心理学用語や心理学を活かせる仕事を解説

アンダーマイニング効果とは?具体例は?逆はエンハンシング効果?

アンダーマイニング効果とは

アンダーマイニング効果とは、達成感や満足感を得るために自ら取り組んでいたことが、他人から報酬を受け取ることで報酬が取り組む目的に代わり、自発的なやる気が失われる効果です。

心理学用語を用いて説明すると、「内発的に動機づけられた行為に、外発動機づけを行うことにより、モチベーションが低減する効果」です。

英語では「undermining effect」または「undermining phenomenon」と表記され、日本語では「アンダーマイニング効果」、「アンダーマイニング現象」、「適正当化効果」、「抑制効果」などと訳されます。

「好きなことを仕事にするとやる気がなくなる。」と言われますが、アンダーマイニング効果によるものです。

自分が好き好んでやっているうちは、達成感や満足感などを求めて取り組んでいられますが、仕事になった途端、給与や実績などのために取り組まざるを得なくなり、やる気が失せてしまうのです。

MEMO
  • 動機づけ(モチベーション):ある行動を起こし、目的達成のために行動を変化・調整する過程や意欲
  • 内発的動機づけ:他人からの報酬や罰に依存せず、本人の興味関心によって生じる動機づけ
  • 外発的動機づけ:本人の興味関心ではなく、他人からの報酬や罰によって生じる動機づけ

アンダーマイニング効果の実験1

ソマパズル

アンダーマイニング効果は、1971年に心理学者デシ,E.L.とレッパー,M.R.が行ったソマパズル(立体パズル)の実験により明らかにされました。

デシとレッパーが行った実験は、大学生を被験者として以下の手順で行われました。

  1. 被験者を実験室に集めてソマパズルを渡す(被験者の内発的動機づけを促す対象)
  2. 被験者を2つのグループに分ける
  3. 第1セッション:2つのグループの被験者全員にパズルを解かせる
  4. 第2セッション:1つのグループには「パズルを解くたびに報酬として1ドルを与える。」と告げ、パズルを解いた被験者に報酬を与える(もう一方のグループには何も告げず、報酬も与えない)
  5. 第3セッション:再び、2つのグループの被験者全員にパズルを解かせる(報酬は与えない)

各セッションでは、パズルが2問終わるごとに、検査者が「実験室にあるパズルや雑誌を自由にして良い。」と告げた上で8分間部屋を離れました。

デシとレッパーは、各セッション後の8分間に被験者がどの程度ソマパズルに取り組んでいたかを、内発的動機づけの指標と考えました。

この実験では、無報酬のグループは、各セッション後にソマパズルに触れる時間に変化はありませんでしたが、報酬を与えられたグループは、セッションごとにソマパズルに触れる時間が有意に短くなるという結果が得られました。

デシとレッパーは、実験結果から、報酬を与えられたグループは、報酬を得たことでソマパズルを報酬を得る手段と捉えるようになったと考え、アンダーマイニング効果を提唱しました。

アンダーマイニング効果の原因に関する実験

デシとリッパーによってアンダーマイニング効果が発見された後、幼稚園児を被験者として、効果が起こる原因を探る実験も行われています。

1.お絵かきが好きな被験者をA、B、Cの3つのグループに分けて絵を描かせる

  • Aグループには「上手に絵を描けたら賞状をあげる」と約束し、絵を描き終えたら症状を渡す
  • Bグループには何も告げずに絵を描かせ、絵を描き終えたら症状を渡す
  • Cグループには何も告げずに絵を描かせ、絵を描き終えても何も渡さない

2.実験から期間を置いて、被験者の幼稚園児が内発的動機づけに基づいて絵を描く程度を調べる

実験では、「上手に絵を描けたら症状をあげる」と約束して絵を描かせたAグループの幼稚園児が、絵を描くことに対する内発的動機づけを低下させていることが明らかになりました。

一方で、BグループとCグループの幼稚園児には内発的動機づけの低下は認められませんでした。

この実験結果から、「期待させられた報酬」がアンダーマイニング効果を生じさせるのであって、報酬そのものではないことが判明しました。

また、アンダーマイニング効果は、「褒める」、「労う」など抽象的な報酬ではなく、目に見える物質的な報酬、他人の監視と評価、罰の設定、競争、締め切りによって生じやすいことも明らかにされています。

