胎児と新生児の五感(聴覚、味覚、触覚、視覚、嗅覚)

新生児 胎児 五感

胎児と新生児(赤ちゃん)の五感1:聴覚

五感のうち、胎児期から発達しているのが聴覚です。

胎児期の聴覚

妊婦健診で実施するエコー検査(超音波検査)により、妊娠5ヶ月頃には、胎児が母親の声に反応して手足を動かす様子を確認することができます。

大人と比較すると聞き取れる範囲は狭いですが、母親(女性)が発する高めの声は聞き取りやすく、また、母親の声は母体に直接響くため、胎外の声や音よりも聴き取りやすいと考えられています。

新生児の聴覚

新生児期の赤ちゃんは、雑音よりも音声を好み、他人の声よりも母親の声を好むことが分かっています。

また、「bとp」、「lとr」などの音韻を弁別できる聴覚が備わっていることや、出生後の生活で使用しない音韻の弁別能力が徐々に消失することが、実験によって明らかにされています。

また、生後1ヶ月の赤ちゃんが、他の聴覚刺激よりもマザリーズを好むという実験結果もあります。

マザリーズとは、主に母親が乳幼児へ話しかけるときに自然に出る独特な言葉です。

マザリーズの特徴としては、以下の3つを挙げることができます。

声の高さ(トーン):やや高め

話しかける速度(テンポ):ややゆっくり

抑揚(ピッチ):大きい

※普段の発声と比較した場合

胎児と新生児(赤ちゃん)の五感2:味覚

味覚についても、胎児期から発達していると考えられています。

胎児期の味覚

味蕾(味を感じる器官)は、妊娠8週頃に形成されて妊娠15週頃にはほぼ完成します。

また、胎児の味覚に関しては、胎児が羊水を飲むことを踏まえ、羊水を甘くして胎児が飲む量を調べる実験が行われています。

実験では、羊水を甘くすると胎児の飲む量が増えるということが明らかにされています。

甘味を甘味として感じたのか、単純に刺激として受け取って反応したのかは明らかにされていませんが、少なくとも、甘味に反応する能力は胎児のうちから備わっていると考えられます。

新生児の味覚

大人にとっての味覚は、食事を楽しむという要素が強いものですが、新生児にとっての味覚は「命を守るための大切な能力」です。

味覚に関しては、様々な味覚の液体を口に入れて赤ちゃんの反応を確認する実験が行われています。

この実験では、赤ちゃんは甘味液や旨味液では快反応を示しましたが、苦味液や酸味液では不快反応を示しました。

つまり、甘み、旨味、苦味、酸味などを区別できているということです。

また、甘い水を日常的に飲み続けた赤ちゃんが、普通の水より甘い水を好むようになることや、妊娠初期に重いつわりに悩まされた母親から生まれた赤ちゃんが、濃い食塩水を好むことを示す実験結果も示されています。

胎児と新生児(赤ちゃん)の五感3:触覚

触覚も、生まれる前から発達している五感の一つです。

胎児期の触覚

妊娠7週頃の胎芽期に口が形成される辺りを刺激すると、胎児が顔をそらす動きを見せるという実験結果があり、胎児期から口付近の触覚が機能していると考えられています。

また、妊娠14週から妊娠24週前頃には身体のほぼ全てで触覚が発達し、妊娠29週頃には痛覚を感じるようになるとされています。

新生児の触覚

例えば、表面が滑らかなおしゃぶりとブツブツのおしゃぶりを準備し、その一方を新生児にしゃぶらせた上で、2つのおしゃぶりの絵を見せるという実験が行われています。

この実験では、新生児の多くが直前にしゃぶったおしゃぶりの絵を見るという結果が得られ、新生児が口で対象の感触を得ていることや、対象の感触と見た目を結合できることが明らかにされました。

