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サイコロジカル・ファーストエイドとは?PFAの支援の目的と支援内容は?

サイコロジカル・ファーストエイド

サイコロジカル・ファーストエイドとは

サイコロジカル・ファーストエイドとは、「苦しんでいる人、助けが必要かもしれない人に、同じ人間として行う、人道的、支持的な対応(心理的応急処置(サイコロジカルファーストエイド:PFA)より引用」です。

または、「災害やテロの直後に子ども、思春期の人、大人、家族に対して行うことのできる効果の知られた心理的支援の方法を、必要な部分だけ取り出して使えるように構成したもの(サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版より引用)」とも定義されます。

英語では「Psychological First Aid」と表記し、日本語では「心理的応急処置」と訳されるかサイコロジカル・ファーストエイドとカタカナ表記されます。

また、英語の頭文字を並べてPFAと呼ばれることもあります。

サイコロジカル・ファーストエイドの目的

サイコロジカル・ファーストエイドの目的は、地震やテロなどトラウマになる出来事によって生じる初期の心理的苦痛の軽減と、短期的・長期的な適応機能と対処行動を促すことです。

被災者や被害者が苦しめられるのは身体・心理・行動など広範な初期反応であることが多く、初期反応には強い苦痛を生じさせて適応的な対処行動を阻害することがあるという観点に基づいて、初期反応の苦しみを和らげて回復を支援します。

被災者や被害者の全てが重度の精神的問題を抱えたり、長期的に苦しみ続けたりするという観点には立っておらず、あくまで初期反応の緩和とレジリエンスを促進するための支援です。

サイコロジカル・ファーストエイドの原理と手法は、以下の規格を満たしたものとなります。

①トラウマのリスクと回復に関する研究結果に合致する

②災害現場への適用が可能で、実用性がある

③生涯発達の各段階に適切である

④文化的な配慮がなされており、柔軟に用いることができる

引用:サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版

サイコロジカル・ファーストエイドのマニュアル

サイコロジカル・ファーストエイドのマニュアルには、WHO(世界保健機関)とアメリカ国立PTSDセンター・アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワークが作成したものの2種類あります。

作成者(翻訳機関)日本語版の名称
WHO

(国立精神・神経医療研究センターなど)

心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)フィールド・ガイド
アメリカ国立PTSDセンター

アメリカ国立トラウマティックストレス・ネットワーク

(兵庫県こころのケアセンター)

サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き

心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)フィールド・ガイド

心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)フィールド・ガイドとは、WHOが作成したPFAのマニュアルです。

災害、紛争、犯罪などに巻き込まれた人々を心理的に支援することによって、さらなる心理的被害を防ぐとともに、各種援助のためのコミュニケーションの促進を目的としています。

PFAを提供する人には、医療関係者だけでなく、防災、教育、治安、行政、産業に従事する人、NGOやNPO、ボランティア関係者などが想定されており、状況を踏まえて各職種が連携して支援に当たることを重視した内容となっています。

サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き

サイコロジカル・ファーストエイドとは、アメリカ国立PTSDセンターとアメリカ国立トラウマティックストレス・ネットワークが作成したマニュアルです。

災害の被災者や犯罪の被害者などを対象とするところはWHO版と同じですが、WHO版よりもトラウマティックな出来事を体験した後の心理的反応やその支援を行う上での注意点の解説が多くなっています。

つまり、WHO版よりも精神保健の専門家に向けた内容となっているのです。

サイコロジカル・ファーストエイドの内容

サイコロジカル・ファーストエイドの具体的な内容を確認していきます。

支援の対象

災害や犯罪などトラウマを生じさせるような出来事に遭い、苦しんでいる人です。

年齢や性別、職業、社会的地位などに関わらず対象となりますが、危機的な出来事を体験した全ての人が対象になるわけではありません。

なぜなら、危機的な出来事によって受ける影響やレジリエンスは一人ひとり異なり、支援を求めていないまたは必要としない人もいるからです。

支援を必要とする人には手を差し伸べ、必要としない人には押し付けないことが大切です。

また、PFAでは対処できず、より専門的な支援を要する場合には、専門家の支援につなげることになります。

例えば、命の危険があるほどの重傷を負った人に対しては、サイコロジカル・ファーストエイドよりも一刻も早く救急医療を受けることを優先すべきです。

支援の方法

WHO版のマニュアルには、以下のとおり記載されています。

  • 実際に役立つケアや支援を提供する、ただし押し付けない
  • ニーズや心配事を確認する
  • 生きていく上での基本的ニーズ(食料、水、情報など)を満たす手助けをする
  • 話を聞く、ただし話すことを無理強いしない
  • 安心させ、心を落ち着けるように手助けする
  • その人が情報やサービス、社会的支援を得るための手助けをする
  • それ以上の危害を受けないように守る

引用:心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)フィールド・ガイド

サイコロジカル・ファーストエイドは、原則として、専門家でないと支援者になれないわけではありません。

また、カウンセリングや心理的デブリーフィングとは異なり、必ずしも危機的な出来事の話し合いや分析などを行わず、気持ちや反応を無理に話させることもありません。

MEMO

心理的デブリーフィング:ストレス源となる出来事における認知・考え・情緒的反応を、手短かかつ系統的に語るように求め、感情の表出を促すもの

支援の時期

原則として、直前に危機的な出来事に遭った人に対してサイコロジカル・ファーストエイドを行います。

ただし、被災や被害の状況によっては出来事の直後に支援を開始することができず、数日から数週間後に初めて支援を行うこともあります。

支援の場所

サイコロジカル・ファーストエイドを行う場所については指定がありません。

支援者と被支援者の安全が確保された場所であれば、どこであっても支援することができます。

例えば、指定避難所や指定緊急避難場所、学校、救援物資の配給所、事故現場、保健センター、警察署などが支援の場所となり得ます。

ただし、支援の基本は会話であり、被支援者のプライバシーを守ることができる場所で行うことが求められます。

特に、性犯罪の被害を受けた人については、プライバシーの保護が何より重要となります。

効果

サイコロジカル・ファーストエイドには、被災者や被害者の長期的な回復を促進する以下のような要素が含まれていると考えられています。

  • 安心し、人びととつながっており、落ち着いて希望が持てると感じる
  • 社会的・身体的・情緒的支援を受けられる
  • 個人としてもコミュニティとしても、自らの力で自分を助けられると感じる

引用:心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド)フィールド・ガイド

公認心理師試験の出題歴

サイコロジカル・ファーストエイドは、第1回公認心理師試験で出題されました(正答は赤字)。

問1 サイコロジカル・ファーストエイドを活用できる場面として、最も適切なものを1つ選べ。

①インテーク面接

②予定手術前の面接

③心理検査の実施場面

④事故現場での被害者の救援

⑤スクールカウンセリングの定期面接

引用:第1回公認心理師試験問題

まとめ

サイコロジカル・ファーストエイドとは

危機的な出来事に遭って苦しんだり助けを求めたりしている人に対して行う初期の支援

サイコロジカル・ファーストエイドの内容
  • 対象:危機的な出来事に遭って苦しんでいる人
  • 方法:本文記載のとおり
  • 時間:原則として、危機的な出来事に遭った直後
  • 場所:安全やプライバシーが確保された場所
  • 効果:長期的な回復を促す
公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問1

公認心理師試験については、「公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?」で詳しく解説しています。

【参考】