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物の永続性とは?遊びで判断可能?ピアジェは何歳で理解すると主張した?

物の永続性 赤ちゃん 遊び

物の永続性(対象の永続性)とは

物の永続性(対象の永続性)とは、視界から消えた人や物などの対象が存在し続けているという概念であり、そのことを認識する能力のことです。

英語では「object permanence」と表記され、日本語では「物の永続性」または「対象の永続性」と訳されます。

例えば、見える場所にぬいぐるみを置き、箱をかぶせて見えなくしたとします。

このとき、ぬいぐるみが箱の中で存在し続けていることや、それを認識する能力が物の継続性です。

MEMO
  1. ぬいぐるみを見える場所に置く
  2. ぬいぐるみに箱をかぶせて隠す
  • ぬいぐるみが存在し続けていると認識する=物の永続性が獲得されている
  • ぬいぐるみが消えてなくなったと認識する=物の永続性が獲得されていない

物の永続性は、先天的に備わっているわけではなく、後天的に獲得するものであることが分かっています。

発達心理学においては、乳幼児が、目の前にあった対象を隠して見えなくしたときに、対象が見えなくなる前と同じ場所に存在し続けていることを理解しているかどうかを指す概念として使用されます。

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物の永続性(対象の永続性)の実験と何歳で理解するか

物の永続性が獲得される時期については、心理学者のピアジェ,J.が実験を行っており、ベイラージョン,R.とグラバー,M.が批判をしています。

ピアジェの実験

ピアジェは、乳児期の赤ちゃんを被験者として、以下の手順で物の永続性に関する実験を行いました。

  1. 赤ちゃんの見える位置にぬいぐるみを置く
  2. 赤ちゃんにぬいぐるみを見せる
  3. ぬいぐるみに布をかぶせ、赤ちゃんの視界からぬいぐるみを隠す
  4. 赤ちゃんが布を取ってぬいぐるみを見つけるかどうかを観察する

ピアジェは、赤ちゃんが布を取ってぬいぐるみを見つけることができれば、物の永続性が成立していると考えました。

そして、実験の結果から、物の永続性が成立するのは生後8ヶ月頃からであると主張しました。

ピアジェが提唱した認知発達理論では、初期段階の感覚運動的段階(生後0歳~2歳頃)に物の永続性が獲得されると説明されています。

MEMO

認知発達理論:ピアジェが提唱した、人は発達段階に応じた認知の枠組み(シェマ)を有しており、発達を「より高次のシェマを獲得すること」だと考える理論

  • 感覚運動的段階(感覚運動期):0歳~2歳頃
  • 前操作的思考段階(前操作期):2歳~7,8歳
  • 操作的思考段階(操作期):7,8歳~

ピアジェの認知発達理論については、「ピアジェの発生的認識論とは?認知発達段階説における発達段階の内容は?」で詳しく解説しています。

ベイラージョンとグラバーの実験

ピアジェの実験は、「目に見えない対象が存在しているという認識=対象の永続性」と、「対象に手を伸ばすという行動」は別物であると指摘され、対象に手を伸ばす行動を獲得する前から、対象の永続性が成立しているのではないかと考えられるようになりました。

ベイラージョンとグラバーは、ウサギのスクリーン透過実験を行い、物の永続性がピアジェの主張より早く成立することを明らかにしています。

  1. 背の高いウサギの人形、背の低いウサギの人形、2体の人形を隠せるだけの大きさの紙のスクリーンを準備する
  2. 紙のスクリーンの後ろを、2体のウサギに端から端まで何度も通過させる(ウサギの姿はスクリーンを通過する前と後しか見えない)
  3. スクリーンの中央を切り取り、背の低いウサギは隠れるが、背の高いウサギは姿が見える高さにする
  4. 背の高いウサギについて、姿が見えないようにスクリーンの後ろを通過させる

実験では、「背の高いウサギが背丈より低いスクリーンの後ろを通過するときに姿が見えないという状況」を目の当たりにした赤ちゃんが、驚いた表情をして状況を注視するという結果が得られました。

ベイラージョンとグラバーは、実験結果に基づいて、赤ちゃんが「ウサギの人形がスクリーンに隠されて見えなくなっても、スクリーンの後ろに存在し続けていることを認識している」と主張しました。

つまり、「背丈より低いスクリーンの後ろを通過する背の高いウサギが見えない状況に赤ちゃんが驚く=スクリーンの後ろを背の高いウサギが進んでいることを赤ちゃんが認識している」と考えたのです。

