心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

セリエのストレス理論とは?汎適応症候群(GAS)の特徴と3つの時期は?

セリエ ストレス理論

セリエのストレス理論とは

セリエのストレス理論とは、カナダ人のセリエ,H.が提唱したストレスに関する理論です。

セリエは、外部環境からの刺激によって生じる歪みに対する非特異的な反応を「ストレス(ストレス反応)」と呼び、ストレスを引き起こす外部環境からの刺激をストレッサーと定義しています。

また、ストレス反応は、ストレッサーにさらされた生体が、有害な刺激に適応しようとする生化学的反応だと考えました。

MEMO

ストレス:物体に力が加えられたときに生じる「歪み(ひずみ)」を意味する工学(物理学)用語。医学分野ではキャノン,W.B.が、生理学分野ではセリエが初めてストレスという言葉を使用したとされる。

ストレッサーの種類

  • 物理的ストレッサー:寒冷、騒音、光など
  • 化学的ストレッサー:タバコ、アルコール、大気汚染など
  • 生物学的ストレッサー:細菌、ウイルス、カビ、花粉など
  • 精神的ストレッサー:怒り、不安、悲しみなど
  • 社会的ストレッサー:家庭や職場の環境など

セリエと汎適応症候群

セリエは、マウスを使用して新しいホルモンを抽出する研究を行う中で、どのような物質を注射した場合にも共通して以下の3つの症状がマウスに現れることを発見しました。

  • 副腎皮質の肥大
  • 胸腺や脾臓の萎縮
  • 胃と十二指腸の潰瘊・出血

また、注射だけでなく、寒冷、化学物質、炎症、感染、怒りや不安などのストレッサーを与えられた場合にも3つの症状が現れることを証明しました。

そして、外部環境からの刺激によって身体が示す歪みを説明するためにストレスを使用し、ストレッサーに反応して生じる一連の症状を汎適応症候群と名づけています。

汎適応症候群(GAS)とは

汎適応症候群とは、ストレッサーにさらされた生体に生じる、ストレスに適応するための一連の反応です。

汎適応症候群(GAS:General Adaptation Syndrome)と局所的適応症候群に分類されます。

セリエは、汎適応症候群には警告反応期、抵抗期、疲憊(ひはい)期という3つの時期があるとしています。

警告反応期

警告反応期とは、ストレッサーにさらされた身体が緊急に反応する時期です。

警告反応期には、ショック相と抗ショック相という2つの時期に分類されます。

ショック相

ショック相とは、ストレッサーによるショックに身体が適応できていない状態です。

簡単に言えば「動物園でオリから出てきたライオンと出くわした」、「路地裏で筋骨隆々の男性と遭遇した」ときの状態です。

ショック相は数分から1日程度継続し、以下のような現象が見られます。

  • 血圧・体温・血糖値の低下
  • 意識の低下
  • 血液の濃縮
  • 筋緊張の低下
  • 脊髄反射の減弱
  • 急性胃腸潰瘍の発生

抗ショック相

抗ショック相とは、ショックに対する生体の防衛反応(適応現象)が働き始まる段階です。

この段階のみを警告反応器とし、ショック相と区別することもあります。

抗ショック相では、以下のような現象が見られます。

  • 血圧・体温・血糖値の上昇
  • 副腎肥大
  • 胸腺リンパ組織の萎縮
  • 筋緊張の増加

抵抗期

抵抗期とは、ストレッサーと抵抗力が一定のバランスを保ち、生体の防衛反応が完成される時期です。

ストレスに耐えて適応するようになる時期で、警告反応期に見られた症状がなくなり、抵抗力も回復して正常な状態に戻ったように見えます。

しかし、ストレスが継続すると、エネルギーを消耗して徐々に適応力が低下することもあります。

疲憊期

疲憊期とは、ストレッサーと抵抗力のバランスが崩れることにより、ショック相に似た状態に陥る時期です。

ストレスに適応するためのエネルギーが消耗されることで起こり、以下のような現象が見られるようになります。

  • 体温の低下
  • 胸腺やリンパ節の萎縮
  • 副腎皮質の機能低下

身体の諸器官が協調的に機能しなくなって生体の恒常性が失われる時期であり、死亡するおそれもあります。

汎適応症候群のメカニズム

セリエは、汎適応症候群のメカニズムについて、以下のとおり内分泌で説明しています。

  1. ストレッサーで視床下部が刺激される
  2. 視床下部からCRH(副腎皮質刺激ホルモン分泌ホルモン)が分泌される
  3. 下垂体前葉からACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌される
  4. ACTHが副腎皮質に作用して糖質コルチコイドが分泌される
  5. 糖質コルチコイドの作用(抗炎症作用、糖新生賦活作用、ホルモン増強作用)により、ストレスの影響を受けた生体機能の歪みが正常な状態に戻る

セリエのストレス理論の課題

セリエのストレス理論では、生理学的なストレスのメカニズムに焦点を当ててそれが内分泌機能で説明され、「どのような刺激に対しても,身体は全て同質の生体反応を示す」とされており、心理学的な要因についてはほぼ想定されていませんでした。

しかしその後、ストレッサーが同じでも人によって異なる反応を示すことが明らかにされ、ストレスが生じる過程における心理学的な要因の重要性が指摘されるようになりました。

まとめ

セリエのストレス理論とは

セリエ,H.が提唱した、ストレッサーにさらされた生体が適応しようとする生化学的反応がストレス反応とする理論

  • ストレス:外部環境の刺激で生じる歪みに対する非特異的な反応
  • ストレッサー:ストレスを生じさせる外部環境からの刺激(物理的、化学的、精神的など)
汎適応症候群とは

ストレッサーにさらされた生体に生じる適応のための反応で、警告反応期、抵抗期、疲憊期の3つに分類される

  • 警告反応期:ショック相(ストレスに適応できていない時期)と抗ショック相(生体防衛反応が働き始める時期)
  • 抵抗期:ストレッサーと抵抗力がバランスを保っている時期
  • 疲憊期:ストレッサーと抵抗力のバランスが崩れてショック相に似た状態に陥る時期
セリエのストレス理論の課題

ストレスが生理学的要因で説明され、心理学的要因が想定されていない

【参考】