状が進むと考えました。

とらわれの機制には精神交互作用と思想の矛盾という2つがあるとされています。

精神交互作用とは、ある感覚に注意が向くと感覚が強くなり、感覚が強くなると注意もより強くなるという、感覚と注意の悪循環のことです。

例えば、動悸がすると強い不安を覚えて心臓に注意を向けると、それによって感覚が敏感になって不安が募り、さらに動悸が強くなるという悪循環に陥ります。

思想の矛盾とは、思想と現実が相反して矛盾が生じ、不可能を可能にしようという葛藤が生じた状態です。

例えば、あがり症の人は、人前でアタフタする自分を情けないと考えて、落ち着いていられるように努力することにより、かえって人前であがってしまうことがあります。

森田療法では、患者が「とらわれの機制」から抜け、「あるがまま」の心の状態を維持できるように援助を行います。

現在の治療対象

社交不安症、強迫症、全般不安症、パニック症・広場恐怖症、身体症状症、うつ病(長引く場合)、不登校、引きこもりなど

森田療法の「あるがまま」

森田療法に関する書籍を読むと、「あるがまま」という言葉をよく見かけます。

森田療法における「あるがまま」とは、「不安や症状を振り払おうとする行動や葛藤をなくし、そのままにしておく態度を養うこと」、また、「不安の背後にある、よりよく生きたいという生の欲望を建設的な行動として発揮すること」です。

森田の言葉を借りると、著書「神経衰弱と強迫観念の根治法」では、「治療の主眼については、言語では、いろいろと言い現わし方もあるけれども、詮じつめれば「あるがままでよい、あるがままよりほかに仕方がない、あるがままでなければならない」とかいうことになる」となります。

また、著書「対人恐怖の治し方」には「暑さでも対人恐怖でも、皆受け入れるとか任せるとかあるがままとかいったら、その一言で苦しくなる」とも記されています。

「あるがまま」という言葉は、これまで様々な解釈が加えられ、批判もされてきましたが、著書に登場する森田自身が考えた「あるがまま」を理解しておくと、森田療法に対する理解も深まります。

用語解説

森田自身は、神経質という病気は「素質(ヒポコンドリー性基調)」、「機会」、「病院(精神相互作用)」を掛け合わせたものと考えていました。

また、その後の森田療法の治療者は、素質(神経質性格)×病因(精神相互作用)×病因(思想の矛盾)としています。

各用語の意味は、以下のとおりです。

ヒポコンドリー性基調無駄に病気を気にしてしまう精神的な傾向
神経質性格弱力性と強力性を併せ持った性格

・弱力性:内向性、心配性、過敏症、心気症、受動性

・強力性:完全抑、優越欲求、自尊欲求、健康欲求、支配欲求

精神交互作用ある感覚への注意が強まるにつれてその感覚が強まり、感覚が強まると注意もまた強くなること
思想の矛盾思想と事実が相反して矛盾すること
生の欲望向上しよう、発展しようという欲望

森田療法のやり方(治療方法)と効果

森田療法の治療方法は、大きく入院治療と通院治療に分類されます。

森田療法の変遷

森田療法は、時代の変遷とともに治療方法が変化しています。

例えば、開発当時の森田療法では薬は使用されませんでしたが、現在は、薬を併用する治療が一般的です。

また、入院することが基本でしたが、現在は、重度または長期間にわたる人は入院治療となりますが、軽度または短期の人は通院による治療が中心になっています。

入院治療

病院などに入院し、40日から3ヶ月程度の期間をかけて、第1期「絶対臥褥期」、第2期「軽作業期」、第3期「作業期」、第4期「社会生活準備期」という4つの過程をこなします。

第1期

「絶対臥褥期」

患者を個室に隔離して、食事、洗面、トイレ以外の活動を極力させず、布団で寝て過ごさせる
第2期

「軽作業期」

個室を出て軽作業をさせ、主治医との個人面談や日記指導を始める

例:外気浴、部屋の片づけ、陶芸など一人で行う軽作業

第3期

「作業期」

睡眠時間以外は何らかの作業をして過ごさせる

例:清掃、散歩、行事参加、コミュニケーション、動物や植物の世話など

第4期

「社会生活準備期」

日常生活に戻るための準備を行う

例:1週間から1ヶ月程度、外出や外泊、施設から職場や学校に通うなど

なお、第3期については、適当に休憩をはさむよう指導する施設が増えています。

通院治療

家庭で生活しながら病院などに通って治療を受ける方法です。

通院治療の中心は医師などとの個人面談ですが、合わせて日記指導を行う施設もあります。

入院治療を開始するまでの準備期間として通院治療を行ったり、退院後に社会生活を軌道に乗せるために通院治療が活用されたりするケースもあります。

森田療法の効果

森田療法によって神経質が全治するまでの期間は、数十日程度から数年まで個人差が大きいとされています。

また、治療の結果、全治または軽快する患者が多いとされていますが、各用語の定義が一定でないことには留意しなければなりません。

公認心理師試験の出題歴

森田療法は、第1回公認心理師試験に出題されました(正答は赤字)。

問4 森田療法について、正しいものを1つ選べ。

①「精神交互作用」の過程を重視する。

②創始時に多く適用された対象は、統合失調症であった。

③あるがままに受け入れるアプローチは、「身調べ」に由来する。

④原法の絶対臥褥がじょく期では、読書は行ってもよいとされる。

⑤「ヒポコンドリー性基調」とは、注意が外界に向けられ他者に敏感である状態をいう。

引用:第1回公認心理師試験問題

公認心理師試験については、「公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?」で詳しく解説しています。

まとめ

森田療法とは

森田正馬が開発した神経質に対する精神療法

森田療法のやり方(治療方法)と効果
  • 入院治療:絶対臥褥期、軽作業期、作業期、社会生活準備期の4つの段階を40日~3ヶ月かけてこなす
  • 通院治療:社会生活を送りながら個人面談や日記指導を受ける

全治や軽快する人が多いが、各用語の定義は一定でない

公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問4

【参考】

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