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社会的促進とは?社会的抑制との違い、オルポートの実験と日常例まで

社会的促進 社会的抑制

社会的促進とは

社会的促進とは、何らかの課題に取り組むときに、周囲に他人がいる方が課題の遂行量が増加したり、成績が上がったりする現象です。

英語では「social facilitation」と表記し、日本語では社会的促進と訳されます。

褒められたり、報酬を約束されたりすれば誰でも頑張りますが、そうした強化子が与えられなくても、他人がそばにいるだけで作業量や成績が向上するのが社会的促進の特徴です。

社会的促進に関するオルポートの実験

社会的促進を最初に発見したのは、心理学者のオルポート,F.H.です。

オルポートは、以下の実験を行い、社会的促進という現象を明らかにしています。

  1. 被験者に単語連想課題や意見創出課題を与える
  2. 1.の課題について、被験者に一人ひとりで取り組ませる
  3. 1.の課題について、集団で取り組ませる

実験では、被験者が一人で課題に取り組んだ場合と集団で取り組んだ場合を比較され、集団で取り組んだ場合の方が課題の遂行量が多くなることを明らかになりました。

つまり、取り組む課題は同じで、被験者同士は互いに干渉し合わないにも関わらず、集団で取り組むと「他人がそこにいること」が刺激となって課題の遂行量が増えることが実証されたのです。

また、被験者一人ひとりに異なる課題が与えられた場合でも、集団で課題に取り組んだ方が一人のときよりも遂行量が増加することも明らかにされています。

2つの社会的促進:共行動効果と観察効果

オルポートは、社会的促進について、他人の存在の在り方(被験者と他人の関係性)から共行動効果と観察効果の2つに分類しています。

共行動効果とは

共行動効果とは、集団で同じ作業や課題に取り組むことにより、一人で取り組むよりも遂行量が増加する社会的促進です。

一緒に課題に取り組む他人がいることで起こるというオルポートが実験で明らかにした社会的促進であり、共行為効果と呼ばれることもあります。

共行動効果の日常例

例えば、クイズに答える場合、一人で取り組むよりも競争相手になる他人がいた方が、「1番多く正答したい。」、「他の人には負けたくない。」という心理によって成績が向上しやすいものです。

観察効果

観察効果とは、課題に取り組む様子を他人が観察している場合に起こる社会的促進です。

見物効果と訳されることもあります。

他人が自分と同じ作業をしていないだけでなく、作業そのものをしていなくても、「他人が観察者として存在する」だけで社会的促進は起こるのです。

観察効果の日常例

例えば、子供が学校の宿題をするときに、部屋にこもって一人でするよりも、リビングで親が傍で観察(監視)している状況でした方が遂行量は増加しやすいものです。

また、街頭演説をしている人は、たとえ道行く人がいるだけ、または、こちらを見ているだけでも、観察されていることを意識して演説をするようになります。

社会的促進と社会的抑制の違い

社会的抑制とは、何らかの課題に取り組むときに、他人が存在することで遂行量が低下する現象です。

英語では「Social inhibition」と表記され、日本語では社会的抑制と訳されます。

他人が同じ作業をしていなくても、他人に観察されているだけでも生じるところは社会的促進と同じです。

つまり、社会的抑制にも共行動効果と観察効果の2種類があるのです。

一方で、社会的促進は他人の存在によって課題の遂行量が「増加する」のに対し、社会的抑制では「低下する」という違いがあります。

社会的促進と社会的抑制は同じ課題で起こることもある

課題の遂行量が増加または低下するという反対の減少が起こる社会的促進と社会的現象ですが、実は、同じ課題でも起こります。

例えば、会議でプレゼンテーションをするときに、直属の上司が同席(観察)することが社会的促進となって普段よりうまく説明できる人もいれば、緊張して思うように話せず失敗する人もいます。

このように同じ課題を与えても、人によって社会的促進が生じたり社会的抑制が生じたりするのです。

社会的促進(社会的抑制)が起こる原因

社会的促進(社会的抑制)の原因については、ザイアンス,R.B.がハルの動因理論に基づいて説明している他、評価懸念による説明もなされています。

ザイアンスによるハルの動因理論に基づく説明

ハルの動因理論とは、ハル,C.L.が提唱した、刺激・反応・動因などの関係を数式で説明する理論です。

ハルは、動因と習慣の強さの積の関数により、刺激と反応に基づく人間の行動を明らかにすることができると考え、「sER=D×sHR」という計算式を作り出した人物です。

sER(反応のポテンシャル)=D(動因、心的エネルギーの大きさ)×sHR(習慣・経験の強度)

  • s(stimulus):刺激
  • R(Response):反応
  • E(effective reaction potential):有効反応ポテンシャル
  • D(Drive):動因
  • H(Habit):習慣

春の動因理論では、「覚醒水準が高いほど個人が身につけた反応を示しやすくなる」「ある行動の熟練者は、覚醒水準が高いほど良いパフォーマンスを発揮する」「初心者は、覚醒水準が高いほどパフォーマンスが低下する」とされています。

ザイアンスは、ハルの動因理論に基づいて、他人の存在が個人の覚醒水準を高めると考えました。

その上で、個人が学習や経験を積んだ行動や簡単な行動でクリアできる課題の場合、正しい反応が優位となって社会的促進が起こり、学習不足や未経験の行動を要する課題の場合、誤反応が優位となって社会的抑制が起こると説明しました。

簡単に言うと、本人が課題を「自分の能力なら簡単にクリアできる」と認識していれば社会的促進が生じやすく、「こんな困難な課題、自分には荷が重い」と認識していれば社会的抑制が生じやすいのです。

評価懸念による説明

評価懸念とは、他人から評価されること自体への不安、または、否定的・消極的な評価をされることへの不安を表す概念です。

自己評価が低い人や、ある課題に必要な行動に熟練していない人の場合、評価懸念が働いて社会的抑制が生じることがあります。

数学の授業で、教師から「黒板の問題を解け」と言われたとします。

数学が得意で自信家の生徒なら、「簡単だ。クラスメイトの前で頭の良さを示す良い機会だ。」と思い、嬉々として問題を解くでしょう。

問題が多少難しくても、頭をフル回転させて正答するかもしれません。

しかし、数学が得意でも自己評価の低い生徒は、「クラスメイトの前で間違ったら馬鹿にされるに違いない。」と不安を抱き、机上なら解ける問題でも間違ってしまうことがあります。

共行動効果と観察効果のメカニズム

共行動効果と観察効果は、他人の存在が行動を促進するという点は共通しています。

しかし、脳内では異なる部位が各効果に関与しているという実験結果があります。

実験では、帯状回(感情形成・処理、学習、記憶に関わる部位)が破壊されたラットでは観察効果が消失した一方で、共行動効果は消失しないという結果が得られています。

このことから、観察効果の生起には帯状回が関与していると考えられています。

まとめ

社会的促進とは

課題に取り組むときに、他人がいる方が一人のときより課題遂行量が増加し、成績も向上する現象

2つの社会的促進:共行動効果と観察効果
  • 共行動効果:集団で同じ作業や課題に取り組むと、一人より遂行量が増加
  • 観察効果:他人に観察されるだけで課題の遂行量が増加
社会的促進と社会的抑制との違い

同じ刺激を与えられたときに、課題の遂行量が増加するか低下するかの違いがある

社会的促進(社会的抑制)が起こる原因
  • ザイアンスによる春の動因理論による説明
  • 評価懸念

【参考】

  • 社会的促進の観察効果と共行動効果は発生機序が異なる-帯状回破壊ラットによる検討-