目次
立ち直り反射(立ち直り反応)とは
立ち直り反射(立ち直り反応)とは、赤ちゃんの姿勢が崩れたときに、頭や身体を元の位置に戻して直立姿勢を保とうとする姿勢反射です。
立ち直り反射によって起こる反応を立ち直り反応といいます。
英語では「righting reflex」と表記し、日本語では立ち直り反射と訳されます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、姿勢が崩れると重力の影響を受けて頭から地面に衝突します。
しかし、立ち直り反射を獲得した後は、姿勢が崩れると、反射的に重力に抗って直立姿勢を保とうとするようになります。
立ち直り反射による反応によって崩れた姿勢を立て直せるようになると、転倒や衝突で頭などに怪我をするリスクが下がります。
また、立ち直り反射は、寝返りなどの動きにも関与し、赤ちゃんの発達において重要な役割を果たすことが分かっています。
乳幼児健診(6ヶ月健診、10ヶ月健診)では、検査項目の一つに立ち直り反射が含まれています。
姿勢反射とは
姿勢反射とは、身体の姿勢やバランスを調整したり保持したりする反射です。
体幹や手足の関節の屈伸状態を知覚することでその位置や動きを知覚し、身体の位置、姿勢、運動のバランスを保つ役割を果たします。
姿勢反射は、出生後に大脳皮質や中脳が発達するにつれて獲得されます。
その多くは、一度獲得されると消失せずに残り、姿勢の調節や保持を担い続けます。
姿勢反射には、立ち直り反射以外にも以下のような反射が確認されています。
姿勢反射の名称 | 反応 |
ランドウ反射 | うつ伏せに赤ちゃんのお腹を持って水平に抱っこすると、頭を持ち上げて体幹と足を伸ばす |
パラシュート反射 | 立位またはうつ伏せの赤ちゃんを抱き上げ、頭を下にして急に床へ近づけると、両手を広げる |
ステッピング反射 | 立たせた赤ちゃんの身体を左右に倒すと倒された方向と逆の足を交差させ、前後に倒すと片足を倒された方向に出す |
ホッピング反射 | 立たせた赤ちゃんの身体を前後左右に倒そうとすると、足を出して身体を支える |
姿勢反射と原始反射の違い
立ち直り反射を含む姿勢反射と混同されやすいのが、原始反射です。
原始反射とは、脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射です。
原始反射には、生まれたばかりの赤ちゃんが胎外生活に適応して生き抜くための支援をしたり、発達を促進したりする機能があると考えられています。
通常は、胎児のうちに獲得されて出生直後から出現し、一定の時期に自然消滅します。
姿勢反射と原始反射の違いは、出現時期と消失するか否かです。
出現時期 | 消失の有無 | |
姿勢反射 | 出生後 | 消失しない |
原始反射 | 出生時 | 消失する |
※いずれも例外があります。
立ち直り反射(反応)の出現時期と消失時期
立ち直り反射の中枢は中脳で、中脳の発達に伴って反射が獲得されていきます。
中脳とは、姿勢、眼球運動、光に対する反射などを司る脳の一部です。
立ち直り反射による姿勢の保持に関与するものとしては、頸筋群の感覚受容器(筋紡錘)、前庭器官(耳石、半規管)、感覚器官としての目などがあり、刺激された部位によって反応と出現時期が異なります。
名称 | 出現時期 | 知覚部位 |
視覚性立ち直り反射 | 仰向け:3ヶ月頃 お座り:6ヶ月頃 | 目 |
迷路性立ち直り反射 | 仰向け:3~5ヶ月 うつ伏せ:3~5ヶ月 お座り:6ヶ月頃 | 前庭器官(耳石、半規管) |
頸の立ち直り反射 | 4~6ヶ月 | 頸筋群の感覚受容器(筋紡錘) |
身体の立ち直り反射 | 4~6ヶ月 | 身体の感覚受容器 |
立ち直り反射の消失時期
立ち直り反射は、種類によって消失するものと生涯残るものがあります。
名称 | 消失時期 |
視覚性立ち直り反射 | 消失しない |
迷路性立ち直り反射 | 5歳頃(消失しないこともある) |
頸の立ち直り反射 | 5歳頃 |
身体の立ち直り反射 | 5歳頃 |
姿勢反射の多くは一度獲得されると消失せず残りますが、視覚性以外の立ち直り反射は例外的に消失します。
立ち直り反射(立ち直り反応)の異常
立ち直り反射の異常は、大きく「出現しない」と「消失すべき反射が消失しない」の2つに分類されます。
立ち直り反射が出現しない場合
立ち直り反射が出現しない場合、反射を司る中脳の異常を疑います。
立ち直り反射が出現しないと、成長するにつれて身体のバランスの悪さによる事故のリスクが高くなり、日常生活に支障が及びます。
消失すべき立ち直り反射が消失しない場合
視覚性立ち直り反射以外は、通常は生後5歳頃に消失します。
生後5歳を過ぎてもこれらの立ち直り反射が消失しない場合も、中脳の異常を疑います。
まとめ
赤ちゃんが姿勢を崩した場合に、頭や身体を元の位置に戻して直立姿勢を保とうとする姿勢反射
- 視覚性:出現時期(仰向けが3ヶ月頃、お座りが6ヶ月頃)、消失時期(消失しない)
- 迷路性:出現時期(仰向けが3~5ヶ月、うつ伏せが3~5ヶ月、お座りが6ヶ月頃)、消失時期(生後5歳頃)
- 頸:出現時期(4~6ヶ月)、消失時期(生後5歳頃)
- 身体:出現時期(4~6ヶ月)、消失時期(生後5歳頃)
- 出現しない:反射中枢である中脳の異常の可能性
- 消失すべき反射(視覚性以外)が残る:同上
コメントを残す
コメントを投稿するにはログインしてください。