原始反射

原始反射 赤ちゃん

原始反射とは

原始反射とは、脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射です。

英語では「primitive reflex」と表記し、日本語では「原始反射」と訳されています。

モロー反射、手掌把握反射、ギャラン反射、歩行反射、哺乳反射などは一般的にも知られていますが、他にも多数の反射が確認されています。

原始反射は、胎児期に獲得されて出生後すぐに見られますが、大脳皮質が成熟するにつれて反応が抑制され、赤ちゃんの意思による運動が機能するようになります。

ポイント
原始反射:胎児期に獲得して出生→大脳皮質の成熟による反応抑制→自発的な運動が機能
MEMO
反射中枢:反射に関連する神経経路のうち、感覚器(視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚など外界の刺激を知覚する器官)からの興奮を折り返し実行器(筋肉など外界からの刺激に反応して活動するときに働く期間)へ伝達する部位

ポルトマンの生理的早産説と原始反射

スイスの生物学者ポルトマン,A.は、人の赤ちゃんが生まれた状態を「生理的早産」と表現しました。

生理的早産とは、人の赤ちゃんが、他の離巣性の哺乳類と比較して未熟な状態で生まれてくることを表した心理学用語です。

引用:psycho-lo

人以外の離巣性の哺乳類は、自力で動くことができるだけの運動機能を獲得した上で生まれ、生まれた直後から歩いたり母親にしがみついたりすることができます。

一方で、人の赤ちゃんは、生まれたばかりの頃には視覚が極めて未熟で、自分の意思で母乳やミルクを飲むこともできず、手足を動かすこともままなりません。

生活全般を養育者にお世話してもらわないと生きていけない状態で生まれてくるのです。

ポルトマンは、人の赤ちゃんの無力で未熟な状態を「生理的早産」と表現したのです。

しかし、その後の研究で、赤ちゃんが様々な能力を持って生まれることが次々に明らかになり、原始反射も、赤ちゃんが持って生まれる能力の一つとされています。

生まれつき原始反射が備わっている理由

人の赤ちゃんに生まれつき原始反射が備わっている理由は、「生命維持」と「発達促進」の2つあると考えられています。

生命維持

原始反射は、身体機能などが未熟な状態で生まれてくる赤ちゃんが、外界に適応して生きていくのを支援する役割を果たすと考えられています。

例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳やミルクの飲み方を学習していません。

しかし、哺乳反射が備わっていることにより、反射によって乳首を探して吸い付き、分泌された母乳を飲むことができます。

また、把握反射やモロー反射などは、赤ちゃんと養育者との間の相互関係を促して、養育者が赤ちゃんを第一に考えて行動することを促す作用があると考えられています。

つまり、養育者に関心を払ってもらうことにより、より安心かつ安全に過ごせる環境を確保することができるのです。

発達促進

原始反射による反応が繰り返し起こることにより、赤ちゃんの自発的な運動が刺激されると考えられています。

例えば、生まれたばかりの赤ちゃんは、哺乳反射に頼って母乳やミルクを飲んでいますが、反射による反応が繰り返し起こるうちに飲み方を学習し、徐々に自力で飲むことができるようになります。

また、手掌把握反射によって手の平に触れた物を握る反応を繰り返すうちに、自力で物を握ることを覚えます。

原始反射の反応が統合(卒業)されて、より高次の脳(大脳皮質)によって反射が抑制されると、赤ちゃんが自分の意思で身体を動かすようになるのです。

指標としての原始反射

原始反射は、標準的な出現時期と消失時期、反射によって見られる反応が明らかになっています。

そのため、神経学的な障害などを発見するための指標として活用されます。

例えば、乳幼児健診の検査項目に原始反射が含まれており、母子健康手帳(母子手帳)にも確認項目が設けられています。

乳幼児健診において、医師が原始反射について確認するポイントは、以下のとおりです。

  • 原始反射が起こるべき月齢で「起こらない」
  • 原始反射が消失すべき月齢で「消失せず残る」
  • 原始反射の起こり方に「左右差」が常にある
  • 一度は「消失した反射が再び出現する」

