心理学の世界にコロがりこもう!

新生児模倣とは?赤ちゃんが親の真似をする?真似しないと異常?

新生児模倣

新生児模倣とは

新生児模倣とは、アメリカ合衆国の心理学者メルツォフ.A.らが報告した、生まれたばかりの赤ちゃん(新生児)が、舌出し行動など他人の顔の動きを模倣する現象です。

新生児模倣が報告される以前は、極端な言い方をすれば「赤ちゃんは無力で無能な存在」と考えられており、模倣といえば「経験の蓄積によって学習される」というピアジェ.J.の理論が一般的でした。

そのため、新生児模倣が報告された当初は、新生児の有能性を示す現象として注目を集めました。

新生児模倣で見られる行動

新生児模倣は、人に限らずチンパンジーなどの赤ちゃんにも見られることや、舌を出す以外にも以下の現象が見られることが報告されています。

  • 舌を出す
  • 口をすぼめる
  • 口を開ける
  • 唇を突き出す

ただし、生後1ヶ月以降の乳児と比較すると限定的であり、生後2ヶ月頃には消失するという報告もあります。

like me理論(ライクミー理論)

like me理論(ライクミー理論)とは、メルツォフが提唱した、新生児模倣が心の理論など他人の理解に関する発達の基礎にあるという考え方です。

like me理論では、人は生まれつき自分の行動と他人の行動の間のつながりに対する感受性を持っていると考えます。

そして、その感受性を基礎として、自分の行為と行為の背後にある自分の心の状態の関係に気づき、さらに心の理論など他人の心を理解すると説明されています。

言い換えると、新生児模倣が他人の認識の基礎になるという考え方です。

新生児模倣に関する議論

新生児模倣については、主に「新生児模倣は模倣か否か」、「なぜ新生児が顔の動かし方を知っているか」、「消失するか否か」について議論が繰り返されています。

新生児模倣は模倣か否か

まず、新生児模倣が模倣か否かという議論があります。

メルツォフらは、13の独立した研究機関によって新生児模倣が報告されていると主張しています。

しかし、新生児模倣に批判的なアニスフィールド,M.は、新生児模倣の研究のメタ分析の結果から、統計や方法の問題や、新生児の反応のばらつきが大きいことを指摘し、新生児模倣のうち信頼に足るのは舌出し行動のみだと主張しました。

また、ジョーンズは、新生児の舌出し行動が模倣ではなく探索行動の一つだと指摘し、新生児に視覚刺激や聴覚刺激(舌出しに関係のない刺激)を与えると、舌出し行動が有意に増加すると報告しています。

アーロンらは、新生児期には特定の感覚様相による知覚はなされておらず、未分化なシステムで共感覚的に知覚されており(視覚や触覚などを明確に区別せず、刺激の特性全体をまとめて知覚する)、そうした知覚システムが「模倣らしい反応」を引き起こすと説明します。

つまり、外界からの刺激を知覚すると、共感覚的に結びついた身体運動が反射的に出力されることで、「模倣らしい反応」が起こるということです。

なぜ新生児が顔の動かし方を知っているか

新生児模倣を否定するのではなく、新生児が顔のパーツを動かすことができる理由に関する議論です。

AIM仮説とミラーニューロン仮説が知られています。

AIM仮説

AIM仮説とは、生まれつきAIMが備わっていることにより、新生児模倣が可能になるという仮説です。

AIM(Active Intermodal Mapping)は、他人の身体運動イメージと自分の身体運動イメージを鏡のように対応づけることができるメカニズムです。

つまり、AIMが備わっていることで、他人の動きを見るだけで、どこをどう動かせばその動きが実現できるかが分かり、新生児でも模倣が可能になると考えられているのです。

ミラーニューロン仮説

ミラーニューロン仮説とは、ミラーニューロンの機能が新生児模倣を可能にしているという仮説です。

ミラーニューロンとは、他人の行動を観察したときに、自分がその行動をしたかのように反応をする脳のニューロン(神経細胞)です。

通常、人が自らある行動をすると、対応する脳の特定部位のニューロンが活性化しますが、ミラーニューロンは、まるで鏡を見ているかのように、他人の行動を観察したときに活性化します。

他人の行動を見てミラーニューロンが活性化し、他人と同じ行動をする(模倣する)ことができるというのが、ミラーニューロン仮説による新生児模倣の説明です。

新生児模倣は新生児模倣は消失するか否か

メルツォフは、新生児模倣は消失するように見えるだけで、条件を整えてやりさえすれば消失しないと主張しています。

一方で、ジョーンズは、新生児模倣が生後数ヶ月で消失するという立場です。

新生児模倣の時期は、赤ちゃんがリーチング(目の前にある物に触れようとする行動)を始める時期と一致することから、舌出し行動が消失するのは他の探索行動が発達するためだと主張しています。

また、新生児模倣が原始反射の一種であり、大脳皮質などの発達によって乳児期のうちに消失すると考える研究者もいます。

まとめ

新生児模倣

新生児が、舌出し行動など他人の顔の動きを模倣する現象

新生児模倣に関する議論
  • 新生児模倣は模倣か否か
  • なぜ新生児が顔の動かし方を知っているか
  • 新生児模倣は消失するか否か

【参考】

  • 赤ちゃんの不思議|開一夫著|岩波書店