目次
前置き
「心理学を勉強したい。でも、将来はどんな仕事があるの?」という思っている人、とても多いです。
その多くは、「大学で大学院で心理学を勉強したい、心理学の資格を取得したい」と思っているけれど、心理学と将来の仕事がうまく結びつかずに悩んでいる人です。
そこで今回は、心理学を勉強した人の仕事(就職先)や進路について書いていこうと思います。
心理学を活かせる仕事
心理学を勉強したいと思っている人には、心理学を活かせる仕事に就きたいと思っている人も多いので、まずは心理学を活かせる仕事について確認しておきます。
心理系公務員(心理職)
心理学を勉強した人に人気のある仕事の一つが心理系公務員(心理職)です。
心理系公務員(心理職)のメリットは、「心理学が活かせる」、「就職してからも心理学の勉強ができる」、「収入が安定し、福利厚生が充実している」ということです。
主な心理系公務員
心理系公務員には、以下のような職種があります。
- 国家公務員総合職(人間科学)
- 法務省専門職員(矯正心理専門職、保護観察官、法務教官)
- 裁判所専門職員(人間科学)(家庭裁判所調査官)
- 心理判定員
- 児童心理司
- 心理技官
- 相談専門員
国家公務員か地方公務員かの違いはありますが、いずれも心理系公務員のメリットを享受できる職種です。
しかし、心理系公務員になるには難しい採用試験に合格する必要がある上、採用枠が他の区分よりも少なくなっています。
そのため、就職を希望する人はたくさんいますが、心理系公務員になることができるのは一部だけです。
心理系公務員の仕事内容やなる方について法詳しく知りたい人は、以下の記事で詳しく解説しているので読んでみてください。
民間の心理職
民間にも心理系の職種はたくさんあります。
一般的に、心理系の職種は、医療、福祉、産業、教育、司法矯正、研究という6つの分野に分けられ、それぞれ以下のような仕事があります。
分野 | 仕事 |
医療 | 病院やクリニックのカウンセラーなど |
福祉 | 心理系公務員(児童心理司、心理判定員など) |
産業 | 企業の産業カウンセラーなど |
教育 | スクールカウンセラー、大学教員など |
司法矯正 | 心理系公務員(法務教官、保護観察官など) |
研究 | 大学の教授など |
※福祉分野と司法矯正分野は、仕事の性質上公務員が多い
個人で心理系のクリニックなどを開業する人もいますし、特定の役職や名称は付いていないけれど心理学の知見が必要な仕事というのも少なくありません。
「精神科医になるために心理学を勉強する」という人がいますが、心理学を勉強しただけでは精神科医にはなれません。
原則として、医学部を卒業した後、国家試験に合格して「医師免許」を取得し、2年以上の臨床経験を積む必要があります。
心理学を勉強した人の進路で多いのは心理職以外
実は、心理学を勉強した人の進路で最も多いのは心理職以外です。
例えば、私の大学時代の同級生は、以下のようなところに就職しています。
- 営業職
- 総合職
- 病院
- 国家公務員(保護観察官、法務教官)
- 地方公務員(採用後は児童相談所勤務)
- 個人開業の心理系クリニック
- SE
- 銀行
- キャビンアテンダント
- 大工
- 日本語教師
- 大学教員
- 教師など
- 大学院に進学
公務員や病院・クリニックなど心理学を活かせる仕事に就いた人もいますが、多くが心理学とは関係のない仕事をしています。
先輩や後輩も同じです。
全国的な傾向を示す統計は見当たりませんが、基本的には同じ傾向があるように思います。
心理学を勉強した人が心理系以外の仕事を選択する理由
どうして、心理学を勉強したのに心理系以外の仕事に就くのでしょうか。
心理学以外の仕事を希望した
当然ですが、心理学を勉強した人が全員、心理学を生かせる仕事をしたいと考えるわけではありません。
心理系の大学院に進学すれば、心理学を活かせる仕事に就きたい人の割合は増えるでしょうが、それでも全員が心理職に就きたいと思っていることは稀でしょう。
法学部に入ったからといって、全員が弁護士や裁判官を目指したいと思わないのと同じことです。