主な原始反射の一覧

主な原始反射は、以下のとおりです。

反射中枢:脳幹
名称 出現時期 消失時期
引き起こし反射 出生時 生後1~2ヶ月
哺乳反射 探索反射 出生時 生後3~5ヶ月
捕捉反射 出生時 生後3~5ヶ月
吸啜反射 出生時 生後5~6ヶ月
嚥下反射 出生時 生後5~6ヶ月
押出し反射 出生時 生後5~6ヶ月
モロー反射 出生時 生後3~4ヶ月
非対称性緊張性頸反射 出生時 生後4~6ヶ月
対称性緊張性頸反射 生後6~7ヶ月 生後10~11ヶ月
反射中枢:脊髄
名称 出現時期 消失時期
手掌把握反射 出生時 生後4~5ヶ月
プランター反射 出生時 生後9~10ヶ月
バビンスキー反射 出生時 生後1~2歳
ギャラン反射 出生時 生後4~6ヶ月
自立歩行反射 出生時 生後3~4ヶ月

ほとんどの原始反射は胎児期に獲得されますが、詳細な獲得時期には諸説あるため、「出現時期=原始反射による赤ちゃんの反応を確認できる時期」として表示しています。

また、上記一覧表には主な原始反射のみ掲載しており、未掲載の原始反射も複数存在します。

引き起こし反射

引き起こし反射とは、仰向けに寝た赤ちゃんの両腕を持って引き起こすと、頭が持ち上がって両手両足や身体が曲がり、起き上がろうとする反射です。

ポイント

【引き起こし反射のやり方】

  1. 赤ちゃんを仰向けに寝かせる
  2. 両腕を持ち、ゆっくりと引き起こす
  3. 赤ちゃんの頭が持ち上がり、両手両足が曲がる

哺乳反射

哺乳反射とは、赤ちゃんが母乳やミルクを飲むために備わっている反射です。

哺乳反射には、探索反射、捕捉反射、吸啜反射、嚥下反射の4種類があり、この順番で起こります。

探索反射

探索反射とは、口やその周りが刺激されると、口を尖らせて顔を上下左右に動かす反射です。

母乳やミルクを飲む前提として、乳首を探すために必要な反射です。

捕捉反射

捕捉反射とは、唇やその周りに触れた物を口にくわえる反射です。

探索反射で見つけた乳首をくわえ、母乳やミルクを飲む準備をするための反射です。

吸啜反射

吸啜反射とは、口にくわえた物に吸い付く反射です。

捕捉反射で口にくわえた乳首を吸啜反射によって力強く吸い、母乳やミルクを分泌させます。

嚥下反射

嚥下反射とは、口の中にある液体を飲み込む反射です。

分泌された母乳やミルクは、嚥下反射によって飲み込まれます。

ポイント
哺乳反射:探索反射→捕捉反射→吸啜反射→嚥下反射の順番で起こり、乳首を探して口にくわえ、母乳やミルクを分泌させて飲み込むという一連の動作が行われる

押出し反射

押出し反射とは、舌に触れた固形物を口の外に押し出す反射です。

赤ちゃんは、生まれてから数ヶ月は母乳とミルクしか飲むことができません。

固形物は喉に詰まるおそれがあり、うまく飲み込めても十分に消化されないおそれがあります。

そのため、赤ちゃんの身体に害を及ぼす可能性がある固形物を体内に侵入させないよう、押出し反射が備わっているのです。

しかし、押出し反射が残った状態では離乳食も押し出されてしまうため、通常は、この反射が消失するのを待って離乳食を開始します。

離乳食を開始する標準的な時期は生後5~6ヶ月頃ですが、これは押出し反射の消失時期と重なっています。

モロー反射

モロー反射とは、外からの大きな刺激を受けたときに、両腕を大きく広げてからしがみつくように自分の身体に引き寄せる反射です。

生まれたばかりの赤ちゃんは、周囲の環境が危険か否かを判断することができません。

そのため、危険が及ぶおそれがある刺激を知覚したときに、反射的に身を守るための仕組みとしてモロー反射が備わっていると考えられています。

原始反射を起こす刺激には、以下のようなものがあります。

  • 大きな音
  • 明るい光
  • 大きな衝撃
  • 急な姿勢の変化
  • バランスを崩す
ポイント

【モロー反射のやり方】

  1. 赤ちゃんを仰向けに寝かせる
  2. 頭部を持ち上げる
  3. 持ち上げた頭部を急に下ろす
  4. 赤ちゃんが両手を広げ、しがみつくようなしぐさを見せる

