心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

心理的離乳とは?ホリングワースの理論と青年期・第二反抗期の内容は?

心理的離乳 精神的分離 ホリングワース

心理的離乳とは

心理的離乳とは、青年期の子どもが、心理的・精神的な依存対象であった親から離れて自立する過程を表す概念です。

英語では「psychological-weaning」と表記され、日本語では心理的離乳と訳されています。

青年期における子どもの精神的自立が、乳児の母乳やミルクからの離脱である離乳と似ているため、心理的「離乳」と呼ばれています。

ホリングワースと心理的離乳

心理的離乳は、アメリカ合衆国の心理学者ホリングワース,L.S.が使用した心理学用語で、その後、青年期の心理を表す言葉の一つとして定着しました。

ホリングワースは、月経中の女性の作業パフォーマンスや女性の知能に関する研究によって女性の活躍が制限される社会を批判したり、知能が高い子どもに関する研究を行ったりしたことで知られています。

ホリングワースが心理的離乳という単語を初めて使用したのは、1928年に出版された「青年期」という書籍です。

この書籍の中で、ホリングワースは、青年期を「子どもが家族の監督から離れて自立しようとする心理的離乳の時期」だと表現しています。

青年期とは

青年期とは、第2次性徴に伴って身体が急激に変化するとともに、自我意識の高まりや内省的傾向などの心理的な変化も顕著になる時期です。

青年期の期間については諸説ありますが、アメリカ合衆国の発達心理学者エリクソン,E.H.の心理社会的発達理論(ライフサイクル理論)では中学生から大学生の時期、年齢でいうと12歳から22歳頃とされています。

「思春期」とも呼ばれる青年期の前半には性的・身体的に成熟し、その後、自我意識などの心理的な変化が顕著になって社会的な意識も発達していきます。

エリクソンの社会的発達理論(ライフサイクル理論)と青年期については、「エリクソンの発達段階と発達課題とは?ライフサイクル理論を分かりやすく解説」で詳しく解説しています。

第2次反抗期

心理的離乳が起こる時期(青年期)は、子どもが第2次反抗期を迎える時期です。

第2次反抗期とは、青年期の子どもが精神的に成熟する過程において、自我意識の高まりに伴って他人の指示に抵抗したり反抗したりする時期です。

それまでと同様に干渉・保護しようとする親に対する自己主張や反抗が顕著になり、親としては苦労することになります。

しかし、お互いに支え合いながら生きていると親子が認識して受容しあうことで、子どもの心理的離乳が達成されていく、子どもにとっても、親子関係にとっても大切な時期です。

第2次反抗期を乗り越えることができず親子関係が悪化したままになったり、親への依存から抜け出せなかったりすると、社会に出て自立した生活を営むことが難しくなる傾向があります。

MEMO

第1次反抗期:生後2~3歳頃に自我意識が発達するのに伴い、他人の指示を拒否したり反抗したりする時期

心理的離乳の過程

日本の心理学者である落合良行らは、実証的研究に基づいて心理的離乳に至る過程を分析しています。

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心理的離乳への5段階過程仮説

心理的離乳への5段階過程仮説とは、親子関係から心理的離乳の過程を分析しようとする、落合が提唱した仮説です。

この仮説では、子供の成長に伴って親子関係が順番に変化すると考えられています。

親子関係 内容
抱え込む親との関係 子を手の届く範囲に置いて、子を抱え込み養う親との関係
守る親との関係 子を目の届く範囲に置いて、子を危険から守る親との関係
成長を念じる親との関係 目の届かない遠くへ行ってしまった子を信じ、成長を念じる親との関係
手を切る親との関係 子との心理的距離を最も大きくとる、子と手を切る親との関係
対等な親子関係 子は子でありながら親になり、親は親でありながら子になる関係

「対等な親子関係の段階」が、心理的離乳が達成された段階だと考えられています。

子どもが親からの精神的分離を果たしただけではなく、親と心理的に対等な関係になった状態であり、子どもが親を支えることも想定されています。

心理的離乳の過程に関する研究

落合らは、青年期における親子関係の発達的変化の解明を目的として、以下の方法で研究を行いました。

  1. 大学生に対して、これまでの親子関係を記述させる(20答法形式の文章完成法)
  2. 上記仮説の根拠となった文献や事例研究に見られる親子関係を抜き出す
  3. 収集した親子関係に関する情報を類似性などの観点から86項目に整理する
  4. 分析

分析の対象となったのは、中学生が152人(平均年齢13.80歳)、高校生が171人(16.27歳)、大学生196人(20.38歳)、大学院生21人(25.19歳)の合計540人です。

落合らは、分析結果に基づいて、青年期の親子関係が「心理的離乳への5段階過程仮説」の順番で心理的離乳へ向かって発達的に変化していくと結論づけています。

また、中学生の親子関係では「守る親との関係」、「抱え込む親との関係」、「成長を念じる親との関係」が多く、大学生や大学院生の親子関係では「対等な親子関係」が多いことから、高校生から大学生のはじめの頃が転換点だと指摘しています。

まとめ

心理的離乳
青年が、心理的・精神的に依存していた親から離れて自立する過程を表す概念
心理的離乳の過程
  • 子供の成長に伴って親子関係が順番に変化する
  • 転換点は高校生から大学生のはじめの頃

【参考】

  • 親子関係の変化からみた心理的離乳への過程の分析|落合良行、佐藤有耕|教育心理学研究
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