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ピアジェの発生的認識論とは?認知発達段階説における発達段階の内容は?

ピアジェの認知発達理論 認知発達段階

ピアジェの認知発達理論とは

ピアジェの認知発達理論とは、スイスの発達心理学者ピアジェ,J.が提唱した、認知発達に関する理論です。

心理学における認知とは、人が外界の対象を知覚し、知的に理解、判断、思考する機能やその過程を意味します。

ピアジェの認知発達理論では、人は発達段階に応じたシェマ(外界を理解する枠組み)を持ち、発達とはより高次のシェマを獲得することだと説明されます。

そして、高次のシェマを獲得すると、認知が質的に変化して以前の認知に戻ることができなくなると考えられています。

つまり、人の認知発達は一定の方向へ段階的に進んでいくと考えられているのです。

また、認知発達の進行については、同化、調節、均衡化という概念を用いて説明されています。

同化

同化とは、外界の情報を自分が持つシェマに合わせて理解することです。

言い換えると「自分が持つシェマを変えずに外界の情報を取り入れること」が同化です。

例えば、「写真や動画を見ることができ、メールも送ることができる手帳上の物体」を渡されたときに、自分が持つ「スマホ」というシェマを使い、渡された物をスマホだと認知します。

調節

調節とは、自分が持つシェマでは対応できない情報に直面した場合に、情報に合うように自分のシェマを変化させることです。

情報と自分のシェマの間に矛盾が生じると、その情報を理解できなくなるため、シェマの方を情報に合わせて作り変えるのです。

例えば、スマホを見たことがなく「スマホ」というシェマを持たない子どもの場合、そのままのシェマでは対応しきれません。

そこで、「スマホ」というシェマを取り入れ、シェマを作り変えることになります。

均衡化

均衡化とは、外界の情報と自分が持つシェマのズレや矛盾を解消し、両者の間の調和やバランスを取ろうとする心の働きです。

つまり、同化と調節を繰り返し、新しいシェマの追加や誤ったシェマの修正を行うことにより、自分のシェマを高次に変化させ、認知を質的に変化させていく過程です。

ピアジェの認知発達段階

ピアジェの認知発達理論では、人の発達が感覚運動的段階と表象的思考段階に分類されます。

また、表象的思考段階は前操作的思考段階と操作的思考段階に分類され、後者はさらに具体的操作期と形式的操作期に分類されています。

なお、前操作的思考段階は、1つの段階とされることが多いですが、象徴的思考と直感的思考の段階に分類されることがあります。

発達段階 年齢

感覚運動的段階

(感覚運動期)

出生~2歳
表象的思考段階 前操作的思考段階

(前操作期)

象徴的思考 2~4歳
直感的思考 4~7,8歳
操作的思考段階 具体的操作期 7,8~11,12歳
形式的操作期 12~

感覚運動的段階(感覚運動期)

感覚運動的段階(感覚運動期)とは、出生してから生後2歳頃までの、感覚や運動によって外界を理解して適応しようとする段階です。

この時期の乳幼児は、物をしゃぶる、触る、他人と触れ合うなどの体験をすることで外界を理解し、行動を修正しながらシェマ(適応行動のパターン)を獲得していきます。

感覚運動期には、対象の永続性と表象機能が獲得されます。

対象の永続性

対象の永続性とは、目の前にあるものが遮蔽物などで視覚的に隠されても、そこに存在し続けていることを認識する能力です。

生まれたばかりの赤ちゃんは、人や物が視界から消えると、その存在が消えてなくなったと認識します。

例えば、対象の永続性を獲得していない赤ちゃんは、目の前からママがいなくなると、ママの存在が消えてしまったと感じ、不安や恐怖を募らせて大泣きします。

感覚運動期にシェマを広げていくことで対象の永続性を獲得すると、ママがいなくなっても「存在が消えたわけではなく、見える範囲にいないだけ」だと理解できるようになります。

表象機能

表象機能とは、知覚したイメージを保持して、目の前にないものを思い浮かべる機能です。

表象機能を獲得すると、目の前にない人や物、過去の出来事や行為などを意図的に構成、操作、変換できるようになります。

つまり、人や物、出来事や行為をイメージとして想起して、それに基づいて行動することができるようになるのです。

表象機能を獲得した幼児は、過去の経験を頭の中にイメージし、カップを持って水を飲む「ふり」ができるようになります。

前操作的思考段階(前操作期)

前操作的思考段階(前操作期)とは、生後2歳から生後7、8歳頃までの、頭の中で論理操作を用いた思考ができるようになるまでの段階です。

前操作期は、象徴的思考段階と、直感的思考段階に分類されます。

象徴的思考段階 生後2歳から生後4歳頃までの、イメージや言語を使って思考を始める時期
直感的思考段階 生後4歳から生後7、8歳までの、外界を概念化して理解できるようになる時期

