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言語相対性仮説(サピアウォーフの仮説)とは?例と誤解される内容は?

言語相対性仮説 サピア=ウォーフ仮説

言語相対性仮説(サピアウォーフの仮説)とは

言語相対性仮説とは、人の思考は母語によって決定されるか影響を受けるという仮説です。

英語では、「Theory of linguistic relativity」と表記され、日本語では言語相対性仮説と訳されています。

言語相対性仮説を提唱したアメリカ合衆国の言語学者サピア,E.とウォーフ,B.  L.にちなんで「サピアウォーフの仮説」と呼ばれることもあります。

しかし、サピアとウォーフはともに言語学者で師弟の関係であったものの、彼らが共同で言語相対性仮説を提唱したわけではありません。

サピアが言語相対性仮説を提唱し、それに感化されたウォーフも仮説を指示する論文を発表したため、他の研究者が後から2人の名前をつけてサピアウォーフの仮説と呼ぶようになりました。

強い仮説と弱い仮説

言語相対性仮説には、大きく分けて「強い仮説」と「弱い仮説」の2つがあります。

強い仮説(言語決定論)

強い仮説とは、言語決定論とも呼ばれる、言語によって思考様式が決定されるという考え方です。

「人の考え方は言語によって決定され、言語のない思考はないことから、異なる言語を用いる人同士では世界観が全く異なるはずである。」という極端な仮説です。

弱い仮説(言語相対論)

弱い仮説とは、言語相対論とも呼ばれる、思考様式が言語や文化の影響を受けるという考え方です。

各言語の特徴や特性が異なることにより、その言語を用いた思考様式にも影響が及ぶという仮説です。

言語が思考に影響を及ぼすという主張は強い仮説と同じですが、言語によって思考様式が決定されるとまでは主張していません。

ウォーフの言語相対性仮説への誤解

ウォーフの言語相対性仮説は、「強い仮説」のみだと誤解されることがあります。

これは、ウォーフが、アメリカ先住民ホピ族の言語「ホピ語」を分析した結果を踏まえて、「ホピ語と英語など標準西洋語の間には、埋めることができない翻訳不可能なレベルの溝がある。」と主張する論文を発表し、それが強い仮説を支持する内容だと他の研究者に「解釈された」ためです。

しかし、サピアとウォーフが主張したのは「母語が思考や認識に少なからず影響を及ぼす。」というものであり、「言語によって思考様式が完全に決定される。」と主張したわけではありません。

言語相対性仮説への批判

言語相対性仮説への批判としては、アメリカ合衆国の心理学者ピンカー,Sの主張を挙げることができます。

ピンカーは、人の言語が本能または生物学的適応で、人には普遍的な文法体系が生まれつき備わっており、その上に母語の文法を学習すると考え、言語相対性仮説を批判しました。

ピンカーの主張については、イギリスの言語学者ドイッチャー,Gが、「母語は論理的な推論能力には影響を与えないが、記憶、直感、連想など感覚的な部分に影響を与えている。」と反論しています。

言語相対性仮説(サピアウォーフの仮説)の実験

言語相対性仮説については世界各地で数々の実験が行われており、言語の違いが思考に影響を及ぼす例として、以下のようなものが挙げられています。

  • 空間
  • 時間
  • 動作
  • 文法におけるジェンダーや動物

代表的なものとして、色に関する実験について確認しておきます。

言語相対性仮説の実験

強い仮説の立場では、「色の切り分けが言語によるもので、使用する言語(母語)にある色の名前がなければ、その色をその色として認知することができない。」ということになります。

例えば、ある言語では赤色・青色・黄色という異なる3つの色として認知される色が、別の言語では1つの同じ色と認知される、つまり、世界の見え方が異なるということです。

しかし、以下の手順で行われた実験の結果は、強い仮説を否定する内容でした。

  1. ニューギニア高地に住む、色に関する言葉を「濃い、薄い」の2種類しか持たない部族を被験者とする
  2. 部族の人にある色を見せ、その後、同じ色を再認させる

実験の結果、部族の人は、英語を話す地域の人と同程度に色を識別できることが分かりました。

つまり、色に関しては、言語が認知(思考)を規定するという考えは否定されたのです。

また、その後の実験では、言語に関わらず、原色(正確には焦点色)に近いほど再認されやすく、そこから離れるほど再認されにくいという結果も得られました。

一方で、ある言語で表現しやすい色は、他の言語を話す人よりも再認しやすいという結果も得られており、これを弱い仮説を支持する結果だと考える研究者もいます。

ただし、再認率が低い色について、その色を表す言葉を作って覚えさせると再認率が上昇するという結果もあります。

近年は、言語が異なると、ある言語に存在しない色彩語の色彩が認知されないわけではなく、注目されて言語コード化される色彩が異なると考え方が主流です。

まとめ

言語相対性仮説
サピアとウォーフが提唱した、人の思考は母語によって決定される、または、影響を受けるという仮説
言語相対性仮説の実験
色の実験:色についての言葉を2種類しか持たない部族の人も、英語を話す地域の人と同程度に色を識別できるという結果が得られた

(色に関して、言語が認知(思考)を規定するという考えは否定された。)

【参考】

  • 言語・思考・現実|ウォーフ,B.L/.講談社学術文庫