心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

感覚遮断実験とは?フロンの実験結果と心理学的な意味は?

感覚遮断実験とは

感覚遮断実験とは、感覚遮断状態に置かれた人に生じる影響を調査する目的で実施された実験です。

1950年代から1960年代にかけて盛んに行われ、感覚遮断が人の心身にもたらす影響に関する研究成果が無数に発表されています。

しかし、拘束や行動制限など非人道的な実験方法も影響して、1970年代以降は下火になっていきます。

感覚遮断とは

感覚遮断とは、外界からの感覚刺激(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚など)を極限まで減らすことです。

感覚刺激が遮断された状態、刺激が減少した状態、刺激が意味を持たない状態の3つの意味がありますが、この記事では主に「感覚が遮断された状態」を感覚遮断としています。

感覚遮断状態では、覚醒水準の低下、夢と現実の混同、幻覚、思考の乱れ、身体的な違和感などを生じることから、人が正常な心理状態を維持するには、外界から適度な感覚刺激を受け、刺激に反応する必要があるとされています。

感覚遮断実験の具体例

感覚遮断実験の具体的な例を確認していきます。

ヘロンの感覚遮断実験

心理学の世界ではヘロン,W.が1957年に行った感覚遮断実験が有名です。

ヘロンの感覚遮断実験は、以下のような条件下で実施されました。

  • 被験者は、目隠しと耳栓をされた上、手に筒をはめられて物を触れない状態で、視覚、聴覚、触覚からの感覚刺激が極力制限される
  • 身体は拘束され、室内温度も体温と同じに保たれる
  • 食事とトイレ以外は柔らかいベッドの上に寝ていることしか許されない
  • 実験者とはインターフォンを通して話すことができる

ヘロンの感覚遮断実験の被験者は、実験開始当初はぐっすりと眠り続けていましたが、目が覚めた後は落ち着きがなくなり、何でもいいから見たり聞いたり触れたりしたいと感じ始めます。

感覚遮断状態が2~3日続くと思考に乱れが生じ、物事を論理的に考えることができなくなったり、考えがまとまらなくなったりするようになります。

また、身体的な違和感を抱くようになる他、独り言をつぶやき始める、実験者と話そうとする、口笛を吹くなどの行動が顕著に見られることも報告されています。

さらに時間が経過すると、幻覚が生じる妄想が頭に浮かんで離れなくなるなどの症状も現れます。

ヘロンの感覚遮断実験では、最終的にほぼ全ての被験者に感覚機能鈍麻や知覚機能異常などの症状や、緊張、不安、恐怖など病的な心理状態の変化が見られました。

その他の感覚遮断実験

感覚遮断実験は、1950~1960年代にかけて盛んに行われていました。

朝鮮戦争中

感覚遮断実験の始まりとされているのは、朝鮮戦争中における中国のアメリカ人捕虜に対する洗脳です。

独房に約1週間監禁されたアメリカ人捕虜の多くは様々な幻覚を体験し、その後、独房から出されて思想教育を施されたとされています。

ヘッブの感覚遮断実験

カナダの心理学者ヘッブ,H.O.は、ヘロンより前の1951年に感覚遮断実験を行っています。

ヘッブは、14人の学生を被験者として、会話しない状態で生活すると心身にどのような変化があるのかを確かめました。

この実験の被験者は、洗面台やベッドなどが備え付けられた個室で過ごすよう求められ、食事も提供されるというストレスの少ない状況に置かれますが、他人と会話することは認められませんでした。

この実験では、開始から80~90時間が経過すると、被験者には妄想や幻覚などの症状が現れ、覚醒水準、思考力、注意力なども低下するという結果が得られています。

ヘッブの実験結果は世界に衝撃を与え、ヘロンやブリスの感覚遮断実験などが行われるようになります。

リリーのアイソレーションタンク(感覚遮断タンク)

脳科学者のリリー,J.C.は、アメリカ国立精神衛生研究所の研究者時代に、完全な感覚遮断を実現するためにアイソレーションタンクを開発しました。

アイソレーションタンクとは、光や音が遮断された状態で、皮膚温に保たれた高濃度の塩水に浮かぶことにより、視覚や聴覚、皮膚感覚、重力感覚を制限することができる装置です。

元々は感覚遮断の研究を目的として開発されましたが、現在は、心理療法や代替医療の一つとして使用される機会が増えており、タンクを設置する施設が増加しています。

感覚遮断実験の心理学的な意味

感覚遮断実験では、人は、長時間にわたって感覚遮断状態に置かれると、心身に異常をきたすことが明らかにされました。

つまり、人が心理状態や認知機能を正常に保つためには、適度な刺激にさらされ続け、刺激に反応することで外界と関わる必要があることが分かったのです。

一方で、適度な感覚遮断はリラックス効果をもたらすことも知られており、現在でもアイソレーションタンクなどが活用されています。

まとめ

感覚遮断実験とは

外界からの感覚刺激を遮断する実験

1950年代~1960年代に流行

感覚遮断実験の具体例
  • ヘロンの感覚遮断実験
  • ヘッブの感覚遮断実験
  • リリーのアイソレーションタンクなど
感覚遮断実験の心理学的な意味

人が心身ともに健康に過ごすためには、適度な刺激を受け、刺激に反応して外界と関わる必要があることが明らかにされた

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