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バンデューラの社会的学習理論とは?観察学習とモデリングの内容は?

社会的学習

バンデューラの社会的学習理論

社会的学習理論とは、アメリカ合衆国の心理学者バンデューラ.A.が提唱した学習理論です。

社会的学習理論が提唱される以前は、行動主義による学習理論が主流であり、学習は、学習者自身の直接経験を前提とする随伴学習を指して使用されていました。

つまり、学習者自身が行動を起こし、その行動に何らかの刺激(強化子)が加えられることで学習が成立する「条件付け」が学習であると考えられていたのです。

こうした状況下で、バンデューラは、学習者自身が直接経験しなくても、他人の行動を観察したり模倣したりすることでも学習が成立すること(観察学習、モデリング)に着目し、社会的学習理論を提唱しました。

それまで主流であった条件付けという刺激と反応に限られた学習ではなく、認知過程を考慮した学習過程を提示したのです。

社会的学習(観察学習)とは

社会的学習とは、自分で行動するのではなく、他人の体験を観察すること(代理経験)によって生じる学習です。

「他人の行動を観察して模倣することにより、行動を獲得・修正・除去すること」と言い換えることもできます。

元々、社会的学習は、学習者が自ら他人の行動を模倣し、その模倣に対して強化が与えられることで学習が成立する過程を表す心理学用語でした。

しかし、バンデューラが社会的学習理論を提唱して以降、観察学習(モデリング)の同義語として使用されるようになっています。

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バンデューラの社会的学習(観察学習)に関する実験

バンデューラが行った社会的学習(観察学習)に関する実験を2つ、確認しておきましょう。

バンデューラの実験1

  1. 被験者の子どもを2グループに分ける
  2. グループ1の子どもに、おもちゃの部屋で大人が人形に乱暴する様子を見せる
  3. グループ2の子どもに、おもちゃの部屋で大人が遊んでいる様子を見せる
  4. 2グループの子どもを1人ずつおもちゃの部屋に入れ、様子を撮影する

この実験では、おもちゃの部屋に入れられたグループ1の子どもは、対照群の子どもよりも攻撃的な行動を示すという結果が得られました。

つまり、明確な強化刺激が与えられなくても、子どもがモデルの行動を自発的に模倣することが分かったのです。

バンデューラの実験2

  1. 被験者の子どもを3グループに分け、大人が人形に対して発声を伴う攻撃行動をする映画を見せる
  2. グループ1の子どもに、モデルの大人が強化される様子を見せる
  3. グループ2の子どもに、モデルの大人が別の大人に注意される(罰せられる)様子を見せる
  4. グループ3の子どもには、攻撃行動の結果を見せない(強化される様子も罰せられる様子も見せない)
  5. 3グループの子どもを1人ずつおもちゃ部屋に入れ、行動を観察する

この実験の結果、グループ2の子ども(モデルの大人が罰せられる様子を見せられた子ども)は、他の子どもと比較すると、有意に模倣行動が少ないことが観察されました。

また、バンデューラが「モデルの大人の真似(攻撃行動)をすればご褒美をあげる。」と伝えたところ、いずれのグループの子どもも、それまでと同等またはそれ以上の攻撃行動を示しました。

バンデューラは、この実験結果から、観察による新しい行動の学習には強化は必ずしも必要ではないが、新しい行動のパフォーマンスには強化の期待が影響すると結論づけています。

