引き起こし反射とは
引き起こし反射とは、仰向けに寝かせた赤ちゃんの両手を持って上体を引き起こすと、起き上がろうとするかのように、両手両足が曲がって頭が持ち上がる原始反射です。
英語では「traction reflex」と表記し、日本語では引き起こし反射と訳されます。
首すわりが完成しておらず、自分の意思で身体を動かすこともままならない状態の赤ちゃんでも、引き起こし反射による反応によって、頭を持ち上げる動きを見せます。
引き起こし反射が起こる原因は諸説ありますが、外界の危険から身を守る防衛反応だという説が有力です。
原始反射とは
原始反射とは、脳幹や脊髄に反射中枢を持つ、胎児期から乳児期にかけて見られる反射です。
原始反射の多くは、胎児期に獲得されて出生直後から確認することができ、ある時期になると消失(統合)して、赤ちゃんの意思による行動が機能するようになります。
原始反射の役割
原始反射には生命維持と発達促進いう2つの役割があると考えられています。
生命維持 | 運動機能などが未熟な状態で出生した赤ちゃんの胎外生活を支援する |
発達促進 | 反応が継続的に繰り返されることにより、赤ちゃんの随意行動の出現が刺激される |
指標としての原始反射
原始反射は、出生直後から見られ、ある時期に消失するという特徴から、神経学的障害を確認するための指標とされています。
例えば、乳幼児健診では、原始反射について、以下の内容を確認します。
- ある月齢で起こるべき反射がない
- 消失すべき月齢で残っている
- 反応の左右差が常にある
- 一度は消失した反射が再び出現する
引き起こし反射の出現時期と消失時期
引き起こし反射の出現時期と消失時期は、以下のとおりです。
- 出現時期:出生時
- 消失時期:生後1~2ヶ月頃
引き起こし反射は、在胎28週頃に獲得されており、生まれたばかりの頃から確認することができます。
消失時期は生後2ヶ月頃が標準的ですが、急になくなるのではなく、生後1ヶ月頃から徐々に反射による反応が弱くなっていきます。
引き起こし反射が消失した後は、首周りの筋肉がつき、生後3~4ヶ月頃には首がすわります。
引き起こし反射の確認方法
引き起こし反射の確認方法は、以下のとおりです。
- 赤ちゃんを仰向けに寝かせる
- 親の親指を赤ちゃんの手の平に入れる(両手)
- 把握反射によって赤ちゃんが親の親指を掴んだことを確認する
- 親指以外で赤ちゃんの手を握る
- 赤ちゃんの身体を両手でゆっくり引き起こす
- 赤ちゃんの身体が45℃、90℃になる位置で止め、赤ちゃんの身体の状態を確認する
乳児健診では医師が一人で確認しますが、誤って赤ちゃんの頭をぶつけないよう、家庭においては、2人以上で確認するようにしてください。
正常な引き起こし反射
健康な赤ちゃんの場合、45℃まで引き起こすと、把握反射によって手を握ったまま、上半身が伸びて頭は背中の方に垂れ、下半身は膝を軽く曲げて少しがに股になります。
90℃まで引き起こすと、引き起こされる身体に頭がついてきて、地面から垂直または少し前かがみになります。
異常が疑われる場合
赤ちゃんを引き起こしたときに以下の状態が見られる場合、異常が疑います。
45℃まで引き起こした状態 | 上半身が力なく伸び切っており、頭は垂れ下がって体幹も曲がる |
身体が棒状(まっすぐ)になって立つ、または全身が反り返る | |
90℃まで引き起こした状態 | 頭が前に垂れ下がったようになる |
引き起こし反射がないまたは異常な反射が見られる場合、脳の障害や筋肉の低緊張を疑います。
ただし、一般家庭で引き起こし反射を確認した場合、確認方法の不適切さによって異常な姿勢になることがあります。
家庭で引き起こし反射を確認して気になる場合は、早めに小児科に相談することが大切です。
引き起こし反射と首すわりが完成した後の動き
首すわりが完成した赤ちゃんを引き起こすと、首や身体の筋肉を使って頭を支え、引き起こされる身体と一緒に頭を持ち上げます。
つまり、身体に力を入っています。
一方で、引き起こし反射の場合、反射として身体が動くため、首すわり後と比較すると身体に力が入っていません。
なお、仰向けに寝た赤ちゃんの両手を引っ張ったときの反応は、月齢を経るにつれて変化します。
月齢 | 反応 |
3~4ヶ月 | 頭部と体幹が平行に持ち上がる |
7~9ヶ月 | 肘が曲がり、頭部が体幹より前に来る |
10ヶ月~1歳2ヶ月 | 肘の力でしっかり身体を引き起こし、両足は伸びる |
まとめ
仰向けに寝かせた赤ちゃんの両手を持ち、上体を引き起こすと、両手両足が曲がって頭が持ち上がる原始反射
- 出現時期:出生時
- 消失時期:生後1~2ヶ月頃
【確認方法】
- 赤ちゃんを仰向けに寝かせる
- 親の親指を赤ちゃんの手の平に入れる(両手)
- 把握反射により赤ちゃんに親の親指を掴ませる
- 親指以外で赤ちゃんの手を握りこむ
- 赤ちゃんの身体を両手で引き起こす
- 赤ちゃんの身体が45℃、90℃の位置で止め、赤ちゃんの身体の状態を確認する
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