心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

一時保護とは?入所の流れと期間は?児童相談所の判断基準と保護施設は?

一時保護とは

一時保護とは、児童の生命の安全を確保することを目的として、児童相談所長または都道府県知事などが必要と認めたときに、児童を一時保護所に入所させるなどして保護する行政処分です。

一時保護については、児童福祉法第33条などに規定されています。

児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。

(児童福祉法第33条第1項)

一時保護には、一時保護所に入所させる措置の他、警察署、福祉事務所、児童福祉施設、里親、その他の児童福祉に深い理解と経験を有する適当な機関・法人・私人)に一時保護を委託する「一時保護委託」もあります。

一時保護の目的

一時保護の最大の目的は、児童の生命の安全を確保することです。

命の危険がある場合だけでなく、家庭の監護状況が児童の福祉にとって看過できない程度に悪いことが明らかと判断される場合にも、一時保護が行われるべきとされています。

一時保護によって児童の安全を確保することにより、児童に危険が及ぶことを心配せずに保護者や家庭の調査、指導、環境調整などを進めることができます。

また、保護者も児童から離れることで冷静さを取り戻したり、行政などの支援を受けるモチベーションを高めたりすることもあります。

児童についても、一時保護所などの安全が確保された状況に置くことにより、より本質的な意見聴取や行動観察ができるようになります。

一時保護の判断基準

緊急保護、行動観察、短期入所指導のいずれかまたは複数が必要な場合に、一時保護が必要だと判断されます。

緊急保護(緊急一時保護)

緊急保護とは、児童の生命の安全を確保するために緊急に児童を保護する必要がある場合に行われる一時保護です。

緊急保護が行われるのは以下のようなケースです。

  • 棄児、迷子、家出した児童:現に適当な保護者や宿所がなく緊急に保護する必要がある
  • 虐待・放任されている児童:児童の命を守るために家庭から一時引き離す必要がある
  • 問題行動のある児童:児童の行動が自己や他人の生命、身体、財産に危害を及ぼす、または危害を及ぼすおそれがある
  • 警察から法第25条に基づき通告のあった児童や少年法第6条の6第1項に基づき送致のあった児童:一定の重大事件に係る触法少年など保護を要する状態にある

行動観察

児童や保護者に対する適切で具体的な援助の方針を決めるために、行動観察や生活指導などを行う必要がある場合にも、一時保護が行われることがあります。

一時保護所などで過ごす児童の言動や態度を十分に観察したり、生活指導に対する反応を確かめたりすることにより、家庭に戻った後の親との関係性の持ち方や効果的な指導などについて検討を行います。

短期入所指導

児童の問題行動等への対処として短期間の心理療法、カウンセリング、生活指導などが有効と判断された場合も、一時保護が行われることがあります。

ただし、地理や児童の性格、環境などの事情により、通所や職員の訪問など一時保護以外の方法による援助が困難または適当でない場合に限って行うこととされています。

児童虐待防止法では、児童虐待に係る通告または市町村などから送致を受けた場合、市町村または福祉事務所の長は、児童の安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ一時保護(児童福祉法第33条第1項)を行うものとされ、その実施に当たっては、速やかに行うよう努めなければならないとされている(児童虐待防止法第8条)。

単に生命の危険にとどまらず、現在の環境におくことが児童のウェルビーイング(児童の権利の尊重・自己実現)にとって明らかに看過できないと判断されるときは、まず一時保護を行うべきである。

アセスメントシートとフローチャート

実務上、一時保護の要否を判断するために「児童の虐待対応・アセスメントフローチャート」、「一時保護決定に向けてのアセスメントシート」、「一時保護に向けてのフローチャート」などが用いられることがあります。

いずれも厚生労働省のウェブサイトから閲覧できるので、興味がある人は確認してみてください。

一時保護の流れ

児童虐待が疑われるケースにおける一時保護の流れは、以下のとおりです(児童の虐待対応・アセスメントフローチャートを元に作成)。

  1. 通告(電話、文書、来所など)を受ける
  2. 通告者からの情報に基づいて通告受付票を作成する
  3. 緊急受理会議で当面の方針を決める
  4. 会議後速やかに、児童相談所の職員などが2人以上で児童の安全確認をする
  5. 児童の面接(できる限り保護者面接も行う)
  6. アセスメントシートによる一時保護の要否判断
  7. 一時保護が必要な場合は迅速に一時保護