なお、触覚というと、皮膚や肌を思い浮かべる人が多いものです。

しかし、新生児期から乳児期の赤ちゃんの場合、皮膚や肌も触覚器としての機能は有していますが、最も機能しているのは口です。

赤ちゃんは、親の手や指、自分の手や足、手で掴んだ物など、とにかく何でも口に入れようとしますが、口に入れることで触り心地、大きさ、形などを確認しているのです。

胎児と新生児(赤ちゃん)の五感4:視覚

視覚は、現代社会を生きる人にとって最も重要な感覚です。

しかし、母親の子宮内で過ごす胎児期においては、視覚によって情報を得る必要がないためあまり機能しておらず、生まれた後に少しずつ機能が向上していきます。

胎児期の視覚

妊婦健診で実施するエコー検査(超音波検査)により、妊娠6ヶ月頃には、胎児が目を開けたり閉じたりする様子を確認することができます。

また、錐体細胞が妊娠3ヶ月頃に、桿体細胞が妊娠7ヶ月頃に網膜にできることが明らかにされています。

MEMO
  • 錐体細胞:色を識別する細胞
  • 錐体細胞:明暗を感知する細胞

新生児・乳児期の赤ちゃんの視覚

新生児は、視力が0.01程度です。

視野はごく狭く、両目の焦点も限られた位置にしか合わせることができません。

出生から日が経つにつれて視覚が向上し、生後6ヶ月頃には視力が0.1程度になって視野も広がりますし、広範囲に焦点を合わせられるようになります。

また、動く対象を目で追う追視、物の色や形、奥行きも分かるようになっていきます。

赤ちゃんは人や動物の顔を区別できるか

赤ちゃんが人や動物の顔をどれくらい区別できるかを調べた実験では、月齢が低い時の方が区別できる範囲が広いことが分かりました。

具体的には、生後3ヶ月頃の赤ちゃんは、人とそれ以外の霊長類の顔を区別できたのに、生後6ヶ月頃の赤ちゃんは、人以外の霊長類の顔を区別できなかったのです。

また、自分と異なる人種の顔も、月齢を経るにつれて見分けられなくなるという実験結果も発表されています。

これらの実験結果からは、赤ちゃんには生まれつきあらゆる顔を区別する能力が備わっているが、生活する上で必要のない能力は消失することが分かります。

また、乳児期の赤ちゃんにも好みの顔があることを示す実験結果もあります。

実験では、男性や女性の写真を何枚も見せた後、別の男女の顔をペアにして見せて、赤ちゃんがどちらをじっと見つめるか調べました。

その結果、主に母親が育児に当たっている家庭の赤ちゃんは、女性の顔を見つめる時間が長く、逆の場合は、男性の顔をじっと見つめる時間が長いことが明らかになりました。

つまり、たくさんお世話してくれる人に似た顔を好むということです。

胎児と新生児(赤ちゃん)の五感5:嗅覚

最後に嗅覚です。

胎児期の嗅覚

胎児の嗅覚に関する研究は見当たりません。

ただし、新生児期から嗅覚が機能しているため、胎児期のいずれかの時点で発達すると考えられています。

新生児の嗅覚

新生児の傍に母親の母乳を染み込ませたガーゼと他人の母乳を染み込ませたガーゼを置き、新生児がどちらを向くか確認する実験が行われています。

実験の結果、ほとんどの新生児が、母親の母乳を染み込ませたガーゼの方を向くことが分かり、新生児期から母親の母乳の匂いと他人の母乳やミルクの匂いを区別できることが明らかにされました。

ただし、赤ちゃんがどのような匂いをどの程度感じ取っているのかについて、明らかにした研究は見当たりません。

まとめ

聴覚

胎児:妊娠5ヶ月頃には、母親の声に反応して手足を動かす

新生児:雑音より音声、他人の声より母親の声を好む

味覚

胎児:羊水を甘くすると飲む量が増える

新生児:甘み、旨味、苦味、酸味などを区別できている

触覚

胎児:妊娠7週頃に口付近、妊娠14~24週前頃には身体のほぼ全てで触覚が発達、妊娠29週頃には痛覚を感じる

新生児:口で対象の感触を得たり、対象の感触と見た目を結合させたりできる

視覚

胎児:妊娠3ヶ月頃に錐体細胞、妊娠7ヶ月頃に桿体細胞が網膜にできる

新生児:視力が0.01程度、視野が狭く、焦点も限られた位置しか合わせることができない

嗅覚

胎児:機能していると考えられている

新生児:母親の母乳の匂いと他人の母乳の匂いをかぎ分けることができる

【参考】

  • 赤ちゃんの心を育てるよい遊び 五感に働きかける200のレッスン|坂本洲子著|PHP研究所