そして、被験者であった赤ちゃんの月齢から、生後5ヶ月頃には物の永続性が成立するとしました。

乳児期の物の永続性は限定的

現在、ベイラージョンとグラバーの実験により、物の永続性は生後5ヶ月頃に獲得されると考えられています。

ただし、乳児期の赤ちゃんの物の永続性の理解はごく限られたものであるとされています。

例えば、赤ちゃんの近くに置かれたおもちゃを布で隠しても、赤ちゃんが自力でおもちゃを発見することはほぼありません。

赤ちゃんの記憶力が低いことや、記憶力の低さに伴う物を探すという行動の困難さによるものと考えられています。

つまり、おもちゃが布で隠された直後は「布の後ろにおもちゃが存在する」と認識できても、探し始めるまで記憶を保持していられない(短期記憶が未熟)ということです。

記憶については、「記憶の二重貯蔵モデル(多重貯蔵モデル)における記憶の種類とは?」で詳しく解説しています。

物の永続性の獲得時期は個人差や文化差がある

物の永続性は後天的に獲得するものであり、獲得時期には個人差や文化差があります。

例えば、遺伝、赤ちゃんの気質や性格、家族の関わり方、外部刺激の多寡などによって異なります。

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物の永続性(対象の永続性)と発達

物の永続性が成立すると、親(対象)が見えなくなると探すようになり、人見知りや後追いの原因の一つになります。

また、物の永続性の成立は、赤ちゃんの中で「表象機能(知覚したイメージを記憶に保持し、刺激がなくても心のうちに描き出す作用)」が育まれている証です。

表象機能が育まれることにより、目の前にない物事や行動などを意図的に構成、操作、変換できるようになり、より高度な思考や行動が可能になっていきます。

表象機能の獲得は、具体的に知覚した物事を後になって自分なりに模倣して表現する「象徴機能」を獲得する基礎となっています。

象徴機能が獲得されると、頭の中でイメージを作り上げて実際に行動するみたて遊びやごっこ遊びができるようになり、それらの遊びが数の概念や文字の理解、言語能力の発達などに影響していきます。

このように、物の永続性は人の発達における基礎の一つとなっているのです。

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物の永続性(対象の永続性)と遊び

物の永続性が成立しているかどうかは、遊びで確認することができます。

物の永続性と「いないいないばあ」

「いないいないばあ」とは、赤ちゃんと目が合った状態で「いないいない」と言いながら両手で顔を覆い、「ばあ」と言いながら両手を広げておどけた表情を赤ちゃんに見せるという、昔ながらの赤ちゃんとの遊びです。

赤ちゃんが「いないいないばあ」で笑うようになるのは物の継続性が成立した後です。

赤ちゃんが「いないいないばあ」で笑うのは、相手の顔が手で隠されたときに「手の向こうには顔があり、すぐまた見えるはず」と予想し、実際に顔が見えることで「思ったとおりだ」と喜んでいると考えられています。

つまり、物の永続性が成立して「手の向こうには見えないけれど顔がある」と認識しているからこそ、顔が見えたときに喜ぶのです。

物の永続性が成立する前の赤ちゃんにいないいないばあをしても、無反応または驚いた表情を見せるだけです。

物の永続性とその他の遊び

物の永続性が成立すると遊びの幅が一気に広がり、「いないいないばあ」以外にも「どっち遊び」や「どこだ遊び」ができるようになります。

どっち遊び

どっち遊びとは、赤ちゃんの目の前でおもちゃを握って見えないようにし、おもちゃがどっちの手に入っているかを当てさせるという遊びです。

物の永続性が成立していれば、おもちゃを握った方の手を見つめます。

記憶力が向上して探索行動が可能になると、手に近づいたり触れたりするようになります。

どこだ遊び

どこだ遊びとは、見せたおもちゃを近くに隠し、どこにあるか探させる遊びです。

どこだ遊びができるようになるには、物の永続性だけでなく、記憶力の向上と探索行動の開始、移動手段の獲得など複数の条件を満たす必要があります。

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まとめ

物の永続性とは

視界から消えた対象が存在し続けているという概念またはそれを認識する能力

物の永続性(対象の永続性)の実験と何歳で理解するか
  • ピアジェは生後8ヶ月頃と主張
  • ベイラージョンとグラバーは生後5ヶ月頃と主張
物の永続性(対象の永続性)と発達

物の永続性の成立は、表象機能や象徴機能などその後の発達に影響を及ぼす

物の永続性(対象の永続性)と遊び
  • 物の永続性の成立は、いないいないばあで確認することができる
  • 物の永続性の獲得によって遊びの幅が広がる