通告者から場所の情報が得られなかった場合、調査ができないため記録を残します。

地域が判明していれば、要保護児童対策地域協議会に情報を伝達して関係機関内で情報を共有します。

安全確認時に保護者からの物理的抵抗を受ける、児童が現に虐待されているなどのおそれがあり、児童相談所だけでは調査が難しい場合、警察に援助要請がなされます。

また、安全確認を保護者が拒否した場合、出頭要求、立ち入り調査、臨検・捜索というより強い手続きへ進みます。

一時保護の場所と内容

一時保護された児童は、児童相談所に併設された一時保護所に入所して生活したり、児童福祉施設に入ったり、里親に預けられたりします。

一時保護所で生活する場合、原則として、一時保護期間中は学校に通うことができません。

しかし、保護所内には教員免許を持った職員がおり、児童の年齢や学力に応じた学習指導を受けることができますし、学校も欠席扱いにはなりません。

また、学習指導の他、食事、健康管理、生活指導、レクリエーション、保育、季節ごとの行事など一般的な家庭や学校で体験する指導や行事もあります。

スマホが使用できない、ゲーム機で遊ぶことができないなどの制限に戸惑う児童もいますが、安全が確保され、健康的で文化的な生活を送ることができます。

一時保護された児童と保護者の面会も実施されていますが、虐待事案の場合は制限または禁止されることがあります。

一時保護の期間

一時保護の期間は、原則として、2ヶ月までです。

前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から2月を超えてはならない。

(児童福祉法第33条第3項)

「2月を超えてはならない」なので、2ヶ月より短くなることはあります。

また、保護者の意に反し、2ヶ月を越えて一時保護を行う場合には、家庭裁判所の承認を得なければなりません。

5 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後2月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第28条第1項第1号若しくは第2号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第33条の7の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第33条の9の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。

6 児童相談所長又は都道府県知事は、前項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、一時保護を開始した日から2月を経過した後又は同項の規定により引き続き一時保護を行つた後2月を経過した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き一時保護を行うことができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお引き続き一時保護を行う必要があると認めるときに限る。

(児童福祉法第33条第5項、第6項)

注意

2018年4月に新設された規定です。

つまり、2ヶ月までは行政の判断で一時保護ができるのですが、2ヶ月を超え、それが保護者の意に反する場合には、裁判所という司法機関による承認が必要になったのです。

児童福祉法第28条事件、親権制限事件(親権喪失、親権停止)、未成年後見人の解任事件の申立てをしている場合は、これらの事件で司法の判断を受けることで足りるため、一時保護について司法の承認を受ける必要はありません。

また、保護者が急に一時保護の解除を求めた場合などやむを得ない事情がある場合は、承認の審判確定までの間は引き続き一時保護することができます。

公認心理師試験の出題歴

一時保護については、第1回公認心理師試験で出題されました(正答は赤字)。

問2 児童虐待について、緊急一時保護を最も検討すべき事例を1つ選べ。

①重大な結果の可能性があり、繰り返す可能性がある。

② 子どもは保護を求めていないが、すでに重大な結果がある。

③重大な結果は出ていないが、子どもに明確な影響が出ている。

④ 子どもは保護を求めていないが、保護者が虐待を行うリスクがある。

⑤ 子どもが保護を求めているが、子どもが訴える状況が差し迫ってはいない。

引用:第1回公認心理師試験問題

公認心理師試験については、「公認心理師とは?受験資格と特例措置、試験合格率は?臨床心理士との違いは?」で詳しく解説しています。

まとめ

一時保護とは

児童の生命の安全を確保するために、児童相談所長または都道府県知事などが必要と認めた場合に、児童を保護する行政処分

一時保護の判断基準
  • 緊急保護(虐待が疑われる場合など)
  • 行動観察
  • 短期入所指導
一時保護の流れ
  1. 通告
  2. 通告受付票作成
  3. 緊急受理会議で当面の方針決定
  4. 安全確認
  5. 児童の面接
  6. 一次保護の要否判断
  7. 一時保護
一時保護の場所と内容
  • 場所:一時保護所など
  • 内容:学習指導、生活指導、健康管理、食事、行事など
一時保護の期間
  • 原則:2ヶ月以内
  • 例外:保護者の意に反して2ヶ月を超えて一時保護をするには、家庭裁判所の承認を得る必要がある
公認心理師試験の出題歴

第1回試験・問2

【参考】

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