アンダーマイニング効果の原因

アンダーマイニング効果は、内発的動機づけが外発的動機づけに代わることによる自己決定感の低下や、ある行為が目的から手段に切り替わることで生じます。

自己決定感の低下

人は誰でも、「自分のことは自分で決めたい」、「できることをできるようになりたい」という欲求を持っています。

ある行動を自ら興味関心を持って取り組んでいるうちは、「自分の行動を自分で決定している」という自己決定感を抱き、意欲的に行動します。

しかし、自分の行動が他人から監視・評価・規定されていると感じると、自己決定感が低下し、「やらされているという感覚」が強くなって意欲を喪失してしまいます。

つまり、報酬を与えられることで元々は自発的に始めた行動でも、「他人からやらされている」という感覚になり、アンダーマイニング効果が生じるのです。

この点は、デシが自己決定感(または有能感)という言葉を用いて説明しています。

目的から手段に切り替わる

ある行動に自発的に取り組んでいるうちは、行動自体または行動によって得られる達成感や充実感が目的となっており、目的のために行動を持続させることができます。

しかし、報酬が与えられると、行動が報酬という目的を得るための手段に変わります。

そのため、「報酬が与えられない=目的がない」と行動する意欲を維持しにくくなるのです。

アンダーマイニング効果の具体例

アンダーマイニング効果は、私たちの日常生活の様々な場面で確認することができます。

ブログ運営

日常生活における気づきや愚痴などを自由に書き記すブログを運営していたところ、ブログの面白さや集客力の高さに目を付けた企業から、商品の紹介を依頼されたとします。

企業からは報酬を出すことを約束され、最初のうちは「自分の趣味でお金がもらえるなんて。」と喜んで依頼を受けます。

紹介記事は想定以上の閲覧数に達し、その後、企業からは次々と新しい依頼が舞い込むようになり、報酬をもらって記事を書くのが当たり前の生活になっていきます。

元々はブログを書くこと自体が楽しくてストレス発散の手段にもなっていたものが、いつのまにか仕事になっているのです。

こうした状況で、1読者から報酬にならない趣味の記事を求められても、もはや書く気にはなれないでしょう。

勉強

ある高校生の成績が3年生になって低迷したとします。

本人が、勉強を続けることで少しずつでも成績が戻ることに充実感を感じていたところ、しびれを切らした親が「次の模擬で良い点数をとったら小遣いをあげてやる。」と言うと、どうでしょうか。

当初は喜んでより勉強を頑張るでしょうが、実際に模擬で良い点数をとって小遣いが上がった後は、それまでのように自発的に勉強する意欲が失せ、小遣いアップなどの報酬がないと頑張れなくなってしまうでしょう。

アンダーマイニング効果の逆の効果(エンハンシング効果)

アンダーマイニング効果の逆の効果として、エンハンシング効果があります。

エンハンシング効果とは、褒めたり期待したりされることでやる気が高まるという効果です。

心理学用語を用いると「外発的動機づけによって内発的動機づけが高まるという効果」です。

英語では「enhancing effect」と表記され、日本語ではエンハンシング効果と訳されます。

例えば、憧れの上司から仕事ぶりを褒められて仕事への意欲を高める、志望校合格が決まり、普段は人を褒めない父親から「よくやった」と言われて「大学でも頑張ろう」と思うことなどが、エンハンシング効果です。

アンダーマイニング効果とは逆に、他人の働きかけが本人のやる気を引き出すのがエンハンシング効果です。

エンハンシング効果が生じるには、賞賛などをする人と本人の関係性が重要であり、赤の他人や嫌っている人から賞賛されても効果はありません。

エンハンシング効果については、「エンハンシング効果とは?やる気を出させる褒め方のポイント」で詳しく解説しています。

まとめ

アンダーマイニング効果とは

自発的に取り組んでいたことに他人から報酬を受け取ることにより、報酬が目的になってやる気が失われる効果

アンダーマイニング効果の原因
  • 自己決定感の低下
  • 目的が手段に切り替わる
アンダーマイニング効果の具体例
  • ブログ運営
  • 勉強
アンダーマイニング効果と逆の効果

エンハンシング効果:他人の賞賛や期待によって、やる気が向上する効果

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