心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

スチューデントアパシー(学生の無気力症候群)とは?原因と対策は?

スチューデントアパシー

スチューデントアパシーとは

スチューデントアパシーとは、大学生が本業である学情に対する意欲を失って無気力・無関心になり、その期間が継続している状態です。

英語では「student apathy」と表記し、日本語ではスチューデントアパシーとカタカナ表記されます。

退却神経症のうち、大学生特有の無気力・無関心な状態を表す言葉で、「学生の無気力症候群」と呼ばれることもあります。

アパシー(apathy)とは

アパシーとは、ギリシャ語を語源とする単語で、感情や興味が欠如した状態です。

健康な状態では何らかの感情や興味が湧いていた対象について、感情や興味が湧かなくなります。

スチューデントアパシーと退却神経症

退却神経症とは、社会や集団から期待される本業(社会的役割)からは選択的に退却し、無気力や無関心などの症状が現れる神経症です。

日本の精神科医である笠原嘉(かさはらよみし)が、1960年代に長期留年中の大学生特有の無気力状態に注目して研究を開始し、その後、子どもの登校拒否や会社員の欠勤症などを含むノイローゼとして退却神経症という診断カテゴリーを提唱しました。

その際、大学生特有の無気力・無関心状態については、アメリカ合衆国の精神科医ウォルターズ,Pが「スチューデントアパシー」を使ってすでに報告していたため、同名が使用されることとなりました。

退却神経症には、スチューデントアパシー以外にも以下の概念が含まれています。

名称 発症時期
学校恐怖症 学童期
スチューデントアパシー 青年期
欠勤症 成年期(社会人)

いずれも、本業に対して無気力・無関心などの症状を呈しますが、本業以外には関心を示して専念することができるのが特徴です。

スチューデントアパシーの原因

スチューデントアパシーになる原因は一人ひとり異なり、以下のような原因がいくつも複雑に絡み合って発症することが多くなっています。

  • 目標の喪失
  • 学業への期待と現実とのギャップ
  • 学業における挫折体験
  • 自身の学力に対する評価の低さ
  • 周囲の期待に応えることへの疲れ

「何を学びたいか。」ではなく「○○大学に入りたい。」という思いや、親の期待を背負って勉強に打ち込んできた場合、大学進学を果たした後、目標が達成されたり期待に応えることに疲れたりして、学業への意欲を喪失することがあります。

また、高校までは、学校から与えられた課題を適切にこなすことが評価されますが、大学では学生自身が希望する学問や研究テーマを主体的に取り組む必要があるため、主体性を求められることに疲弊して学問から離れる学生もいます。

希望した進学先や学問の内容が思い描いたものとかけ離れていた場合も、失望や諦めからスチューデントアパシーに陥りやすいものです。

学業に挫折したり、優秀な学生に引け目を感じたりして、学業に打ち込んでも思うような成果を上げられず、周囲からも評価されない怖さを感じて意欲を失うケースも珍しくありません。

スチューデントアパシーになりやすい人

以下の気質や性格がある人は、スチューデントアパシーになりやすい傾向があります。

  • 完全主義
  • 他人から拒否、叱責、批判されることに強い抵抗感がある
  • プライドが高く、他人から教わることを嫌う
  • 挫折経験が乏しく失敗を恐れる
  • 失敗や敗北が予想されることは途中で止めてしまう
  • 白黒はっきりさせたい性格
  • 異性との付き合い方が下手
  • 社交性が乏しく対人関係が限定的

スチューデントアパシーの症状

スチューデントアパシーの主な症状は、学業に対する無気力と無関心ですが、他にも以下のような症状が現れることがあります。

  • 批判が予想される状況を回避するための引きこもり
  • 一貫性のない行動を繰り返す
  • 抑うつ
  • 空虚感
  • 漠然とした不安と焦り
  • 生きる意味を感じられなくなる
  • 欲求を持てず(自覚できず)、周囲の期待に合わせて自分を保とうとする
  • 自棄的な気持ちに伴う睡眠時間の異常な増加
  • 「楽しい」、「嬉しい」という感情が乏しくなり、物事に興味関心を持てず受け身的になる
  • 時間の感覚が希薄になり、生活リズムが昼夜逆転し、生活のメリハリがなくなるが、そのことに焦りを感じない
  • 処理できない不快な感情の否認
  • 対人恐怖や関係妄想

