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生理的早産とは?意味と理由、ポルトマンの生理的早産説の内容は?

生理的早産

生理的早産とは

生理的早産とは、人の赤ちゃんが、他の離巣性の哺乳類と比較して未熟な状態で生まれてくることを表した心理学用語です。

スイスの生物学者ポルトマン,A.は、人が生まれたばかりの頃から自立した生活を送るには約21ヶ月の胎内生活が必要であるが、実際は約10ヶ月という短い期間で生まれてくるとして、人の赤ちゃんが生まれた状態を生理的早産と表現しました。

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ポルトマンの生理的早産説

ポルトマンは、哺乳類の動物について、赤ちゃんの状態から就巣性と離巣性に分類しています。

就巣性の動物

就巣性の動物とは、生まれたばかりの頃は自力で動くことができず、自立して巣立つまでに母親などの養育や保護を必要とする動物です。

就巣性の動物は、妊娠期間が1ヶ月前後と短く、1度にたくさんの赤ちゃんが生まれます。

また、生まれたばかりの頃は成体とは似ても似つかない状態で、生後数日経ってようやく成体と似た特徴が現れるという特徴があります。

つまり、就巣性の動物の赤ちゃんは、胎内で十分に発育しないまま出生しているのです。

例えば、ネズミ、ウサギ、リスなどが就巣性の動物に分類されます。

離巣性の動物

離巣性の動物とは、生まれたばかりの頃から自力で動くことができる程度に運動機能が発達している動物です。

離巣性の動物は、就巣性の動物と比較すると妊娠期間が長く、1度に生まれる赤ちゃんは1体だけです。

また、大きさこそ成体より小さいものの、生まれたばかりの赤ちゃんの頃から種特有の特徴が見られます。

つまり、離巣性の動物の赤ちゃんは、胎内で十分に発育した状態で出生してくるのです。

例えば、チンパンジー、オランウータン、ウマ、キリン、ゾウ、ウシなどが離巣性の動物に分類されます。

チンパンジーやオランウータンなどは人と近い霊長類ですが、生まれたばかりの頃から歩いたり母親に抱きついたりすることができます。

霊長類が離巣性に分類されていることから、人も離巣性の動物に分類されます。

妊娠期間が長く、原則として、1度の出産で出生するのは1人の赤ちゃんだけであることも離巣性の動物の特徴と合致しています。

しかし、人の赤ちゃんは、生まれたばかりの頃には自力で歩いたり母親に抱きついたりすることはできません。

授乳も原始反射に頼り、コミュニケーション手段である言葉も学習しておらず、母親などの養育・保護がないと生きていくことができません。

また、頭が大きく手足や胴体は短いという成人とはまるで異なる外見をしているなど、就巣性の動物に類似した特徴も有しています。

人の赤ちゃんが、自力で歩いたり抱きついたりできるようになり、言葉を学習して言葉を介したコミュニケーションが可能になるのは、生まれてから実に1年程度が経過してからです。

ポルトマンは、こうした人の特徴を踏まえ、「人の赤ちゃんは、離巣性の動物が本来生まれる期間よりも、1年近く早く生まれてきている」として、「生理的早産」と表現したのです。

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人が生理的早産で生まれる理由

ポルトマンは、人の赤ちゃんが生理的早産で生まれる理由は、赤ちゃんと母親の身体の構造にあると考えました。

他の哺乳類より産道が広がりにくい

人は、進化の過程で直立二足歩行を獲得するために骨盤の形を大きく変形させており、その結果、四足歩行の動物と比較すると、出産時に産道が広がりにくくなっています。

そのため、胎内で赤ちゃんの身体が発育しすぎると、産道を通り抜けられなくなるのです。

他の哺乳類より頭が大きい

人は、他の哺乳類と比較すると脳が著しく発達し、頭部が大きくなっています。

そのため、人の赤ちゃんが他の離巣性の動物と同程度に発育するまで胎内で過ごすと、通常分娩で生まれることが困難になります。

ポルトマンは、人間の胎児が十分に成熟するために必要な期間を21ヶ月間だとしています。

妊娠期間が約10ヶ月間なので、21ヶ月間というと生後11ヶ月頃(妊娠期間10ヶ月+出生後11ヶ月)です。

つまり、離巣性の動物が本来生まれる期間まで待った場合、生後11ヶ月頃の赤ちゃんと同じ状態まで胎内で過ごすことになり、それだけ頭も大きくなります。

新生児期と生後11ヶ月の赤ちゃんの平均的な頭位を比較すると、イメージしやすくなります。

月齢頭位
新生児男子:33.5cm

女子:33.1cm

生後11ヶ月男子:46.2cm

女子:45.2cm

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生理的早産と赤ちゃんの能力

ポルトマンが生理的早産を提唱した後、人の赤ちゃんが様々な能力を持って生まれることを実証する研究結果がいくつも発表され、近年は、生理的早産が使用される機会は少なくなっています。