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社会的学習理論における観察学習(モデリング)の過程

社会的学習理論では、観察学習は4つの過程で構成されると説明されます。

注意過程

注意過程とは、モデル(観察する対象)の行動または行動の特徴に注意を向ける過程です。

親きょうだいなどの家族や、友人知人などの身近な人だけでなく、テレビや映画の登場人物、アニメのキャラクターなどもモデルとなり得ます。

例えば、アンパンマン、仮面ライダー、ワンワンなどがモデルとなりうるのです。

保持過程

保持過程とは、注意過程で得た情報を記憶として脳に保持する過程です。

知覚したモデルの行動や行動の特徴を言語化、イメージ化、抽象化して情報として脳へインプットします。

保持過程が適切に行われていないと、うまくアウトプットすることができません。

ポイント

記憶の過程(記憶の二重貯蔵モデル):情報入力→【感覚記憶】→選択的注意→【短期記憶】→リハーサル→【長期記憶】

運動再生過程

運動再生過程とは、保持された情報をアウトプットし、実際に行動してみる過程です。

運動再生過程によって脳に保持された情報と自分の行動の差に気づき、行動を修正することでモデリングの制度を向上させることができます。

バンデューラは、記憶として保持された情報は抽象化される可能性があると仮定し、また、保持した行動が再生できるか否かは個人の知識に左右されると説明しています。

動機づけ過程

動機づけ過程とは、学習した行動を実際に行うモチベーションを高める過程です。

注意過程、保持過程、運動再生過程で新しい行動を獲得した後、その行動が実行されるか否かは動機づけ過程に左右されます。

つまり、新しい行動を獲得しても、その行動を実行するモチベーションがないと実行されず、また、実行されないままだと徐々に消失していきます。

動機づけ過程における動機づけは、外的強化、代理強化、自己強化の3つに分類されています。

外的強化行動に対して外から強化される

例:逆上がりを覚えたことを親に褒められるなど

代理強化モデルが行動に対して強化(報酬)を受ける様子を観察し、自身も強化を受けると期待を高めることで強化される

例:兄が自発的におもちゃの片づけをして親に褒められるのを見て、弟も自発的に片付けをする

自己強化自分自身で行動に対して強化を与える

例:水泳で25m泳げるようになり、もっと練習するようになるなど

ポイント

観察学習の4つの過程:注意過程→保持過程→運動再生過程→動機づけ過程

※動機づけ過程を経ないと学習した行動は定着しない

模倣学習と観察学習の違い

模倣学習とは、モデルの行動を模倣して実行した結果として生じる学習です。

つまり、学習者はモデルと同じ行動をとることになります。

観察学習は、学習者が行動する前に学習が生じて行動に影響を及ぼす点で、模倣学習とは異なります。

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社会的認知理論と自己効力感(セルフ・エフィカシー)

バンデューラは、自身が提唱した社会的学習理論を発展させて、社会的認知理論を提唱するに至っています。

社会的認知理論とは、知的発達や社会的発達などを、個人要因、環境要因、自他の行動の相互関係の中で捉えて説明する理論です。

社会的認知理論では、人の行動を決定する要因として、自己効力感(セルフ・エフィカシー)という概念を重視しています。

自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは

自己効力感とは、「ある状況において、自分が行動の主体であり、行動をコントロールできており、外部からの要請にも対応できるという確信」です。

バンデューラは、観察学習などの学習の理解には、行動によって得られる結果の予期に加え、行動を実現できるという予期も必要であるとして、後者を自己効力感と名づけています。

また、自己効力感を認知する要因として、以下の4つを挙げています。

自分自身の直接体験自分自身が実際に実行して成功・達成する経験をすること
他人の行動結果の観察他人が成功・達成している様子を観察すること
他人の言葉による説得成功・達成の可能性を言葉で説得されること
情動的生理的状況の自覚情動的生理的な状態を自覚すること

自己効力感(セルフ・エフィカシー)については、「自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは?高める方法とバンデューラの理論」で詳しく解説しています。

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まとめ

バンデューラの社会的学習理論

アメリカ合衆国の心理学者バンデューラ.A.が提唱した、他人の体験を観察することによって生じる学習に関する理論

社会的学習(観察学習)に関する実験
攻撃行動に関する観察学習の実験
社会的学習理論における観察学習(モデリング)の過程
  • 注意過程
  • 保持過程
  • 運動再生過程
  • 動機づけ過程
社会的認知理論と自己効力感(セルフ・エフィカシー)
  • 社会的認知理論:社会的学習理論の発展形
  • 自己効力感:予定した行動について、どれくらい実現できると思っているかという自信