非対称性緊張性頸反射

非対称性緊張性頸反射とは、赤ちゃんの頭部を左右いずれかに向けたときに、顔が向いた方の手足がまっすぐ伸び、反対側の手足が曲がる反射です。

非対称性緊張性頸反射は、頭部と手足が連動して動く反応が起こる反射であり、反応が繰り返し起こることで目と手の協調性や距離感覚が育まれます。

名前は聞き慣れないかもしれませんが、赤ちゃんのお世話をしていると頻繁に目にする反射です。

ポイント

【非対称性緊張性頸反射のやり方】

  1. 赤ちゃんを仰向けに寝かせる
  2. 赤ちゃんの頭部を左右いずれかに向ける
  3. 顔が向いた方の手足が伸び、反対側の手足が曲がる

対称性緊張性頸反射

対称性緊張性頸反射とは、うつ伏せに寝た赤ちゃんの頭を持ち上げると両腕が伸びて両足が曲がり、頭を下げると両腕が曲がって両足が伸びる反射です。

他の原始反射と異なり、発達する過程で出現する反射で、ズリバイやハイハイの獲得に影響を及ぼします。

ポイント

【対称性緊張性頸反射のやり方】

  1. 赤ちゃんをうつ伏せに寝かせる
  2. 赤ちゃんの頭を持ち上げさせる→両腕が伸びて両腕が曲がる
  3. 赤ちゃんの頭を下げさせる→両腕が曲がって両足が伸びる

手掌把握反射

手掌把握反射とは、手の平に何かが触れると、触れた物を握ろうとする反射です。

物を握ることを獲得するために必要な反射であり、赤ちゃんが自らの意思で物を握れるようになるには、手掌把握反射が統合されなくてはなりません。

ポイント

【手掌把握反射のやり方】

  1. 赤ちゃんの手の平を開く
  2. 手の平を指など細長いものでこするように撫でる
  3. 赤ちゃんが手の平を握る

プランター反射

プランター反射とは、赤ちゃんの足の内側に触れると、触れた物を掴もうとするようにつま先が曲がるまたは内側に巻いたようになる反射です。

足底把握反射とも呼ばれる反射で、プランター反射とバビンスキー反射をまとめて足底反射といいます。

ポイント

【プランター反射のやり方】

  1. 細長い物で赤ちゃんの足の内側を撫でる
  2. 触れた物を掴むようにつま先が曲がる、または、内側に巻いたようになる

バビンスキー反射

バビンスキー反射とは、赤ちゃんの足の裏を踵(かかと)からつま先に向けて触れると、親指が反って他の4指が開く反射です。

原始反射の中では比較的長期にわたって見られる反射です。

先が少し尖ったもので強めに刺激しないと、反応が現れないことがあります。

ポイント

【バビンスキー反射のやり方】

  1. 赤ちゃんの足の裏を踵から爪先にかけて触れる
  2. 親指が反り、他の4指が開く

ギャラン反射

ギャラン反射とは、赤ちゃんの腰周辺の脊椎を撫でると、撫でた方のお尻が持ち上がり、脊柱が曲がる反射です。

赤ちゃんが産道を通過するときに腰周辺の脊椎が刺激されてギャラン反射が起こることで、お尻が動いて産道を進みやすくなると考えられています。

なお、左右の脊椎を交互に撫でると赤ちゃんがお尻を振っているように見えるため、見てみたいと希望する親が多い原始反射です。

ポイント

【ギャラン反射のやり方】

  1. 赤ちゃんをうつ伏せに寝かせる
  2. 赤ちゃんの腰周辺の脊椎の左右いずれかを撫でる
  3. 撫でた方のお尻が持ち上がり、脊柱が曲がる

自立歩行反射

自立歩行反射とは、赤ちゃんの足の裏が平坦な地面に触れると、歩行するかのように両足を交互に踏み出す反射です。

一見、生後3ヶ月から4ヶ月頃に消失するように見えますが、両足を水中に入れると、生後1歳前後まで自立歩行反射が見られます。

つまり、赤ちゃんの体重が筋力の発達を上回るペースで増加した結果、陸上では反応が消失したように見えるだけで実際は残っており、負荷が軽い水中でだけ確認できるようになるのです。

ポイント

【自立歩行反射のやり方】

  1. 赤ちゃんの背中側から両脇を抱え、平坦な地面に両足をついて立たせる
  2. 赤ちゃんの身体を前に傾ける
  3. 赤ちゃんが左右の足を交互に出す

まとめ

原始反射とは
脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射
指標としての原始反射
原始反射は、標準的な出現時期と消失時期、反射による反応がはっきりしており、神経学的な障害を発見する指標として乳幼児健診などで活用
主な原始反射の一覧

脳幹が反射中枢:引き起こし反射、哺乳反射、押出し反射、モロー反射、非対称性緊張性頸反射、対称性緊張性頸反射など

脊髄が反射中枢:手掌把握反射、プランター反射、バビンスキー反射、ギャラン反射、自立歩行反射など

【参考】

  • 人間脳を育てる 動きの発達&原始反射の成長|灰谷孝著|花風社