乳児期の赤ちゃんに備わっている能力のうち、原始反射と知覚(五感)について確認しておきましょう。

原始反射

原始反射とは、脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射です。

原始反射は、大脳皮質の成熟に伴って自然消失し、自分の意思で行われる行動が機能するようになります。

主な原始反射は、以下のとおりです。

名称反射の内容
哺乳反射乳首を探して吸い付き、母乳を飲む反射
モロー反射仰向けの赤ちゃんの頭を持ち上げてから下ろすと、両腕を外側に開いてから何かにしがみつく動きを見せる反射
非対称性緊張性頸反射仰向けの赤ちゃんの首を左右いずれかに向けると、向いた方の手足が伸び、反対側の手足が曲がる反射
手掌把握反射指などで赤ちゃんの手の平を刺激すると、手の平を握る反射
ギャラン反射うつ伏せの赤ちゃんの背中を、指先で肩甲骨から背骨へと刺激すると、刺激した方へ身体を曲げる反射

原始反射は、赤ちゃんの生命維持や神経系の発達に関連しており、大脳皮質の成熟によって消失し、赤ちゃんが自分の意思で行う行動が機能するようになります。

原始反射については、「原始反射とは?原始反射の種類と出現時期・消失時期の一覧」で詳しく解説しています。

知覚(五感)の発達

人の赤ちゃんの知覚に関する研究は無数にあり、生まれたばかりの頃から優れた知覚を有していることが明らかにされています。

聴覚

乳児は、雑音よりも音声、他人の声よりも母親の声を好みます。

生後1ヶ月頃の赤ちゃんがマザリーズを選好するという研究結果もあります。

また、「bとp」、「lとr」などの音韻を弁別できる聴覚が備わっているものの、生活環境で必要のない音韻の弁別能力は時間の経過とともに消失することも分かっています。

MEMO
マザリーズ:乳幼児に対して話しかけるときに自然に出る、高めのピッチ、ゆっくりな速度、抑揚の大きさを特徴とする言葉

触覚

触覚は、新生児期から発達しています。

例えば、表面が滑らかなおしゃぶりとブツブツのおしゃぶりを準備し、その一方を新生児にしゃぶらせた上で、2つのおしゃぶりの絵を見せるという実験が行われています。

この実験では、新生児の多くが直前にしゃぶったおしゃぶりの絵を見るという結果が得られ、新生児が口で対象の感触を得ていることや、対象の感触と見た目を結合できることが明らかにされました。

引用:胎児と新生児の五感(聴覚、味覚、触覚、視覚、嗅覚)|psycho-lo

嗅覚

生まれたばかりの頃から、母親の母乳と他人の母乳の匂いを区別できることを示す研究結果があります。

視覚

赤ちゃんの視力は、新生児期で0.01、生後6ヶ月で0.1程度であることが分かっています。

また、対象の色、形、動き、奥行きも近くしていることや、養育者とその他の人の顔を区別することもできます。

味覚

赤ちゃんの表情や舌の動きから、新生児期から味覚が機能していることが分かります。

味覚に関しては、ショ糖入りの甘味液、グルタミン酸入りのうま味液、苦味液、酸味液などを口に入れて赤ちゃんの反応を見る実験が行われています。

実験の結果、甘味駅や旨味液では快反応を示す一方で、苦味液や酸味液では不快反応を示すことが明らかにされています。

赤ちゃんの五感の発達については、「胎児と新生児の五感(聴覚、味覚、触覚、視覚、嗅覚)一覧」で詳しく解説しています。

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まとめ

生理的早産とは
人の赤ちゃんが、他の離巣性の動物より未熟な状態で生まれてくることを表現した心理学用語
ポルトマンの生理的早産説
  • 哺乳類の動物を就巣性と離巣性に分類
  • 人は離巣性だが就巣性の特徴も併せ持つ特殊なタイプ
人が生理的早産で生まれる理由
  • 他の哺乳類より産道が広がりにくい
  • 他の哺乳類より頭が大きい
生理的早産と赤ちゃんの能力
  • 赤ちゃんは無能な状態ではない
  • 生まれつき原始反射が備わり、近くも発達している