心理職の求人が限られている
すでに書いたように、心理学を活かせる仕事はたくさんあります。
しかし、心理職の求人は残念ながら限られているというのが現状です。
気になる人は、試しに「心理職 求人」や「心理学 求人」と検索してみてください。
表示される求人情報は、検索前に想像していたよりも少ないことが多いのではないでしょうか。
近年は心理職の知見が様々な分野で活用されるようになり、心理職の需要が増えてきているのは間違いありませんが、それでも心理職を希望して就職できるのは、一部の人だけというのが現状です。
心理職の待遇が悪い
心理職以外に就職する人が口にする理由で最も多いのが、「心理職では生活できない」というものです。
心理職の求人を検索してみると、雇用形態が正社員でないものや、給与が低いものが多いことに気付くはずです。
雇用形態が正社員ではない
心理職の仕事の大きな課題の一つが雇用形態です。
例えば、心理系の代表資格である臨床心理士を取得していても、常勤のみ(正規雇用)が33.8%という低い水準に留まっています(「臨床心理士の動向調査」報告書)。
これには臨床心理士の活動分野ごとの問題があります。
医療分野では、医療機関においては臨床心理士の専門業務の一部にしか診療報酬が算定できない事情から、非常勤採用が多くなってます。
また、教育分野では、スクールカウンセラーの予算の関係で勤務時間が限られており、週に10時間程度の勤務しかできない人が多いという実情があります。
独身で経験を積みたいのであれば、雇用形態に関わらず就職することはできますが、家族がいると、雇用形態の問題は職業選択の大きなポイントになります。
「心理学を活かせる仕事に就きたいけれど、家族を養うには他の仕事でないと無理」という人は少なくありません。
給与が低い
ここでも臨床心理士を例にすると、臨床心理士資格取得者の半数以上が年収300~500万円台となっています(「臨床心理士の動向調査」報告書)。
判断には個人差があると思いますが、受験資格に大学院の卒業が課されている資格であることを考えると、決して高い水準にあるとは言えません。
給与の低さも、心理職を希望しながら他分野に就職する人が多い理由になっています。
心理職の課題については、以下の記事で統計を示しながら詳しく解説しているので、関心がある人は読んでみてください。
心理職の待遇について
心理職の課題について触れ、「心理職になりたいのになれない人が多い」ことを書いたので、心理学を勉強することへの抵抗が強くなったかもしれません。
しかし、心理職を取り巻く状況は少しずつ変化しています。
心理職の地位は、私が就職した10数年前と比べると、少しずつですが確実に向上しているのは事実です。
「少しずつか」と思うかもしれませんが、流行り廃りではなく、世の中が心理職を必要とするようになってきたということです。
2018年から公認心理師という心理系初の国家資格が誕生したことも、今後の心理職の待遇改善の追い風になる可能性があります。
心理学は仕事にも役立つ
心理系以外に就職したとしても、心理学を勉強したことは決して無駄にはなりません。
心理学は、人間科学の一つに分類されているように「人を知る学問」です。
心理学を学ぶことは、日常生活の中で接する人を知ることであり、自分のことを知ることなのです。
そのため、一般企業に就職した場合でも、取引相手の気持ちや希望を読み取りながら営業で実績を上げたり、マーケティング部門で活躍したりしている人がたくさんいます。
また、職場の人間関係でも、心理学の知識や経験を活かして良好な関係を維持したり、悪い関係を調整したりできることもあります。
心理学を勉強したからといって必ず心理系の仕事が見つかるとは限りませんが、勉強したことは心理学以外の仕事をしていても役に立つのです。
まとめ
公務員にも民間にもたくさんの職種がある
- 心理学以外の仕事を希望した
- 心理職の求人が限られている
- 心理職の待遇が悪い
- 少しずつだが改善されてきている
- 公認心理士資格も後押しになる可能性がある
心理系以外の仕事でも心理学の知識や経験が役に立つことがある