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レディネスとは?ゲゼルの成熟優位説と発達の最近接領域との関係は?

レディネス

レディネスとは

レディネス(readiness)とは、教育や学習による行動変容が効果的に行われるための、心身の準備態勢を意味する概念です。

発達理論の一つ「成熟論(成熟優位説)」において、アメリカ合衆国の児童心理学者ゲゼル,A.L.が提唱しました。

ゲゼルは、学習による行動変容が効果的に行われるための条件として、神経生理学的な心身の成熟が準備された状態という意味でレディネスを使用しました。

しかし現在は、学習による行動変容が効果的に行われるために必要なあらゆる発達(子どもの興味関心、疑問、知識や経験など)が準備されている状態という意味で使用されています。

成熟優位説とレディネス

レディネスは、成熟優位説(成熟論)と学習優位説(学習理論)の対立において、成熟優位説を主張するゲゼルが学習優位説を批判するために提唱した概念です。

成熟優位説(成熟論)

成熟優位説とは、当時、発達理論として有力であった学習優位説を批判し、人の発達を成熟という生物学的な観点からとらえようとする理論です。

そして、成熟優位説の立場で発達を研究した代表的な人物がゲゼルです。

MEMO
学習優位説:人の発達を学習によって行動が変化することだと捉え、発達は学習などの環境からの働きかけで進むという理論

ゲゼルは、乳幼児の行動を縦断的に記録することにより、乳幼児の発達の規準を示すとともに、5つの発達原理を明らかにしています。

発達方向の原理 行動の発達は、一定の順序だった様式で進む

例:発達は身体の中心から周辺部、頭部から尾部へ進む

反対相互交差の原理 行動の発達は、弛緩・緊張、成熟・未熟などの相反する場面が交互に現れ、相互に関連しあいながら徐々に高次の形態に至る

例:「足を曲げる」と「足を伸ばす」という反対の動きが統合されて歩行となる

機能非対称の原理 環境への適応や生存維持を効率的に確保するために、身体の左右の機能が非対称に発達する

例:非対称性緊張性頸反射(仰向けに寝た赤ちゃんが顔を向けた方の手足が伸び、反対の手足が曲がる原始反射)

個別化成熟の原理 心身の成熟は遺伝子に規定されているが、発達は未分化な全体から分化した個別機能へ進み、生物学的な成熟が分化した個別機能を系列的・順序的に決定する
自己調整的動揺の原理 行動の発達は常に不安定で不均衡だが、動揺があるからこそ最終的に安定した自己調整が可能となる

ゲゼルの実験

ゲゼルは、一卵性双生児を被験者とした双生児統制法(階段上り)の実験的研究を行い、その結果に基づいて、一定の成熟(レディネス)がなければ教育・学習は効果が薄いと主張しました。

双生児統制法の実験的研究の方法は、以下のとおりです。

  1. 一卵性双生児(遺伝的に同一な女児Tと女児C)を被験者とする
  2. 生後46週目から、Tに対して階段上りの訓練を行う(1日10分間、生後52週まで週6日6週間)
  3. 生後53週目から、Cに対して階段上りの訓練を行う(1日10分間、生後55数まで週6日2週間)
  4. 一卵性双生児2人の階段上りの所要時間を測定する

この実験では、Tの訓練終了後(Cの訓練開始前)とCの訓練開始時にはTの方が早く階段を上ることができましたが、Cの訓練終了後には2人の差はほとんどなくなるという結果が得られました。

当時は、学習優位説の立場では、教育や学習は早く行うほど良いと考えられていましたが、知覚や運動機能の発達においてはレディネスができる前の教育・学習は効果が薄いことが明らかになったのです。

ゲゼルは、この実験結果から、「発達においては、子どもの中にレディネス(心身の準備態勢)ができあがるのを待った上で、教育や学習など環境からの働きかけを行うことが望ましい。」と主張しました。

レディネスへの批判

しかし、ゲゼルの実験は、身体的な成熟と密接に関わる階段上りという運動課題が取り上げられており、また、対象も乳児のみでした。

そのため、実験結果から得られた結論が、運動機能以外または乳児以降の訓練に一般化できるか否かは不明です。

その他、実験については以下のような批判がされています。

  • 階段上りに必要な運動は訓練以外の日常活動の中にも含まれているため、正の学習転移が起こったのではないか
  • 学習の適正時を決める方法が曖昧である
  • 成熟の水準は加齢により単調に増加すると仮定されている(一定年齢を過ぎると学習困難になる行動があるが、無視されている)

また、学習の前提条件とされるレディネスが学習によって形成されることがある点についても、説明されていません。

このように、レディネスについては、実験方法も含めて多くの批判がなされました。

特に、ある時期を過ぎる学習困難になる行動の存在が無視されていることへの批判は強く、レディネスの概念の中に学習可能性と学習適時性を取り入れる必要性が指摘されるようになりました。

発達の最近接領域とレディネス

旧ソ連の心理学者ヴィゴツキー,L.S.が発達の最近接領域という概念を主張した後、レディネスの概念には変化が見られます。

発達の最近接領域とは、子どもが「一人でできる知的活動領域(現時点での発達水準)」と、「他人のサポートがあればできる知的活動領域(潜在的な発達可能水準)」のずれの範囲のことです。

引用:psycho-lo

ヴィゴツキーは、発達の最近接領域のずれの解消には、周囲の環境や援助が影響を及ぼすと主張しました。

発達の最近接領域が提唱されて以降、思考や認知などの高次の精神機能の学習においては、レディネスを待って学習するのではなく、レディネスを作り出して促進する学習が重視されています。

まとめ

レディネスとは

教育や学習による行動変容が効果的に行われるための心と身体の準備態勢

成熟優位説とレディネス

成熟優位説:人の発達を成熟という生物学的な観点からとらえようとする理論

  • 効率的な発達には、レディネス(心身の準備態勢)を待った上で、教育や学習などを行うことが望ましいと説明される。
  • 学習可能時期が限定された行動の存在が無視されていることへの批判から、学習可能性と学習適時性をレディネスの概念へ取り入れる必要性が指摘される。
発達の最近接領域とレディネス

発達の最近接領域:子どもが「一人でできること」と、「他人のサポートがあればできること」のずれの範囲

発達の最近接領域の概念が提唱されて以降、高次の精神機能の学習では、レディネスを待つのではなく、レディネスを作り出して促進する学習が重視される