心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

成功回避動機(成功不安)とは?女性特有?男性にもある?

成功回避動機

成功回避動機(成功不安)とは

成功回避動機とは、アメリカ合衆国の心理学者ホーナー,M.S.が提唱した、成功することに不安を抱いたり、成功することを避けたりする気持ちを意味する心理学用語です。

英語では「the motive to avoid success」と表記され、日本語では「成功回避動機」、「成功回避傾向」、「成功回避」と訳されます。

ホーナーが成功回避動機を提唱する以前は、成功達成動機や失敗回避動機に関する研究が盛んに行われていました。

しかし、当時の動機に関する研究は主に男性を被験者として行われており、その結果が女性には必ずしも当てはまらないことが分かってきました。

具体的には、成功達成動機や失敗回避動機の枠組みだけでは、女性の達成行動の予測が困難であることが明らかになってきたのです。

そうした状況でホーナーは、女性の成功動機に注目し、アトキンソンが提唱した成功達成動機の成分(成功志向傾向、失敗回避傾向)以外に、女性特有の動機として成功回避傾向を提唱しました。

MEMO
アトキンソンモデル:アメリカ合衆国の心理学者アトキンソン,J.W.が提唱した、達成動機が「成功しようとする行動(成功達成動機)と失敗を避けようとする行動(失敗回避動機)の掛け合わせで成立する。」という考え方。

  • 達成傾向=(成功達成動機-失敗回避動機)×成功可能性×失敗可能性

アトキンソンモデルについては、「アトキンソンモデルとは?アトキンソンの達成動機理論を踏まえて解説」で詳しく解説しています。

ホーナーの成功回避動機(成功不安)の説明

ホーナーは、女性の成功・達成やそれに向けた努力は、男性の場合とは異なり、社会的規範(女性の伝統的な性役割)からの逸脱であり、成功・達成することで生じるネガティブな結果に対する不安を生じさせると主張しました。

例えば、周囲の人から女性らしくないと拒絶されたり、男性から敬遠されて恋愛や結婚に支障が出たり、友人から疎んじられたりする不安を抱き、社会的規範から逸脱しない女性らしい女性でありたいという思いも抱いて葛藤すると考えたのです。

また、ホーナーは、女性の成功不安は「女性の安定した人格特性の一つ」であり、性役割の期待とともに幼児期から獲得されると考えました。

ホーナーの成功回避動機(成功不安)の実験

ホーナーは、言語刺激による投影法を用いて、成功回避動機を測定する実験を行っています。

ホーナーが行った実験の手順は、以下のとおりです。

  1. 「○○(女性用はアン、男性用はジョン)は、医学部で1番の成績をとったことを知った。」という刺激文を被験者の男女に提示する。
  2. 被験者に対して、刺激文を読んで物語を書くよう指示する。
  3. 被験者が作成した物語に以下の採点基準を満たす内容があるか否かを確認し、成功回避動機が含まれるか否かを特定する。
  • 成功による好ましくない結果
  • 成功による好ましくない結果の予測
  • 成功によって生じた不快な感情
  • 現在と将来の成功を避けようとする行動
  • 成功についての葛藤
  • 言語文の状況の否定
  • 言語文に対する、奇妙・不適切・非現実的・受け入れがたい内容

この実験では、被験者の女子の65%以上が成功回避(成功不安)の物語を作った一方で、90%以上の男子が成功する物語を作り、性差が明確に出る結果となりました。

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また、文字パズルや数的課題を1人または複数で行うという追加実験では、成功不安が低い女性は集団の方が成績が良く、成功不安が高い女性は1人の方が成績が良いという結果が得られました。

さらに、成績優秀で成功達成動機が高い女性の方が、そうでない女性よりも顕著に成功回避傾向を示すことも明らかになりました。

ホーナーは、これらの実験結果から、成功回避動機が女性に特徴的な動機であること、成功回避動機が競争状態においてより強く喚起されること、成功達成動機が強いほど成功回避動機も強くなることを主張しました。

男性の成功回避動機(成功不安)に関する研究

ホーナーが成功回避動機を提唱したのは、1960~1970年代にかけてです。

つまり、現在ほど女性の社会進出が進んでおらず、女性の社会進出や成功・達成に対する社会の受け止め方も、女性自身の考え方も現在とは異なる状況下で提唱されたのです。

その後の研究では、男性が成功回避動機を抱くことことを示す研究結果も発表されています。

例えば、ホフマンとロビソンは、成功回避動機が女性特有の動機だとするホーナーの主張に対して、男性にも成功回避動機が見られることを実証しています。

ロビソンは、成功回避動機を「成功に伴って生じる否定的な結果を予想することで生じる、達成抑制的な動機である。」と定義し、女性に限らず重要な動機の1つであると考えました。

また、モナハンらは、男女別の刺激文によって作成された物語に成功回避動機が見られたとしても、性差なのか、刺激文の性によるものなのか判然としないとして、ホーナーの実験の問題点を指摘しました。

そして、同性と異性の両方の人物の刺激文を与えて実験を行い、男性の被験者も女性の被験者も、刺激文の主体が女性であった場合の方がより成功回避動機に関する物語を作成することを明らかにしました。

モナハンらは、実験結果を踏まえて、「成功回避動機は、成功や達成を目指さないという性的役割に関するステレオタイプが反映された結果である。」と考えました。

まとめ

成功回避動機とは
ホーナーが提唱した、成功することへの不安や成功することを避ける気持ちを意味する心理学用語
ホーナーの成功回避動機の実験

言語刺激による投影法を用いて、成功回避動機を測定

【実験結果を踏まえた成功回避動機の特徴】

  • 女性に特徴的な動機である
  • 競争状態においてより喚起される
  • 成功達成動機が強いほど成功回避動機も強くなる
男性の成功回避動機に関する研究
  • ホフマンとロビソン:男性にも成功回避動機が存在する
  • モナハンら:成功回避動機は、性的役割のステレオタイプの繁栄

【参考】

  • 教養の心理学|林保著|朝倉書店
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