スチューデントアパシーに陥った人の特徴

スチューデントアパシーに陥った人の特徴は、以下のとおりです。

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  • 選択的無関心
  • 自覚症状が乏しい
  • 困り感がなく、症状を認めない
  • 気づかれにくい
  • 男性に多い

スチューデントアパシーになった大学生は、本業である学業に対して無気力・無関心になります。

一方で、部活、サークル活動、アルバイトなど本業(学業)以外のことには関心を持って熱心に取り組むことができ、対人関係にも目立った問題は見られず、生活が昼夜逆転していても入眠障害や不眠の症状はありません。

また、本人が学業への無気力・無関心に気づいていない、または気づいていても悩んでいないことが多く、周囲もサポートが必要な状態だと気付きにくいものです。

スチューデントアパシーになるのは、男子学生が圧倒的に多くなっています。

スチューデントアパシーとうつ病、燃え尽き症候群(バーンアウト)、五月病の違い

スチューデントアパシーと似た症状を持つ病気や状態に、うつ病、燃え尽き症候群(バーンアウト)や五月病があります。

スチューデントアパシーとうつ病の違い

スチューデントアパシーの無気力症状は、うつ病の症状と似ています。

しかし、学業以外には意欲的に取り組むことができることや、睡眠障害がないことなどから、うつ病の無気力とは区別されます。

スチューデントアパシーと燃え尽き症候群(バーンアウト)

燃え尽き症候群(バーンアウト)とは、強度のストレス状況下で勉強や仕事を献身的に頑張ってきた人が、急に頑張ってきたことへの意欲を喪失することです。

慢性的かつ継続的なストレスにさらされ続けると、日常生活を送ることさえ困難になるおそれがあります。

例えば、ある日突然大学へ行けなくなる、出勤日の朝だけ布団から出られなくなる、頑張ってきたことを過剰に避けるなどの症状が見られます。

発症時期が大学生に限定されておらず、燃え尽きる対象が学業に限定されていない点が、スチューデントアパシーとの違いです。

スチューデントアパシーと五月病

五月病とは、入学後まもない学生や、入社後まもない新入社員が、新しい環境に適応できないことが原因で起こる精神的な諸症状です。

ゴールデンウィーク前後に症状が現れやすいことが名前の由来で、食欲不振、不眠、集中力の低下、めまいや動悸、頭痛などの症状が現れます。

5月前後に現れて1~2ヶ月程度で症状が改善しやすいことや、学業に限らず起こることが、スチューデントアパシーとは異なります。

スチューデントアパシーの治療(治し方)

スチューデントアパシーに陥ると、欠席が続いて留年が現実味を帯びますし、学業継続が困難になって退学すると、その後の生活設計にも影響を及ぼします。

スチューデントアパシーから抜け出すには、まず、学業に対して意欲を喪失している現実に気づき、大学生活の目標を設定することが大切です。

何のために大学へ入ったか、学業を通して何を得たいのかなどを思い返し、自分の目標のために学業が必要か否か、必要であればどのように意欲を回復させるかについて考えます。

こうした作業は一人で行うことは難しく、家族や信頼できる友人、大学の相談室の職員などと一緒に行うことが望ましいものです。

症状が慢性化している場合は、心療内科や精神科でカウンセリングを受けることも検討します。

まとめ

スチューデントアパシーとは

大学生が学業(本業)に対して継続的に無気力・無関心になっている状態

スチューデントアパシーの原因

目標の喪失、学業への期待と現実とのギャップ、学業における挫折体験、自身の学力に対する評価の低さ、周囲の期待に応えることへの疲れなど

スチューデントアパシーの症状

学業に対する無気力・無関心、抑うつ、感情・欲求・時間間隔などの希薄化など

スチューデントアパシーの治療(治し方)
  • 他人と一緒に現状認識と目標設定を行う
  • 必要に応じてカウンセリングを受ける

【参考】

  • 臨床心理学研究の理論と実際―スチューデント・アパシー研究を例として―|下山晴彦著|東京大学出版
  • アパシー・シンドローム―高学歴社会の青年心理― |笠原嘉著|岩波書店
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