前操作期には、象徴機能が獲得されます。

また、自己中心性(中心化)、アニミズム的思考・人工論、保存概念の未発達という特徴が見られます。

象徴機能の獲得

象徴機能とは、現実にない物事を別の対象に置き換えて表現する機能です。

子どもは、象徴的思考段階で象徴機能を獲得し、カップに入った泥水をジュースに見立てる「見立て遊び」や、おままごとなどの「ごっこ遊び」ができるようになります。

自己中心性(中心化)

自己中心性(中心化)とは、自分の観点(知覚情報)で全ての物事を理解・判断する傾向のことです。

象徴的思考段階の子どもは、自分と他人の区別が明確でなく、自分の観点からでしか物事を理解できないため、その思考は自己中心的です。

直感的思考段階に入っても、自己中心性は残ります。

例えば、自分にとっての「右」が、正面に座っている人にとって「左」であることは理解できません。

また、相手の立場で行動する、自分がしたことを反省する、自分の考え方に意識を向けるなども、この時期の子どもには難しいことです。

アニミズム的思考・人工論・実念論

アニミズム的思考 未分化な思考の表れとして、全ての物に心や生命があると考える
人工論 世の中の全てのものは人が作ったと考える
実念論 夢で見たことや自分が考えたことが実在すると考える

保存概念の未発達

保存概念とは、対象の見た目や状態が変化しても、性質や量は変化しない」という概念です。

例えば、カップに入れた水を細長いカップに移し替えた場合、水の量は変化していませんが、前操作期の子どもは、細長いカップの方が量が多いと判断します。

また、2列に並べたおはじきを見せた後、1列分おはじきの間隔を広げて「どちらの列のおはじきが多いか。」と質問すると、子どもは「間隔が広い列の方が多い。」と答えます。

子どもの目の前で水を移し替えたり、おはじきの間隔を広げたりしても、保存性が未発達な子どもは、視覚刺激に惑わされて「変化した。」と判断するのです。

具体的操作期

具体的操作期とは、生後7、8歳から生後11、12歳頃までの、具体的な物事に対する論理的思考(具体的操作)が可能になる時期です。

具体的操作期の子どもは、前操作期の特徴であった自己中心性(中心化)、アニミズム的思考・人工論・実念論から脱し、保存概念を獲得します。

脱中心化(脱自己中心性)

脱中心化とは、自分の観点(知覚情報)で全ての物事を理解・判断する状態から脱し、他人の観点から物事を理解・判断できるようになることです。

保存概念の獲得

具体的操作期に入ると、保存概念を獲得し、前操作期のように見た目だけで物事を判断しにくくなります。

例えば、カップから細長いカップに水を移し替えても水の量が同じであることや、おはじきの間隔を広げても数が同じであることを理解します。

前操作期では考えることが出来なかった比較や論理を理解できるようになります。

例えば「黒のかばんは白のかばんより軽い。赤のかばんは黒のかばんより重い。それでは一番軽いかばんは何色のかばんですか?」など、数字が関係する比較も理解できます。

可逆性の獲得

可逆性とは、対象に変化を加えた後、操作を取り消して元の状態を再現することができることです。

具体的操作期の子どもは、具体的な事柄について可逆性を獲得します。

例えば、積み重ねた積み木を箱の中に片づける場合、崩してから箱に入れていくのではなく、積み木を一つひとつ積み下ろしていく手順をイメージできるようになります。

論理的思考の発達

具体的で日常的な事柄について、論理的に考えて結論づけられるようになります。

例えば、物を実際に動かして考える、数える、量・重さ・長さを把握する、比喩、論理、比較を理解することなどが可能になります。

その結果、様々な概念を組み合わせて物事を考えられるになります。

しかし、非現実的な前提に立った推論や抽象的な推論は、まだ困難です。

例えば、具体的な数字を使った計算は可能ですが、x、a、bなどを使用した計算を理解することは難しい段階です。

形式的操作期

形式的操作期とは、生後12歳以降の、形式的操作(抽象的な思考)が可能になる段階です。

形式的操作期の子どもは、抽象的な思考、仮説演繹的な思考、抽象的な記号操作などが可能になり、大人と同じ思考を獲得していきます。

例えば、仮説に基づいて推論して結論を導き出す、物事のメカニズムを系統的に調べる、複数の物事の関係性を理解するなどが可能になります。

まとめ

ピアジェの認知発達理論とは

ピアジェ.Jが提唱した、認知発達に関する理論

人の認知発達を高次のシェマ(外界を理解する枠組み)の獲得だと捉え、一定の方向へ段階的に進んでいくものと説明

  • 同化:外界の情報を自分のシェマに合わせて理解すること
  • 調節:自分のシェマでは対応できない情報に合わせてシェマを変化させること
  • 均衡化:外界の情報と自分のシェマのズレや矛盾を解消し、両者のバランスを取ろうとすること
ピアジェの認知発達段階
  • 感覚運動的段階:出生~
  • 前操作的思考段階:2歳~
  • 操作的思考段階(具体的操作期):7,8歳~
  • 操作的思考段階(形式的操作期):11,12歳~